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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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番外編〜則文から見た彼〜

いきなり番外編!則文目線のお話です。


罰ゲームが終わる前に書きたかった話を

いきなり入れてます。


読まなくても全然、大丈夫。


「九十九さん!この後、ちょっと飲み行きましょうよ!」


久しぶりに残業があり帰りが遅くなった則文に、後輩の安坂が声をかけて来た。

時計を見ると9時を回っている。

家には残業で遅くなると伝えてはいるが、その上、飲みに行っていたとなると妻、恵美子の機嫌が悪くなるのではと思った。


「いや、もう遅いし、今日は帰る。」

「いつもそう言って断るじゃないですか!たまには付き合って下さいよー!ってか失恋したんです!愚痴聞いてくださいよー!」


安坂の言葉にさらに疲れが押し寄せてくる。

そして、グイグイと引っ張られ、断る間もなく店に連れ込まれてしまった。


「すごくオシャレな店だなぁ」


失恋の愚痴とやけ酒とくれば、少し汚い居酒屋に連れて行かれると思っていた則文は店の雰囲気に驚いた。


「そうでしょ?九十九さんがウダウダ言ってるから家に近い店を選んでみました。」

「確かに近いな。車で5分もかからないとこだ。でも男2人でこの店はおかしくないか?」


まるで恋人同士がくるようなオシャレで高級感のある店だ。


「ああ。ここダメなんす。意中の女の子とか彼女を連れてこれないんです。彼がいるから。」


そう言って安坂は1人のギャルソンを指差す。


「連れて来た女子は彼に惚れちゃうですよねー。だからここには女の子連れてこれないんですよ。」


安坂が指差すそこには整った顔立ち、均等のとれたスタイルの見知った人がいた。


「なんだ。山下くんじゃないか。」

「……え!九十九さん、彼のこと知ってるんですか?」

「ああ。娘の同級生だ。」

「まぁじっすかぁ!ってかこの店、全員が名前呼びなんで苗字わかんないんですよ。ユウヤくんって山下って言うんですね。………あれ…九十九さんの娘さんって大学生でしたっけ?」

「いや、高校生だが?」

「え!!じゃーユウヤくんも高校生なんですか?!」

「あぁ。高校生だな。」


つい先日、自宅に制服姿で来ていたのを則文は思い出しながら話す。


「なんだ?彼が嘘でもついたのか?」

「まさか!彼は自分のことほとんど話さないですよ!でも見てください。あの見た目で高校生なんて思わないじゃないですか!俺、ずっと23、4歳くらいかなって思ってたんです。」


そう言われ、則文は再度、山下を見る。


あまりにも整った顔が落ち着いた笑顔を客に向けている。白のシャツに黒のベストと腰から脛まであるエプロンが彼のスタイルの良さをさらに際立たせており、客への丁寧な口調やサーブが彼自身を品良く見せている。


確かにこの姿を見れば高校生には見えないと則文は思った。


「でも、客にお酒を勧められた時は『俺、まだ飲めないんです』って断ってたから、もしかして19歳なのかな…とも思ったんですけど。」

「けど?」

「すごく強引で面倒な客が『俺の酒が飲めねーのか!』って言い出した時は、笑顔で『いただきます』って飲んでたんですよー。だからどっちなのか本当にわかんなくて。」


則文は少し頭が痛くなり額を抑えた。

娘と同じ年の子が無理矢理、酒を飲まされるなんてあっていいことではない。


「しかもショットガン!3、4杯は飲まされていましたよ!それでもケロリとした表情でその後も仕事してましたから!」

「次は止めてあげてくれ。それか、他の従業員を呼ぶかしてやってくれ。未成年に酒を飲ますとか犯罪だぞ。」

「だから!未成年とは思えなかったんですって!」

「彼は正真正銘の高校生だ。この前も制服姿でウチに来ていた。しかも、誕生日が来ていないから彼はまた16歳だぞ。」

「じゅっ……!」


あまりの衝撃に安坂が固まる。


「彼はいつも10時にはバイトを上がるだろう。高校生のバイト時間は法律上10時までだ。」

「うーわー。まじかぁ!」


そんな風に話していると声がかかる。


「…則文さん?」


振り返るとそこには噂の彼が目を大きくして立っていた。


「山下くん。」

「わー。こんなところで会うなんて奇遇ですね!」

「ここは君のバイト先なんだな。」

「はい。前に九十九と恵美子さんが昼間に来てくれてたんで知っていると思ってました!」

「近く、とは聞いていたんだか、まさかこんな店だとは。」

「昼は普通にカフェですよ?」


ケロリとした顔で彼は話す。


「うわー、本当に九十九さんと知り合いなんですね。」


そんな風に安坂がつぶやき、それに山下が気づく。


「あ、いつも来てくれていますよね。ありがとうございます。先日も1人で来て飲みながらゆっくり過ごされてたんでかっこいいなぁと思ってたんです。」

「え!いや、そんなことないよ。たまたま1人で飲みたくなっただけだから。」

「はい。それが大人っぽいなぁと思ってました。」


自分よりずっとかっこ良く大人っぽい高校生に褒められ、いやぁ〜と照れる安坂を見て、彼の人気の訳が顔だけでないことを則文は知る。


「あ、山下くん、そろそろ10時になるよ。」

「本当ですね。じゃあそろそろ失礼します。あ、則文さんが店に来たこと九十九にメールしてもいいですか?」

「余計なことはしなくていいから。」


山下のセリフに焦って反論すると、彼は大人っぽくクスクス笑いながら頭を下げて行ってしまった。


「まじ、かっこいいっすねー彼。今時の高校生はああなんすか?」

「いや、彼が特別だろう。」


娘は色々と特殊な経緯があるため比較にならないが、彼みたいな高校生がそうそういる訳がない。


彼が娘の想い人だと思うと頭が痛くなる。


その後、少しだけ安坂の話を聞き、重い足取りで家に帰ると、不機嫌な妻に迎えられる。


「飲みに行ったのなら、そこで美味しいご飯でも食べてくればよかったのに。冷えたご飯なんておいしくないでしょうに。」


と、散々、愚痴られた。


(あいつめー!!)


と、例のイケメンを思い浮かべて則文は心で恨みをぶつけるのだった。





読んでいただきありがとうございます。


則文が山下の誕生日をしっていて、

まだ誕生日が来る前。

と、言ったら今のタイミングしかなくて。


最近、山下がデレ過ぎてハイスペックさが薄らいできたので書いたってわけではありません。w

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