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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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特別授業のお時間。〜色んなことを学びました〜


「ただいまー。」


九十九は自宅の玄関に入りそう言う。

するとリビングから大きな音がして両親が駆けつけて来た。


「りんちゃん!大丈夫?どうしたのこんな時間まで。」

「その服どうしたんだ?何があった?」


想像どおりの両親の猛攻撃に九十九はつい一歩下がってしまう。


「あの。突然すみません。」


九十九の後ろに立っていた山下が声を掛けて、両親は初めて彼の存在に気付いたようだった。


「俺、九十九と同じクラスで仲良くさせてもらってる山下勇也と言います。」


ペコリと頭を下げる彼を見ながら「仲良くさせてもらってる…?」と父親が困惑したようにオウム返しをしている。両親共に唖然と驚いていた。


「九十九と仲良くしてるのを他のクラスの女子が勘違いしたみたいで、九十九を呼び出して暴力を振るったみたいで。」


その言葉に母が驚き、九十九に「何をされたの?」と詰め寄る。

「ちょっと叩かれて、押されたの。その先にたまたま噴水があって落ちちゃって。」


母が九十九の頬が赤いのに気付き、辛そうな顔をする。


「俺のせいです。今後こんなことさせないように気を付けます。本当にすみませんでした。」


彼が再度、頭を深く下げているのを両親はまた驚いたように見ている。


「山下くん。山下くんのせいじゃないから大丈夫。ありがとう。」


九十九がそう言って山下の肩を撫でると、それを見た両親がさらに驚愕の表情をする。


「お父さん。お母さん。」


九十九は「2人が反応してくれないと山下くんが頭を上げてくれない。」と思い、両親に声を掛ける。


ハッと我に返った父親、則文が「兎に角、頭を上げなさい。家に入って話を聞いていいかい?」と言ってくる。


「あ、すみません。俺、今バイトを抜け出して来ているので戻らなくてはいけなくて。」

「え!バイト中なのか?」

「はい。……すみません…。」


「ねぇ。…山下くん…だったわよね?…最近りんちゃんとメールしている友達はあなた?」

「はい。」

「じゃークラスマッチの日に倒れたポールからりんちゃんを助けてくれたのもあなた?」

「……はい。」


山下が少し驚いた顔で九十九を見て答えた。

九十九は、両親への報告はしっかりしてます!…と笑いながら山下の視線に頷く。


「………。そう。本当に仲が良いのね。良かった。ごめんなさいね。バイト戻らなくてはいけないのよね。また時間がある時に話を伺ってもいいかしら。」

「はい!もちろんです。」

「ありがとう。バイト頑張ってね。」

「はい。ありがとうございます。」


山下が頭を下げて玄関から出たので九十九もそこまで見送る。


「九十九。家入って。」

「うん。ここまでだから大丈夫。今日はありがとう。迷惑掛けてゴメンね。」

「ううん。俺のせいだから。………ねぇ。10時の電話はまだ有効?」

「え!………いいけど。疲れてないの?大丈夫?」

「全然、大丈夫!じゃーまた10時ね。」

「うん。皆さんによろしく言っておいて。バイト頑張ってね。」

「うん。いってきます。」

「いってらっしゃい。」


そう言って彼は走って行ってしまった。

この光景は今日2回目だな、と思い家に入る。玄関には両親がまだいて、母親はニコニコと笑っているのに対し、父親は複雑そうな顔をしている。


「りんちゃん。詳しく話を聞いていい?」

「うん。心配かけてゴメンね。」


リビングに入ると保冷剤をタオルに包み渡されたたので頬に当て、リビングのソファーに座る。


「彼…とは本当に仲が良いのか?」


そこからして未だ信じられていない父親から聞かれる。


「うん。仲良いよ。」

「呼び出された子っていうのは、山下くんの彼女とかじゃないの?」

「ううん。山下くん彼女いないから。」


(私が彼女です。とは言えない。それに本当の彼女じゃないし。)


ここで更にややこしくなるようなことを言うのはやめよう。と九十九は色々なことを割愛した。


「山下くん学校中からモテるから。そんな女の子が多いんだ。」


「まぁ。あの顔じゃーなぁ。」

「芸能人みたいなキレイな子よね。」


「うん。でね。うーんと。学校の…係の…関係上?…で…1ヶ月だけ送り迎えしてくれるってことになってね、今日も送ってくれてたんだけどね、ゲート近くの広場で話をしてたらバイト先から電話が掛かってきて山下くんは仕方なくバイトに行ったんだけどね、そこで女の子達に捕まっちゃったの。」

「か…係の…関係上?送り迎え?」

「そこはいいの。そこは気にしないで。」

「兎に角、山下くんはりんちゃんを送り迎えしてくれてるのね。」

「うん。でね。女の子達は山下くんのバイト先が知りたかったみたいで、……多分ストーカーして付近まではわかってたんだと思うんだけど、そこまで連れて行かれてね、バイト先知ってるんでしょ?どこ?って詰め寄られてたの。」

「りんちゃんは知ってたわよね?」

「うん。私は教えてもらってたけど、どうやら他の子には誰にも言ってなかったみたいなの。」

「どうして、りんちゃんには教えてくれたの?」

「う〜ん。私もそこが謎で。聞いてみたんだけど、よくわかんないこと言ってた。山下くん考え方変わってるから。」


多分、本人が聞いたらショックを受けるであろうが…しかし九十九の本心を言う。

曖昧な言葉だが娘がケロリと言ってのけるので両親は納得するしかない。


「本人が言ってない個人情報を言えるわけないでしょ?そしたらバシン!と叩かれドン!と付き飛ばされて彼女達は帰って行ったの。」

「…ひどい子達だな。」

「うん。でね。ボンヤリしてたら年配の男の人に声を掛けられて保護されたの。山下くんのアパートの管理人さんでね、しげさんて言うんだけど、私のことを山下くんから聞いてたみたいでね。すぐにバイト先の山下くんに連絡入れてくれてね。」

「ちょ、ちょっと待って。…何でアパートの管理人が凛花のことを知ってるんだ?」

「うん。私もそこが謎でね。前に山下くんからアパート先とバイト先を教えてもらった時にね、何かあったら管理人のしげさんとバイト先のオサムさんに助けを求めてって、2人には私のこと話してるからって言われてたんだけど。私も本気にしてなくてね。だけど…どうやら本当の話だったみたいで。」

「彼の考えがわからない…」


父親が頭を抱えて悩む姿を「本当にね。」と九十九も同意して頷く。


「もしかしたら、2年前の事件を知って同情して保護先を増やしてくれたのかな…と思ったんだけど、山下くんの考えは聞いても理解しがたいので、そういう物と思って流すことにしたの。」


娘の割り切った考えに逆に頭を痛める。


「それでね。バイト先から山下くんが迎えに来てくれて、びしょ濡れだったからお風呂と服を借りて帰って来たの。」

「………なぜそんな壮絶な体験をケロリとした言葉で説明するんだ。」


父親の則文が呆れたように呟く。


「…りんちゃん怖かったね。」

「ううん。女の子達に囲まれた時は怖かったけど、その後は色んな人に助けられたから、申し訳ない気持ちもあったけど、何だか逆に嬉しかったよ。」

「………そう。」

「山下くんはね。自分のせいって言ってたけど、何も悪くないの。強いて言うならカッコイイせい?……いつもはね。家に帰り着くまでゲートで待っててくれるの。『家に着きました』ってメールするまで。…今日はたまたまバイト先から急かされてそれが出来なかったの。だから、すごく後悔しててね、ずっと謝って来てくれてたの。そんなの山下くんのせいじゃないのにね。」


九十九の言葉に山下への信頼を感じ取る。

両親は山下が娘の中で大切な人になっていることに気が付いた。


「…山下くんはとてもいい子ね。」

「うん。そうなの。」


九十九は両親が山下を認めてくれたことに嬉しくなり、ホッと微笑んだ。


「その女の子達は大丈夫なのか?」

「うーん。どうだろう。でも基本、学校では1人にならないし、送り迎えもしてもらってるから大丈夫だと思う。」

「1人にならない?」

「うん。お昼も山下くんと食べてるし、休憩のトイレも教室の近くで、何か騒ぎがあればクラスの子が気付いてくれるだろうから。」

「…………。」


両親はそんなに山下と一緒にいるのか…と唖然とする。


「……彼と付き合ってるのか?」

「…え!付き合ってないよ!…てかあんな人と付き合えるわけないよ!」


急に娘が焦り出すので、少しあやしい…と則文は目を細くする。


「…………もし、私が誰かと付き合うなら……ちゃんと2人には言うから……。」


真っ赤な顔をした娘の言葉に則文はホッとする。

しかし、男性嫌いの娘とそのような会話が出来るとはとても感慨深いと思う。


「りんちゃんが学校楽しいなら私達は何もしない。でも、何かあったらすぐ報告して。」

「うん。わかった。ありがとう。」


その日はずっと山下の話で持ちきりだった。

彼がとんなにすごいか。どんなに変わっているかをいっぱい話した。

両親は色々なことに驚いていた。

彼の言動にもだが、山下に対する娘の行動に驚愕の表情をしていた。


九十九はといえば、今まで両親に言えなかった出来事を言えてスッキリとしていた。


(あー。満足したぁ。)


と、思っているとふと時計を見た瞬間に10時からの電話のことを思い出す。


(…っ忘れてた!)


九十九は慌てて、夕飯の片付けの手伝いやいつも寝る前の準備やらを全部済ませてしまう。

まるで10時には寝る子どものようだ。


両親には「10時に電話するから。」と言って早々に寝る前の挨拶をしてしまう。


(彼のことだ。多分10時になった瞬間に掛かってくるかもしれない。)


そう思い、9時50分には部屋に入り、着替えを済ませてしまっていた。

今、何時かなとケータイの時計を見れば59分だったのでケータイをジッと持って待ってみる。


10:00

リリリリリリ…


もう笑いしかでない。

そうして九十九はケータイの通話ボタンを押す。


「もしもし…」


彼の元気な声が聞こえてくるのだった。




読んでいただきありがとうございます。


特別授業は終了です。

てか、何が特別授業?って思いますよね。

私もです。

一応、九十九が色んな体験をして気持ちに気付くのが特別授業…ってつもりでした。

てへ。

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