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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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1限目は思案の時間。〜あなたを想い綴ります〜


彼はもしかして超能力でもあるのか?

もしくは、催眠術か?

不満を爆発させていた女子が、彼の発した一言で全てを諦めた。それだけの何かが彼にはあるはずだ。


(はっ!悪魔との契約!)


ノートに滑らせていたシャーペンをピタリと止めて九十九はそう答えにたどり着く。


(だと思った。前々からおかしいと思っていたんだよね。あんな爽やかな男いる?女の子だけならまだしも、男の子とも仲良いし、先生にだって好かれて…)


ブツブツと山下の誹謗をひたすら呟き続ける。…と、言いつつ内容は賞賛なのだが、本人は気づいていない。


「あ〜。九十九。……悪いが少し静かに………いや。何でもない。」


数学の教師、田中先生が九十九の独り言を止めるように声を掛けようとしたが、彼女の見開きのノートが真っ黒に塗り潰されているのに気付き、それを止めた。

真っ黒になった上から更にガリガリとシャーペン芯を擦り付ける。

田中先生は九十九と生徒相談室で話をした方がいいと思い至るが、今、話しかけてはいけないと判断する。

正解だ。




あの山下の超能力発揮発言後、すぐに担任の上原先生が来てHRが始まった。と、いっても女子の絶叫と号泣で隣のクラスの先生すら集まり、それをなだめるだけで終わってしまった。


モヤモヤしたものが九十九の中で増幅し、それをノートに綴っている。

そう。綴っているのだ。真っ黒になるほど。



今までに、罰ゲームの相手を数度してきた。その中で、今回ほど九十九を動揺させたことはない。

今まではモテない男と1カ月付き合うフリをしていただけだ。

今回も同様に…とは絶対いかないことを九十九はわかっていた。

多分、彼はこの学校で一番モテる。何人かの女子が山下へ告白しており、噂を聞く限り、全て可愛いか綺麗な女子だ。

そして、それを全て断っている。


(まぁ、噂になっているのは、ほんの一部のことなんだろうけど…)


そうすると、この学校で彼の初めての彼女が九十九ということになる。


(無理無理無理無理!)


女の嫉妬ほど怖いものがあるだろうか。


(ああ…神様。今こそ力を行使する時です。男を絶滅して下さい。)


真っ黒のノートに大きく『男は絶滅しろ』とひたすら書き続ける1限目、数学の時間だった。





「じゃー説明するぞ。」


そう発言する土間からは、いつもの自信たっぷりな態度はなく、周りの様子をチラチラ見ながら、ビクビクと怯弱に罰ゲームの内容を話した。


九十九はもう何度も経験しているため、聞かなくても良かったが、なぜか山下が九十九の横でルールを聞くと言い出した。


ルール

○九十九を彼女と思い、接すること。

○浮気をしないこと(本当の彼女を作らない)

○浮気になりそうな場所に行かない(合コン、女子と二人だけで出掛ける等)

○浮気になる様な発言をしない(彼女はいない、彼女を募集している等。他の女子を口説く、告白するなど、もっての外)

○必ず登下校を一緒にすること(家の事情など、どうしても出来ない時は報告すること)


などなど…少し細かいこともあるが、大体はそんな感じだ。


「じゃーバイトで女性と2人になるのは?」

「そ、それはギリ仕方ないかな。」


山下が生真面目にルールを細かく理解しようとして、何度か質問を繰り返す。それに対し土間は焦りつつ答える。


今まで、テキトーに都合よくルールを作っていた為、改めて真面目に聞かれると矛盾や無理なことが出てくるのは当たり前だ。


「じゃー連絡先聞かれたら?」

「それはダメだろ。」


(あんた、最後らへんは登下校ほぼサボってたよね。……最後らへんは合コンも行ってたよね。)


今のこのカオスな状況を冷静に…いや、冷ややかに見れるのは、この男のおかげだ。


読んでくださってありがとうございます。

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