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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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中学3年の1年間〜花宮とヤマト〜



「りんちゃん。ごめん。今日も夕飯を外で食べてもらってもいい?」


その言葉に九十九は朝食のパンから恵美子に目線を変えた。


「…いいけど。また仕事忙しいの?」

「うん。順調に進んでたんだけど、職員が1人体調不良で休みがちで作業が遅れだしてるの。今日少しだけ頑張ったら多分、大丈夫だと思うのよ。」

「そうなんだ。うん。いいよ。大丈夫。」

「本当にごめんね。そんなに遅くはならないと思うわ。8時過ぎくらいには帰るから。」

「うん。わかった。」


九十九は今日は何を食べようかなと考えた後、いつものようにカズナも誘ってみようと思い、恵美子に頷いたのだった。





「今日は無理かぁ〜!」

「凛花、ごめんね。今日はお母さんの誕生日だから早く帰んなきゃいけないの!」

「全然、大丈夫だよ!むしろ誕生日いっぱい祝ってあげて!ってか毎回、都合よく誘ってごめんね。」

「ううん。私は嬉しいから。また次は誘って!」

「うん!ありがとう。」


カズナというアテが外れて少し肩を落としたが、1人行動も特に嫌いではないので、カズナとは行きづらい店にしようかな、と考え出した。


(ラーメンとか、激辛担々麺とか、牛丼とか、)


オシャレな店が好きなカズナとはほぼ行くことのないところがポンポンと浮かんでくる。


(わぁ。どれにしよう。放課後の気分次第かな。)


少しだけ楽しみが増えて、気分が上昇してきた九十九だったが、そんな気分をガクリと落とされたのは昼休みの時だった。


「……え?買い出し?」

「そう。3年になってちょっと経ったし、これから受験とかでなかなか遊ぶ暇もなくなるから、今のうちにクラスでレクをしようって先日、先生と話したんだよ。」


九十九の目の前にはなぜか勝ち誇ったような表情をしている花宮がいる。


「先生からそのレクで使う道具と景品をクラスの人数分、買ってきてほしいって頼まれたんだ。九十九、お前レク係だろ?だから放課後、一緒に買いに行くぞ。」


九十九は花宮の言葉に眉をひそめる。なぜ最初から行くのが当たり前のように話されているんだろう…と、若干イラッとしていた。


「急に言われても困るし、花宮くんはレク係じゃないよね?」

「あ、あの。ごめん。今日は僕に用事があって、困ってたら花宮くんが変わってくれるって言ってくれたから…。」


花宮の隣で若干、顔色を悪くした左藤くんがオロオロとした雰囲気で話し出す。


「そういうこと!」

「別に今日じゃなくてもいいでしょ?次に左藤くんの用事がないときに行こうよ。」

「え…っと…」


左藤がチラリと花宮の様子を見る。


「もう先生に今日行くって言ってあるし、別に俺が行ってもいいじゃん。景品を自分で決めたいし。何か悪いのか?」


そう言われると九十九は反論できない。


両親が普通に定時で帰る日なら「早く帰らなきゃー」と断れた。しかし、今日はどうせ街まで夕飯を食べに行こうと思っていた日だ。

本音を言えば「あなたが苦手なので一緒に行きたくありません」と言いたい。

しかし、そんなことを言えず、九十九は渋々、了承するしかなかった。


最近、花宮はなぜか九十九に話し掛けてくる。

笑えない冗談だったり、遠回しな自慢だったり、と聞いてて楽しかったことは1度もないし、どんどん苦手意識が強くなっていく。


(それに、その目線!本当に嫌だ!)


花宮が九十九を見る目線がネットリとして気持ちが悪い。いくらカッコイイ顔立ちでも苦手なものは仕方がない。


九十九は電車で街に向かいながらため息を何度もつくのだった。





「なぁ、あっちに景色のすっげぇいい公園あんだけどちょっと見に行かねぇ?」

「行かない。早く決めて早く帰ろう。まずどこの店で買うの?何を買うかは左藤くんに聞いてる?」

「なぁそんなことより少しだけお茶しようや。喉乾いてきたし。」

「花宮くん、まだ何も買えてないんだよ。お茶は全てが終わってからにして。」

「んだよ。クソ真面目かよ。」


(あーー。イライラする。何でこの人来たの?もういっそ買うものリストさえくれれば私だけでいいんだけど!)


八つ当たりしたい感情をグッとこらえて九十九は再度「行こうよ」と花宮を促す。


「なぁ、九十九。お前って付き合っている奴いないんだよな?」

「………は?………だったら何?」

「俺ら付き合おうぜ。」


(………………はぁあぁぁあ?)


九十九は花宮のあまりにも意味のわからない言葉に口をポカンと開けて唖然とした。


「ほら、俺らってちょうどいいじゃん?俺も今は誰とも付き合ってねーし。タイミングもいいし。」


(この人何をいってるの?何がちょうどいいの?身長?成績?どれ?どこ?………タイミングって何?どこの?誰の?何の?)


「な、したらお前、変な男にも付きまとわれねーし、一石二鳥じゃん?」


(最近付きまとってきている変な男はお前だ!!一石二鳥?一石ゼロ鳥だ!!)


「そういやお前、傘山に同情すんのはわかるけど構い過ぎ。あいつも同情されてんの気付いてるけど言えないでいるんだぞ?離れてやれよ。」


(はぁ?はぁ?何で傘山くんに同情しなきゃいけないの?楽しそうに毎日過ごしてる彼のどこに同情すんの?ってか私に対して「ニコラウスが好きとか九十九さんってだいぶ変態だよね」って言ってくる人が何を言い出せないって!?……ってかあんたはどの立場で喋ってんの!?)


九十九は声には出さないがだんだんと収まりきれない怒りが表情に現れていく。


「俺と付き合えばそういうの全部まとめて収まるし…」

「無理。」

「…………は?」

「無理。私、好きでもない人と付き合うとか無理。それに花宮くんも私のこと好きじゃないよね?そういうのって絶対うまくなんかいかないよ。」

「別に。付き合えばそのうち好きになるだろ。」

「わざわざ好きになってもらわなくてもいいよ。それに何で?何でそんなこと私に突然いってきたの?花宮くんと私ってそんな話したことないよね?」

「最近、話してんじゃん。」

「それって、今日のために話してたんだよね?何か順番おかしいよ。……何?……あ、もしかしてゲーム?」


花宮から九十九を好きだという気持ちが全然ないように感じる。それに彼は「ちょうどいい」と言っていた。

普通は話をして、好意を持って、更に話をして、好きになって告白するものではないのか。

花宮のしていることは「こいつと付き合う」と決めて、話もしとこうと話し掛け、告白するというカンジだ。

順番どころではない。根本からおかしい。

いくら恋愛のことがわからないからといって、この矛盾に気づかないわけがない。


そうすると思いつくのは男子が時々しているラブレターゲームだ。嘘のラブレターを書いて、それに呼ばれた子をからかうという意地の悪いゲーム。

それに似ていると九十九は思った。


案の定、九十九の言葉に花宮はうろたえる。


(最っっっっ低!!!!)


呆れた九十九は歩く方向を変え、歩き出した。


「帰る。」

「ちょ…待てよ。ゲームなんかじゃないから!…本当にお願い!話ちゃんと聞けよ!」

「何の話?ゲームに付き合えって話?本当に最低!何を考えてんの?そんなことして何が楽しいかわかんない!」

「いやさ、ちょっとふざけただけじゃん。それに別に俺と付き合って得するのは変わんないし。」

「え?ナニ得?まったく思いつかないんだけど。」

「いやいや、まぁちょっと落ち着けよ。とにかく足とめて話そうや。」


そんな風に言い合いをしながら歩いていると、突然ズシリと何かが肩に乗っかってきて九十九は驚き足を止める。



「可愛い子、はっけ〜〜〜ん!!」



声の方を振り向くと、そこには知らない男の子が九十九の肩に腕を回していた。


「え、」

「え?何?何?恋人とケンカ中〜?」

「俺らが助太刀しようか〜?」


驚き固まっていると、その男の子の他に4人の男の子がゾロゾロと九十九の周りに集まってきた。


「な、何!?…は、離して!」


そう力を込めて肩に置かれた腕を振り払おうとするも、逆に強い力で引き寄せられビクともしない。


「おい!何だよお前ら!九十九を離せよ!」

「あれ〜彼氏まだいたの〜?彼女を守るとかチョーカッコイイじゃ〜ん!あはは!」


花宮が手を伸ばして九十九の手を取ろうとするも他の2人の男の子から止められる。

周りの男の子たちが不気味な笑い声を出しており、九十九は恐怖でサッと顔色を悪くした。


「ヤマトさん。こいつ彼氏だって。どうする?」

「え!!ヤマト!?」


男の子の一言に花宮が驚愕の表情をする。

2人の男の子に捕まっていた彼はその言葉を聞いた瞬間からもがくのをやめて1歩、また1歩と下がっていく。


(ヤマト?何?)


花宮の顔色や自分を囲む男の子たちの下卑た笑い声に九十九は体が震えだした。


「何?お前、この子の彼氏なの?」


1番後ろにいた男の子がユッタリと緩慢な動作で近づいてきた。深くキャップを被っており、黒のマスクをしている。

それなのにどうしてか。

彼の言葉はよくあたりに響いた。


チラリと見えた目はあまりにも冷たく、この人の目に自分が人間に見えているのか不思議に思うほど、何の感情もない瞳だった。


「ち、違います!!そんな女、彼女じゃありません!ただのクラスメイトで全然、俺とは関係ない奴です!!」


花宮が大きな声でそう叫んだ。

一瞬、静まった後、ドッと笑い声が上がる。どれも人を馬鹿にしたような嫌な笑いだ。


「あはは!なんだ〜彼氏じゃないんだぁ〜!ならこの子に俺らがちょっかい出しても全然、大丈夫だよね?」

「は、はい!!俺には関係ないので!」

「あははは!!君おもしろいな。いいよ。もう行っても。キミには用はないし。バイバ〜イ!」

「あ、はい!失礼します!」


そう言って花宮は脱兎のごとく逃げていった。

九十九は目の前で起きたことが信じられず、花宮の後ろ姿が人混みに消えるまで見続けてしまった。


「さてと、残念なクラスメイトを持ったな。俺らと少し遊ぼうや。」


低くてよく響く声がズシリと九十九の何かに重くのしかかる。

少し止まっていた震えが再度始まった。



そして、それが九十九の長くツライ日々の始まりだった。





読んでいただきありがとうございます。


あ、ツライ。

まだまだこれからなのに、ツライ。

ごめんよ。頑張ろう。

乗り越えればイチャイチャが待っている。

多分。

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