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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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始まる2人。〜本当の恋人と女神〜



罰ゲームのお別れのセリフを言った。


もう終わり。


今、目の前にいる彼との関係はただの同じクラスの同級生になってしまった。


「山下くん。あのね。」


こんな風に何か言って、少しでも彼と一緒にいる時間を長引かせようとしている自分が必死でカッコ悪い。


「私、怖くて出来なかったことがこの1ヵ月でいっぱい出来るようになったよ。色々あったけどとても楽しかった。今までこのゲームをしてて、楽しいなんて思ったことなかったのに。全部、山下くんのおかげ。本当にありがとう。」


彼の目を見てはっきりとした口調で言う。


これから彼との関係がどんな風になるかわからないけど、せめて罰ゲームが終わった今、彼との関わりの最初くらいはしっかりと気持ちを伝えたかった。


「俺、何もしてない。全部、九十九が頑張ってやったことでしょ?」


ああ、そうか。彼は無自覚だった。と九十九は少し笑った。


「ふふ、でもキッカケを作ってくれたのは山下くんだよ。前髪を切れたのも。電車に乗れたのも。」


山下は何か言いかけて止める。フイと九十九から目をそらして少し俯いた。


「九十九。………何か……普通だ。……罰ゲーム終わるの慣れてるから?」


「そんなことないよ。大体こんな風に罰ゲームが終わるのなんて今までないし。今までだったら学校から家まで送り届けられて、さようならって終わってたよ。土曜に出かけるなんて無理。その後はやったー!終わったー!って喜んでたけど。」

「………今も…終わって嬉しい?」

「…そんなことないよ。すごく寂しい。」

「…本当に?……俺だけじゃない?」


(あ、山下くんも寂しいって思ってくれてるのか。嬉しいな。)


そう思うと頬が緩む。


「うん。すごく寂しい。」

「九十九、めっちゃ笑ってんじゃん。嬉しそうだし!絶対思ってないでしょ?やったー!終わったー!って思ってるでしょ?」


彼の顔がムッとし、拗ねたような表情になる。もうおかしくて仕方がない。


「あはは!思ってないよ!だって山下くんが嬉しいことばっか言うからおかしくて笑っちゃうんだよ!」

「俺、何もおかしいこと言ってないし!」


いよいよ本気で山下が拗ね出した。

そんな姿も愛おしくて仕方がない。


(でも、ダメダメ。罰ゲームの始まりは酷かったけど、これからの始まりは山下の満面の笑顔で始めたいな。)


「本当に本当だよ。すごく寂しい。」

「…全然そんな風に見えない。絶対、俺だけが寂しいって思ってる。絶対、俺だけが終わってほしくないって思ってる!」


「え、」と九十九は山下の顔を見直す。

拗ねた様子の彼は目線を合わせないように少しそっぽを向いている。

九十九は無意識に彼に近づき、彼の顔を手を添えこちらを向かせた。


「え、九十九?」

「…本当?」

「え、何?」

「…本当に終わってほしくないって思う?」


(だって、学校中の人気者の山下くんが。ハイスペックで何でも簡単にやってのける山下くんが。私の腕をグイグイ引っ張って色んなことを教えてくれる山下くんが。大好きな山下くんが。私との偽物の恋人関係を終わってほしくないなんて。そんなことあるわけない。でも。)


期待せずにはいられない、彼の言葉を。


「思うよ。思ってる。今ずっと思ってるよ。」


九十九は山下の顔を除き込むように身を乗り出していたが、全身の力が抜けるように、その場にペチョンと座り込む。


「九十九?」

「ふふ、やばぁ〜い。嬉しい。」


少し、彼の口癖が移ったようだ。でも確かにこの表現がなんだかピッタリな感じがした。

ニヤニヤが止まらないし、多分顔も真っ赤だ。


「…九十九?……本当?」

「ん?」

「本当に寂しい?」

「うん。本当に寂しい。」


彼が両手で九十九の頬を挟む。

少しでも気持ちが伝わるように、彼の手に擦り寄るようにした。


「じゃー九十九。」

「…ん?」


彼の手に顔を挟まれたまま見上げると、彼は真っ赤な顔に決意を込めた表情をしていた。


「俺とちゃんとした恋人になって!」

「…………ん?」


あまりにも想像できなかった言葉だったので、脳に入ってこない。入ってきてもあまりにもあり得ない内容に受け付けられない。


「このまま、罰ゲームじゃなくて俺の本当の彼女になって下さい!」

「……………え?」


九十九の首を傾げる様子に山下の決意の顔が次第に崩れていく。


「………あの。………九十九。」

「……………あれ?…夢?」

「ゆ、ゆゆ、夢じゃないよ!九十九!」


山下の真っ赤だった顔がいつのまにか真っ青になっている。九十九の頬を挟んだ手が小刻みに震えていた。


「…え?………あ、はい。」

「つ、九十九?」

「………はい。あ、お願いします。」

「つ?……え、何?」


2人はパニックを起こしているので会話が成り立たず、頭には『?』が大量に飛んでいる。


「…あの、…はい。よろしくお願いします。」

「…………え…。………それは恋人になってっていう俺の告白の返事で…………あってる?」

「はい。そうです。……よろしくお願いします。」


九十九が顔を真っ赤にして山下の手に挟まれたまま、顔を俯けていく。

山下も青くなった顔を再度、真っ赤にさせていた。


「……………………うそ、」


そうポツリと呟いた彼から、急にガバッと抱きつかれた。


「〜〜〜っ!やばーーーい!!」


大きな声で彼は叫び、そのまま九十九を持ち上げる。「ひゃっ!」と声を出し、九十九は山下の首に腕を巻きつけた。


「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!」


彼は九十九を抱えたまま部屋中をソワソワ動き回る。恥ずかしさで九十九は山下を軽く叩き「山下くん降ろして!」と訴えると、ハタと彼は動きを止め、九十九の顔を見た。


「俺の彼女。九十九が俺の彼女。」

「や、山下くん。」

「うわぁー!やばい!」


すると彼は九十九を布団の塊の上にポスンと座らせる。

敷布団に掛け布団に毛布や枕、全てを畳んで布を被せているソレは意外と高さがあり体重で少し下がるも座ってちょうど床に足がつく高さだ。


(あれ…もしかしテ…ワタシキケン?)


体がカチンと固まってしまうが、そんなことは気にせず、山下は膝立ちして九十九の腰に抱きつく。


「ヤバイ。どうしよう。幸せ過ぎる。」


そう彼が呟く。

そんな彼の髪を手ですくうと、彼は顔を上げ、九十九を抱きしめていた腕を解いた。

少しだけ落ち着いた様子で、緊張気味に喋り出す。


「……本当に……俺の彼女になってくれますか。」

「………はい。山下くんの彼女になります。」


山下は九十九の両手を自分の両手をですくい、自分の顔に近づける。


「…絶対、大切にします。絶対、守ります。命をかけて誓います。」


まるで小説や映画の騎士の誓いのようだと九十九は思った。誠実な気持ちが繋いだ手から、触れている額から伝わる。


「ふふ、命はかけなくていいよ。でも嬉しいです。ありがとう。」

「……九十九。好きだよ。」


山下の言葉に心臓がバクン!と大きな音を立ててなった。


(好きな人から好きと言われてしまった!)


すでに赤いはずの顔がさらに赤くなっているのがわかる。そして「私も好きです。」と返そうとした瞬間、


「…俺の女神。」


彼の囁いた言葉に心臓が違う意味でドクン!と大きくなった。


(オレノメガミ……俺の女神?……いや、違う違う違う!私は山下くんの女神じゃない。)


九十九はドクンドクンと先程までとは違う心臓の音を響かせながら山下を見た。


以前、聞いたそのフレーズ。

『女神』

それは多分、山下の好きな人のことだったはずだ。

手をグイグイ引っ張って行ってくれる子で山下の出来ないことや考えつかないことをポンってしてしまって、山下の世界を変えたという、あの。


(どうしてここでソレを言ってきたの?……どう考えても私にかすりもしない。)


心がザワザワとする。

不安が顔に出てたのか、山下も不安気な顔になった。


「九十九?どうしたの?……やっぱり嫌とか?」

「え!?ううん。そんなわけない。」

「九十九、好きです。」

「……はい。私もです。」


それを聞いた山下が満面の笑みでギューと抱きしめてきた。九十九も彼からの「好き」が嬉しくて抱きしめ返す。それでも、何か心に引っかかったものが九十九から「好き」を言わせないでいた。


「あ、あの。…山下くん。時間。」

「え、……あー……。今日はもういいんじゃないかな。九十九と一緒にいた方が絶対、楽しいよね?」

「い!…いや、良くないよ!行かなきゃダメ!絶対ダメだよ!約束だもん。」

「でも、まだ、九十九と一緒にいたい。」

「…ちょ、」


18禁顔には慣れても、直接的な山下の色気には慣れず、変な汗が出てくる。


「嘘つくのはダメ。嘘つきは嫌い。」


焦った九十九がそういうと、山下は体をカチリと固め「はい。そうだね。行こうかな。」と棒読みのセリフを喋り出した。


(あれ。まだ私に何か嘘ついてんの?)


以前、異性のタイプの話をしていたときと同じ反応をした彼に不思議な気持ちになる。

些細な嘘は平気で言う山下だが、そんな体を固まらせるほどの嘘は何だろう、と頭をひねる。



その後、山下がやっと体を離してくれたので、ケーキやお皿を片付ける。

頭や体がフワフワしていて夢の中にいるようだ。


「あ、そうだった。これ。」


ケーキの箱や店に返す食器類を持って山下の部屋を出ようとしたときに思い出した。


「何?」

「誕生日おめでとうと1ヵ月ありがとうの気持ちを形にしたくて買ったの。たいしたものじゃないんだけどプレゼント。」

「え、わぁ!ありがとう。開けていい?」

「うん。」


そう返事をすると山下は包装を丁寧に取って箱を開けた。


「コップ!可愛い!」

「うん。飲み物入れたら模様が出てくるの。あまり必要ないかもしれないけど。」

「ちゃんと使う。あ、これって同じ店にお揃いある?」

「うん。多分あったはず。模様が違ったけど。」

「じゃーその店教えて。お揃いを九十九にプレゼントするから、ここに置いて一緒に使おう。」


この部屋に九十九のものが当たり前のように置かれるなんて、なんだかジワジワと幸せがしみてくるような感覚を初めて味わった。





読んでいただきありがとうございます。


やーーーっと本当の恋人同士になりました!

お待たせしました。長かったー!

もうニヤニヤが止まらない!


でもまだまだ終わりません。w

これからの試練を2人はどう乗り切るのでしょう。

なんって。

まだまだ2人のラブラブなとこが書きたいのでのんびり行きます。


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