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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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誰かの真実。

後半部分あまり気分の良くない言葉が連発します。



山下と九十九はいつも通り、手を繋いで学校へ向かって歩いていた。


「九十九は日曜日のこと則文さんや恵美子さんに話した?」

「うん。話したよ。また気合い入れなきゃね!ってなぜかお母さんが張り切ってたよ。」

「あは、よかった。本当はデート会議を九十九のうちで開きたいんだけど日曜日に休みもらうから他の日に休むのは無理だろうなぁ。」


山下は「則文さんが邪魔する!2人になりたい!」と言ってくれてはいるが、九十九の両親の意見もちゃんと取り入れてくれる。九十九のことを1番理解しているし、心配もしているし、応援もしていることをわかっているからだろう。


「ううん。無理しないで。ありがとう。あのね。お母さんが提案してくれたのはね。ここのカフェか、あとここはたまに家族3人で行くんだけど、そこで買い物かぁ。プラネタリウムかなぁ。」


九十九はケータイでスクリーンショットをした画像を山下に見せながら話した。


「あ、俺も調べたんだけどほとんど一緒かも。この前は電車2駅がんばったから次は5駅くらいで…って探してたから。さすが恵美子さん。」

「ふふ、違うよ。さすが山下くん、だよ。」


そこまで九十九のことを考慮してデートプランを考えてくれていることに嬉しくなる。


「九十九はどれがいい?」

「そうだなぁ。プラネタリウムは気になるかも。昼間の夜空なら見れるかなって。」

「九十九、寝ない?」

「どうだろう。暗くて静かで隣に山下くんいたら寝るかもね。」


2人でふふ、と笑い合う。


お互いを抱き合っているとついつい気持ちよくて寝てしまうのは昼休みに実証済みだ。しかもかなりの頻度で。


(山下くんの体温が少し高いせいかなぁ。ついウトウトしちゃうんだよね。好きな人に寝顔見られるとかの後悔は起きてから毎度感じているけど。)


「山下くんはお昼お弁当がいい?それともせっかくだからオシャレなお店で食べたい?」

「うわぁ〜〜!その選択肢はすぐには選べない!九十九の弁当も食べたいし、色んな店を九十九と行ってみたい!」


本気で頭を抱えはじめた山下に「前々日までには決めてくれないと厳しいかも。」というと変な声で唸りだした。


そんな会話の中、学校の校門を通り抜ける。


そこで九十九はふと違和感を覚えた。


(………なんかいつもと違う。)


隣の山下はいつも通りの様子でいるので、気付いているのは九十九だけなのだろう。

どこがどう変わったとは言葉でハッキリ伝えられない。強いて言うなら『雰囲気』だ。


昨日も土間に「気をつけろ」と言われたばかりなので、九十九は少し警戒を強めて周りをよく観察しながら歩いた。


(あ、これかぁ……)


周りを注意深く見ていて九十九はふと気づく。


(トゲトゲした目線が半分ほどしかないんだ。)


九十九の登校時は山下としっかり手を繋いでいる。普段、嫌がらせをされない限り、イチャイチャは禁止されてるので、周りから見た1番のイチャイチャシーンはこの登下校になる。

そのためか、登下校は射殺されそうなほど鋭い視線が刺さってくる。


しかし、今日はどうだろう。

半数の子は変わらない視線を向けているが、それ以外の半数はこちらをチラリと見た後、鼻で笑うような表情をして、クスクス笑って去って行く。


九十九は胸騒ぎがして仕方がない。


(何だろう。この何が起こるかわからない感じがすごく嫌だなぁ。)


そう思いながら校舎に入り、教室に着くも、ずっとそんな様子だった。

どちらかといえば、九十九に対しあたりが強い子に多く、それが不安をあおる。


その日は1日中、緊張が解けることがなかった。


唯一、山下と2人きりの昼休みの時だけ力を抜くことができた。いつもはゆっくり食べるお弁当をサッサと食べ、自分から飛び込むように山下にハグをしてもらった。

山下は「どうしたの?九十九、可愛い!」と喜んでいたけれど、九十九はとにかく少しでも力を抜いてホッとしたくて山下に甘えられるだけ甘えた。



そして次の日、


「…疲れた……。」


目が覚めた瞬間にその言葉が出た。

おかしい。昨日は早く寝たつもりなのに、と思い重い体を起こしてベットから出た。



「九十九、大丈夫?何か疲れてる?」

「うん。ちょっと疲れが取れなくて。でも大丈夫。いっぱい寝たし。」

「無理しないで、キツかったら保健室行こう。」

「うん。ありがとう。」


そんな風に話しながら学校に向かった。

案の定、校門を通り抜けたあたりから、違和感が九十九にじわじわと襲ってきて緊張を与える。

つい山下と繋いだ手に力を入れ、体を寄せる。


「おい。イチャイチャすんな。」

「土間!もう本当に監視すんのやめてよ。」

「してねーよ。登校したら目の前にお前らが見えて朝からヤな気分だっつーの。」


呆れたような顔をして土間が後ろから話しかけてくる。山下と軽く話した後に九十九の顔を見て少し顔をしかめた。


「何?お前どうした?」


どうやら山下にも土間にもわかるほど疲れた顔をしているらしい。

土間にも同じように「疲れが取れない。」とだけ言っておいた。

実際、何かをされたわけではない。

でも神経をゴリゴリ削られるので、いっそ何かするのなら早くしてほしい。


ため息をつきながら校舎に入り、教室に入る。


すると生徒のほとんどが黒板の前に集まっておりザワザワと騒いでいる。


「おはよう。どうしたんだ?」


そう土間が声をかけると、ほとんどの生徒が顔色悪くし振り返る。

その中にいた津々見が困惑した顔で「…土間…」と呟き唖然としている。


「何だ?何があったん…!!」


土間に続いて教室に入った山下と九十九も驚き固まる。


目の前の黒板にはみ出さんばかりに大きな字が書かれていた。



『九十九はヤマトにレイプされた』と。



土間は舌打ちし、すぐに黒板の字を消して行く。

字と字の間にA4サイズの校内新聞のようなものも貼られており、それも剥がす。

そんな土間にオロオロとした様子の津々見が話しかけた。


「なぁその『ヤマト』って俺のことじゃねーよな。俺そんなこと…」

「違う。お前のことじゃないのはここにいる全員知ってる。でも説明は後だ。今は………誰だ?こんなことしたのは…さすがに今回は止められそーにねーぞ。」


途中から独り言をボソボソと喋ったが、土間の目線は目の前の無表情の男だ。あまりにも表情が欠乏しており、氷のような冷たさを感じる。いや、感じるどころではない。冷たすぎて痛い。


そんな雰囲気の中、九十九はケロリとした顔で「何だ。この程度だったかぁ」と想像していたことより全然マシな結果に少しだけホッとしていた。

黒板の文字を土間が消してくれたことにヨシヨシと頷き席に座ろうとすると、山下から腕を掴まれた。


「九十九?なに納得した顔してるの?なに席につこうとしてるの?」

「…?…消してくれたから。」

「そういうことじゃないから。」


山下の低い声がビリビリと体に響く。

クラスメイトの皆も同様に顔を強張らせたので同じように感じたのだろう。


「どうしてそんなに他人事みたいな顔をしてるの?九十九に対してやられてることだよ?九十九は怒ってもいいことだよ?」

「……このくらいのことなら中学のとき散々やられたから全然、平気。なんなら黒板なんて消せるし、優しい方だよね。」

「……散々やられた…?」

「うん。1番困ったのは家の壁にスプレーで書かれた時かな。やっぱり消せないとつらいよね。だから今うちは家の防犯すごいけど。あ、あと地味につらかったのは教科書とかノートかな。落書きされると堂々と使えなくなるし移しかえなきゃいけないし大変で。あ、でも今はルーズリーフだし、教科書はいつもカバン中だし大丈夫。」


九十九のカバンは鍵付きだ。しかも今はチェーンまで付いていて短い時間で嫌がらせをするには非常に厳しい。


対策がバッチリなのは過去の経験が元だったことを初めて知った皆は若干、引いていた。


山下はため息をつき「九十九に何を言ってもダメだ。」とばかりに九十九からクラスメイトに目線を移す。


「これは誰が書いたの?」


先ほどよりもっと低く冷たい声に皆が黙り目を泳がす。あまりにも怖くて目を合わせないように誰もが顔をうつむかせた。


「誰だって聞いてんだけど。」


「私だけど。」


しんとした教室に山下の声が響き、その後に続いた声もよく響いた。

誰もが声の主の方を凝視した。


「黒賀さん?」

「…その黒板に書いたのは私じゃないけど、その新聞内容は私が書いたやつだよ?私、新聞部だから。」

「…新聞……?」


山下は黒板に近寄り、土間が持っていた紙をもらいザッと内容を読む。


内容は、

中学3年の九十九が友達の想い人だった男の子に言い寄って街に誘い、そこでヤマトに絡まれレイプされた。その後は今まで学校内でエラそうにしていた報いが返ってきて、散々イジメられた結果あの陰鬱なキャラクターになった。

とそんなカンジのことが新聞らしく書かれていた。


「何この内容…ふざけてんの?」

「ふざけてないよ。ちゃんと色んな人に話を聞いて真実の元に書いてあるよ。私、ジャーナリスト目指してんの。そういう手は抜かないよ。」

「……へぇ…真実の元…ねぇ…」


山下が新聞と黒賀を交互に見て、鼻で笑うように嘲る。

それを見た黒賀は眉をピクリと動かした。


「じゃー九十九に話は聞いたの?」

「…え?聞いてないけど。…どうせ本当のことなんて言わないでしょ?」

「じゃーこのヤマトに話を聞いてみたの?」

「はぁ?何言ってんの?聞けるわけないじゃん。大体ヤマトって少年院はいってんでしょ?」


2人の『ヤマト』という発言に九十九は体がビクリと揺れるも、黒賀のその言葉に九十九は「え、」と顔を上げる。

しかし、そんな九十九の反応など誰も見ていない。


「だったら何?真実の元ってことは真実を知っている人に聞いたってことじゃないの?こんな新聞だすくらいなら少年院にヤマトを訪ねてでも話を聞いてくるべきじゃないの?」

「……それは…」

「誰の真実を聞いてきたの?」

「九十九さんの中学の同級生よ!皆が言ってた!皆に優しいフリして友達の好きな男の子を奪っていくような女だったって!そのヤマトに襲われた日に一緒に街に行っていた男の子も言ってた!ヤマトに襲われレイプされたって!」

「はは、面白いね。その男の子、九十九がヤマトに襲われてレイプされたとこを横で見てたってこと?」

「……それは…もしかしてヤマトの仲間に取り押さえられてたのかもしれない。」

「しれないって何?ちゃんと話しを聞いてこいよ!真実の元に新聞書いてんだろ!」

「…っ!!」


山下の少し荒れた声に誰もが息をのみ固まった。




読んでいただきありがとうございます。


ってかごめん!

1番悪いとこで終わらせてゴメン!

本当にゴメンねー!!><

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