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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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強敵は突然現れる。



「九十九。あれどこの制服?」


移動教室からの帰りに山下から声をかけられ、九十九は振り返った。


山下の目線の先には紺のブレザーにえんじ色のリボンタイとプリーツスカートの制服を着た女の子が4、5人職員室から出てくるのが見えた。


「…あ、近くの高校の制服だよ。確か女子高だったけど今年から共学になったとこ。」

「ふ〜ん。よく知ってるね。」

「うん。女子高だったから…この学校とどっちにしようか少し迷ったんだ。でも商業系の学校だし、少し決め事も多くて無理だったの。」

「うわー!うわー!よかった。九十九がこっち選んでくれて!女子校には行けないから!」

「ふふ。そしたら会えてなかったね。」

「本当によかったー。」


今では山下がいない高校生活は想像できない。

彼もそんな風に思ってくれてるのが少し…いや、だいぶ嬉しい。


ニコリと2人で笑い合って教室の方へ歩き出す。


「あーーー!!!ミオの運命の人ーーーーー!!」


突然の大声に山下と九十九はビクリと身体をゆらした。あまりに驚いたのか、山下が無意識に九十九を自分の背中に隠す。


「何?」


山下が警戒したように周りを確認すると、目の前の他校の女子が勢いよく山下の方へ向かってくる。


「ミオの運命の人だ!見つけた!本当にいた!」


あまりにも大きな声で喋るので移動教室から戻って来たクラスメイトが集まってくる。


「うぉ。めっちゃ可愛い子!」

「何?山下、知り合い?」

「勇也、誰?」


山下の背中にかばわれたままの九十九はまったく前が見えず、動こうにも山下の片手が後ろ手で九十九の腰を抱いているので動けない。


そんな中でも目の前にいる女の子は大きな声で「ミオの運命の人!」と言っている。

それを聞いたクラスの女子がさすがに頭にきたのか声のトーンがスコンと落ち「何?あの子。」と呟いているのが聞こえる。


「勇也。知り合い?」


クラスの女子の代表のように芹川が山下に話しかけた。


「ううん。知らない。ごめん誰かな?」


山下が芹川に答え、その後に騒いでいる女の子に話しかけた。


「あ、ミオのこと覚えてませんか?この前、駅で助けてもらった。」

「………あぁ。あの時の。」


少し考えた後に山下がポツリと言う。

山下は徒歩通学なので『駅』というワードに九十九は不思議に思った。


「わぁ!覚えてくれたんですね!あの時はありがとうございます!」


女の子のテンションがさらに上がったような声が聞こえた。

というか、いいかげん離してほしいと、山下の背中をトントン叩くと、気づいた彼が手を緩めてくれる。そこからヒョイっと覗いてみると、目の前に極上の美少女が立っていた。


大きい目に小さな鼻と唇がお人形のようだ。色素の薄い髪はゆるりと巻かれており両耳下で結ばれている。とても庇護欲をそそられるような、そんな美少女だ。


「あ、うん。どうも。」


そんな美少女を前にまさかの「どうも。」って!

多分そこにいたほぼ全員が山下の顔を二度見した。


「それじゃ。…行こ。九十九。」

「え?」


ニコリと能面笑顔を浮かべた後、すぐに九十九を連れその場を離れようとする山下に、再度彼女が「ミオの運命の人」と呟く。

その言葉に山下が足を止める。


「その運命の人って何?」


少し不機嫌そうな口調の山下が振り返りながら女の子に問う。女の子は慌てた様子で、でも少し嬉しそうに顔を赤くした。その姿がとても可愛い。


「あ、あの。ミオ、助けてもらってとても嬉しくて、勝手に運命を感じてしまって。」

「いや、ただの痴話喧嘩かなと思って無視してたら君が俺の背中に回って来て『助けて下さい!』と言ってきたから仕方なく相手と話しただけで、本当にそんなつもりなかったから運命を感じてくれなくていいと思うよ。」


その場がシンとなる。


多分、その場にいる皆の気持ちが重なったはずだ。「う〜わ〜。かわいそう」と。


「そうなんですね!でもミオ、本当に嬉しくて。あんなにアッサリと解決してしまう姿みて、感動したんです!」


多分、その場にいる皆の気持ちが再度重なった。「う〜わ〜。この子精神つよい」と。


「うん。そうなんだ。でもそんな風に言われるのはとても迷惑だからやめてくれないかな。」

「あ、はい!わかりました。あの、お名前聞いてもいいですか?」

「………山下です。」

「山下さん!ミオ、ずっと名前知りたかったので嬉しいです!ありがとうございます!」

「ああ。目的達成できたんだね。よかったね。じゃーね。………行こ。九十九。」

「わわ…。」


山下にグイグイ腕を引っ張られ、その場から離される。遠くに見えている彼女がキョトンと可愛らしく立っているのが見えた。




教室に戻り、次の授業の準備をしていると、先程の現場に居合わせたクラスメイトが次々と戻ってきた。


「つーか。何あの子!押しが強すぎ!」

「すごかったねー。イノシシ並み。」

「自分のことミオミオ言って頭悪そう。」


女子は大体イラッと来ており口々に嫌味、文句が飛び交う。


「つーか、めっちゃ可愛いかったな。」

「癒し系?守ってあげたくなる系?」


男子は単純に見た目の話をしていると女子から睨まれ少し黙りはじめた。


「でも他校の生徒がうちに何の用があったんだ?4、5人いたけど。」

「なんか、茶道部みたいで、うちの茶道部と一緒に合同お茶会の話に来たらしいよ。」

「茶道部!めっちゃいいな!あの可愛い子にお茶をたててもらいたい!」


つい本音がポロリと出た男子は当然、数人の女子に睨まれていた。


「もう本決まりらしいよ。部長が言ってたし。」

「あぁ。森本、茶道部だっけ?」

「うん。大きいお茶会開いて、生徒に文化を学んでもらおう、みたいな。うちの学校そうゆうの好きじゃん?文化とか交流とか。向こうの生徒も大勢くるらしいし。」

「確かに。てか、あそこ女子高だから、目的がほぼ合コンだよね。マジそうゆうのウザいわぁー!」

「ああ。あそこ共学になったけど今年男子1人も入ってないらしいしね。」


そんな風に愚痴る女子を尻目に男子は「合コンお茶会!」と目を輝かしはじめた。


九十九は席に座ったままその話を聞いて顔をしかめる。


「お茶会だってよ。俺そうゆうの嫌い。」


めずらしく津々見の意見に頷く。


「お茶会ダメ?僕は意外とどんな感じか知りたいけど。九十九さんもダメ?あ、苦手?」


前の席から振り返り、話をする鈴木に九十九は大きく頷く。


最近は津々見が九十九に話しかけ、それを九十九が無視し、津々見が鈴木に促し、鈴木から九十九へ返事を聞く。とゆうのが一連の流れになっており、すでに促される前に鈴木は九十九に返事を聞いてくる段階まできていた。

最初は困ったような顔をした鈴木も今ではもう慣れたようでとてもスムーズな返しをする。


「お前、女も苦手なのかよ。」


そう津々見から言われ九十九は睨みつける。


(女の怖さを知らないガキは黙ってろ!)


「まぁまぁ。知らない人が来るんだから九十九さんも苦手に思って当たり前だよ。」


(…はぁん!鈴木さま付いて行きます!)


「つーか。男も嫌い。女も苦手。じゃーなんならいいんだよ。」


え、と九十九がキョトンとした顔をする。


(なんならいい…もちろん家族とほぼ家族の山下くんと…)


スッと鈴木を指差す。


指を差された鈴木は椅子の上でピョンと跳ねるように驚き、その後カチンと固まった。


「つーか。鈴木だけかよ!?」


そうツッコむ津々見を押しのけて山下が黒い笑顔で「あれ。おかしいな。」と割り込んでくる。


「九十九。本当に嫌いでもない、苦手でもないのは鈴木だけ?」


(うん。家族とほぼ家族の山下くんをのぞいて鈴木さまだけ!)

と、大きく頷く。


「……………………。…………へぇ。」


暗黒な笑顔が九十九から鈴木の方へ向けられる。

鈴木は目が合わないように足元から視線を上げない。しかし顔色は真っ青だ。


その後の授業でも山下の暗黒ぷりは続き、クラス全員、教師共に震え上がっていた。


お昼に「家族と山下くん以外で苦手じゃないのは鈴木くんくらいだよ?」と九十九から聞かされ「何で俺は別口で外されてるの!」という山下の訴えに「だって家族並みに大切だから。」と九十九から返され、山下のテンションが上がったことで収拾がついたのだった。




読んでいただきありがとうございます。


鈴木くんファイトー!

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