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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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放課後からが本番です。


「はい。じゃー今日はこれで終わりだ。また明日!」


担任の上原先生がHRをそう締めくくると、生徒は席を立ち各々、行動しだす。


(やっと終わった……。)


心身の疲労のせいですぐに体が動かない。

こんなに疲れた日はいつ以来だろう。そう記憶を遡ろうとするも、疲れのせいで脳が機能しない。



「九十九?帰れる?」



そっと顔を覗き込まれ、イケメンと目が合うことで足のつま先から脳天までバリバリッと電流が走った。

その刺激でハッと目を覚ます。


(馬鹿、私!最大のイベントはこれからじゃんか!何、油断してんだ!馬鹿馬鹿!)


頭を左右に2、3度振り、脳みそを叩き起こす。


(私は、生きて帰る!ファイトーオー!)


そう、これからの試練にむけて気合いを入れるのだった。





あの問題の昼休みのせいで、山下が5限目の終わりも来るのでは…と勘ぐったが、彼はクラスの男子と話をしており来なかった。

いっそ視線すら向けられなかった。とゆうか、それが普通の罰ゲームカップルの在り方だ。

九十九はホッとし机にうつ伏せる。このまま誰も話しかけないでくれたらいいのに、と思い深いため息をつく。すると、遠くの方でコソコソと話す女子の声と視線を感じだ。


嫌な予感がする。というか多分、予感ではない。

ソッと声の方に目線をやる。

多分、髪のおかげで九十九が見ていることは気づかれていないだろう。


そこには他のクラスの女子が廊下から九十九を指差し囁いている。

「あの子が…」「罰ゲームの…」

所々、聞こえている内容からして、罰ゲームで山下と付き合うことがバレたのだろう。


まぁ、どうせ今日から下校を共にするのだ。すぐにバレる予定なので、そこはたいして問題ではない。

問題といえば、九十九を下見に来る女子の数だ。短い休憩時間の間に20組程が入れ替わり立ち替わりしていく。


九十九は生きて家まで帰れるのか不安になるのだった。





そんな時を経て、気合いを入れなおした九十九は

荷物を抱え、席を立つ。

その様子を見た山下はフワリと微笑んだ。

少しだけホッとした表情に見えたのは九十九の勘違いに違いない。


「荷物もつよ?」


スッと出された手を、顔を横に振ることで拒否した。

すると、またチラリと顔を覗き込まれる。


(なんなんだ。ソレ。やめてほしい。いくら可愛い表情しても、私のカバンはお前にはやらん。)


ふいと、顔を背け、そのままゆっくりと歩くと、山下が隣に並ぶように歩き出す。


「………………」


無言で歩く。ただし、山下からの視線は感じる。

少し気になるが、気にしたら負けのような気がするので、取り敢えず無視だ。

靴箱から靴を取り出し、代わりに上履きを入れる。

振り返るとすごく近くに山下がいてビックリする。

(何してんだ。この人。)

山下は苦笑いをし、少し距離を取り歩き出す。

と、いっても、その距離は普段だったら絶対にあり得ない距離だ。

側から見て、あの2人は一緒に帰ってるんだ、と、気づかれる距離。

案の定、周りからの視線を強く感じる。


「え?何あれ。」「どうゆうこと?」など、声が聞こえてくる。もちろん、堂々と「勇也また明日ねー!」と、声を掛けて行く人もいる。


兎に角、九十九は無表情、無言を貫き、黙々と歩くのだった。



「ねえ。九十九。」



山下が遠慮がちに声をかけてきたのは、校門からしばらく経った頃だった。


「………昼ご飯、一緒に食べるのは…ダメ?」


山下の言葉に驚き、早めに動かしていた足がピタリと止まる。

(……はぁ?……何言ってんの。この人。私に拒否権なんてないし。)


少し呆れたように山下の方を見ると、山下は少しビックリしたように目を開き、サッと晒す。


「今日、1日で色んなことあって…その。九十九の彼氏になるし……」


(罰ゲームだけどな。)


「今までにないくらい九十九と話せたし…」


(主に話してたのあなただけどな。あ、いや、私も「ご飯に…。」って1言いったか……ププッ)


「だから。…少しテンションがおかしくて…その。………舞い上がってて……」


(舞い上がるの使い方、間違ってますよ。)


「九十九に不快な思い…させたなら…謝りたくて…」


(不快な思いなら目が覚めた時からしてるよ!…ってか、さっきまで無言だったのに、何でこんな喋り出したの?この人。)


そうして、ふと周りを見る。

人の数はまばらで、いるのは子どもと歩く主婦や年配の方だ。それもそのはず、九十九の家は学校の近くにある分譲住宅街で、駅やバス停とは逆の方面にある。少し歩けば、学校の生徒はほぼ見当たらなくなる。


(ああ……なるほど。)


他の生徒がいなくなるまで話さないでいてくれたんだ、パチリとピースが上手くハマったような、何かが腑に落ちたような。そんな気分になった。


(じゃーあの時も…)


靴箱を身を乗り出して覗き見ていたのは、女子からの嫌がらせがないか、確認するためか。


(ん?じゃーあれは?)


教室を出てからずっとガン見されてたのは?……何だろう。どのくらいの歩幅で歩けばいいか、観察してたとか?まさかね。と苦笑する。


5限目後に来なかった理由は、九十九を昼休みに怒らせたと思ったからなんだろう。だから、さっきからチラチラと表情を確認していたんだ。


(この人ってこんな不器用なの?)


九十九の山下へのイメージは『器用に世の中渡る人』だ。運動も勉強も対人関係も笑顔でひょいひょいとこなす、そんな人。

まぁ、全くもってその通りの人物なのだが、目の前にいる人は何なんだろう…てゆうか誰?

そう思わずにはいられない。



彼は男だ。九十九がこの世で最も嫌いな男。

しかも最低なゲームに参加してるような奴だ。

多分、悪魔とも契約してる。そんな男だ。


でも、不器用な人だった。

不器用に、九十九の気持ちを汲もうとしてくれた人だ。不器用に守ろうとしてくれた人だ。


多分、今、九十九はほだされている。

自覚はある。でも、彼の行動に半分は呆れていたが、半分は嬉しかった。


長い沈黙の間、山下はソワソワと罪状を突きつけられるような気持ちで九十九を見ていた。そんな九十九が、フ、と顔を上げた。


コクリと頷く。


山下はその様子を見て、目を見開くも、少し思案した後に九十九に問う。


「………えっと……。それは……不快にさせたこと許してくれるってこと?………それとも……お昼一緒に食べて…くれる…ってこと?」


多分、後者はダメだと自覚しているんだろう。言葉が尻ずぼんでゆく。自信のなさそうな顔が面白い。だからだろうか、この言葉を言ったらどんな反応をするのか見てみたくなった。

ただそれだけ。


「………両方。」




読んでくださってありがとうございます。

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