散々なパーティ。〜土間の逆襲〜
「おっせーよ!!オメー!!」
そんな怒声で山下は我に返った。
「え、」
目の前に土間やクラスのメンバーが集まっている。山下は驚き、周りを見渡すとそこは目的地であった駅だ。
「わぁ。ボンヤリしていたら到着してたー。」
フワフワした気持ちでフワフワ歩いていたら、どうやら目的地に辿り着いていたようだ。
「わ!わ!勇也ちょーかっこいいんだけど!」
「髪型かっこいい!すごく似合う!」
「その色、めっちゃいいね!」
クラスの女子が一気に山下を囲んで騒ぎ出す。山下は苦笑いに近い笑みで、ありがとうと返した。
「…んで?無事フラれたのかよ。」
「あ!土間!何だよあのセリフ!何考えてんの?」
「え?ウケんだろ?ほら。あいつ心の中で思ってそうじゃん。出直して来いって。」
「そんなこと九十九は思わないし!」
「そうかぁ?男の絶滅とか祈ってそうじゃね?」
「絶対、祈ったりしないし!」
そんな会話をしながら団体で移動する。
目的地は可愛いカフェレストランで、そこを貸し切っていた。
山下は主役のためか、真ん中の席に誘導され座らせられる。そして安っぽいオモチャの王冠をかぶらされ『本日の主役』と書かれたタスキをかけられた。
嫌がると思ったが意外と「マジウケるんだけど!」と笑っていたのでクラスのメンバーはホッとする。
料理やお菓子、飲み物がどんどん運ばれて、机の上が埋め尽くされていく。
「おーい。じゃーそろそろ始めるぞー。」
「いや、お前が司会かよ。」
マイクのような形のお菓子を持って喋る土間に山下が突っ込む。「いや、俺以外に誰がいんだよ。」と反論すると「いや、いるだろ。」と笑っている。
とにかく、山下がご機嫌だ。
いつもの王子さまのような笑顔じゃなく、年相応の笑い方や普段よりずっとくだけた喋り方が目立つ。
なるほど、いつもはだいぶ抑えた状態なんだな。と土間は密かに感じた。
笑顔や喋り方は年相応だが、雰囲気がずっと大人っぽい。いや、少し男っぽい。
普段を知らず、ここだけの山下を見たならば彼は街のNO.1ホストだと言っても信じられただろう。
少しヤンチャそうな大人、そんな表現が似合う雰囲気を彼は出していた。
「まぁとにかく進めるぞー!今日の主役は当たり前だが、山下だ!本人から後で一言もらうとして、」
「え、俺、なんか言うの?」
「あったり前だろ!…後でもらうとしてー。とにかく、17歳の誕生日おめでとう!かんぱーい!」
「「かんぱーい!」」
クラスの女子が山下をギュウギュウ押すようにグラスを当てにくる。
山下は「痛い、痛い。ジュース溢れる!」と笑っていた。
「お、あれをハーレムっつーんだな。」
「まぁそうだな。」
周りに女子が1人もいなくなった席で津々見が土間に話しかけていた。
「あいつ罰ゲーム終わった瞬間から楽しんでんな。」
「そうだな。昨日までは女子が近づくたびに『困る』っつってたのにな。」
「写真撮って、九十九に見したろか。」
「もう罰ゲーム終わってんだから意味ねーだろ。あいつが少しドン引きするくらいだ。」
「まぁ……そうだな………。」
津々見と土間はハーレム状態の山下を見て、少しモヤッとし、ケータイを取り出して写メりだす。
「少しぐらいドン引きされればいーんじゃね?」
「そうだな。それがいい。」
しばらくそれを撮った後で土間が山下のハーレムに割り込んでくる。
「はいはい。散って散って!席は20分ごとに移動すっから各自、自分の席に戻ることー。」
「や、合コンかよ。」
土間の言葉に山下が笑う。それを聞いて土間が「はぁ?」と声を出した。
「当たり前だろ。お前を出汁に使ったクラス内合コンだし。今更きづいたのかよ。」
「はぁ?何それ!聞いてないし!」
「いや、言わなくてもわかんだろ。お前の誕生日会にクラスの男が全員集まるわけねーだろ。」
「土間ってなんでそんなことに頭使うの?」
「バカなの?男は普通、それにこそ頭を使うんだよ。お前みたいにいるだけで女子が寄ってくる奴に一般の男の気持ちがわかってたまるか。…つーか、これはお前のためでもあるんだぞ?罰ゲームが終わってやっとフリーになったんだから、彼女選び放題じゃねーかよ。ほら。」
土間がバッと手を広げると、女子がキラリとした目で山下を見た。
「や、俺もう彼女できたし。」
「…………………………。」
シンと、閉店後のような静けさが続いた後、ドッと騒然とする。その9割は女子の悲鳴だ。
「はぁ〜〜!?おまっ…たった2時間でどうやって彼女作るんだよ!え?本気で言ってんのか?」
土間が山下の両肩を掴み前後に振り回す。
「ちょ、ちょ、土間。やめろ!」
「誰だ!俺らが知ってるやつか!知らないやつか!どこで出会ってどう付き合うようになったか言え!!経緯を話せ!!」
「いや、土間!…九十九だから!九十九に罰ゲームが終わった後に告白して付き合うようになったから!」
「…………九十九と?」
またしても店内がシンと静まりかえる。
「……テメー何考えてんだ?」
「何って、好きだから告ったんだけど。…知ってるでしょ?俺が九十九を好きなの。」
「…知っ………てる。」
クラス全員が何となく…いや、そうなのだろうという確信があった。今まで何でもスマートにこなす彼が、九十九のことで焦ったり、困り果ている姿をこの1ヶ月、何度も間近で見てきたのだ。
しかしそれでも「まさか、あのハイスペックで超絶イケメンの山下くんが九十九さんを好きだなんて」と事実を認められないでいた。
「…ってか聞いてよ。九十九、マジ可愛いんだけど!マジ1日中、可愛いんだけど!!」
「…お………おぉ………。」
静まり返った店内を山下の興奮した声が響く。
その中で「……うっ…うっ」と泣き声が混じり出した。
1人が泣けば、それに同調した子達が泣き出し、店はお通夜のような状態だ。
「……え?……何?」
「……いや。お前はもう何も言うな。」
その後、どうしても立ち直れない女の子は早々に帰ってしまった。その他の女の子も「やってらんない!やけカラオケしに行くよ!!」とゾロゾロ出て行ってしまった。
残ったのは男だけだ。
「お前もう本当サイアク。」
土間の声が店に響く。
「でさ。でさ。その後がめっちゃ可愛いんだって!つーかちゃんと話し聞けよ。」
「どうでもいいわ。てか少し黙れ。」
「はぁ?土間が経緯を話せって言ったんじゃん。大体クラスで合コンとかありえないし、わざわざこんな会開かなくても、毎日会ってんだから普通に話せばいいじゃん。」
「本当にお前黙れ。それ以上しゃべると後悔するからな。」
「はぁ?何その後悔って。土間に何ができんの?」
山下のその言葉にカチンときた土間はケータイを取り出し、スッと山下の目の前にかざす。
「何?」
余裕のある表現の山下が画像を見た瞬間、ヒュッと息を飲んだのがわかり、土間はニヤリと笑った。
「そうだな。あいつ、山下が楽しんでる画像が欲しいって言ってたな。これはだいぶ楽しんでる顔してるし、これ送ってやったらいいよな。」
その画像はもちろん。ハーレム状態だった時の画像だ。山下の顔は小さいが、女の子に囲まれ楽しそうに笑っている姿がバッチリと写ってある。
「ちょ、…ま、待って。……それ、待って。」
「…ああ。付き合いだした初日だしな。これ送ったら、多分きっとすぐにメールが返ってくるはずだよな。……まぁたった1行で、たった1通だけで終わりかもしれねーけど。」
「うん。土間の言うことは正解と思う。俺は黙っとくね。うん。何も喋らない。」
「いや、ケータイから手を離せ。」
「………………………消すなら離す。………ってか今すぐ消さなきゃ壊す。」
土間は山下の反応に呆れ、は、と息を吐き、画像を消して本人に見せてやった。山下はデータを念入りに確認してよしよしと頷き、ケータイを土間に返す。
「お前、馬鹿やってると九十九にすぐ見限られるぞ。あいつ多分、そうゆう部分は潔癖だぞ。」
「もうこんなことしないし、だいたい合コンなんて行くつもりないし。もう絶対、油断しない。」
「ふ〜ん。そ。」
土間がケータイを見ながらニヤニヤと笑いだしたので、山下が怪訝そうな顔をする。
「何?」
「別に〜。」
先ほど消した画像とほぼ同じ画像が何枚も津々見から土間のケータイに送られてきており、土間はそれを丁寧に保存して行くのであった。
読んでいただきありがとうございます。
山下くんは九十九が大好きですが女の子が嫌いなわけではありません。しかたないじゃん。男の子だもん。




