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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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転校生に慣れました。からの面倒な人の対処の仕方。


学校の掃除の時間は6限の後にある。

今週は教室の当番だ。


床を箒で掃き、モップで拭く。


早く終わらせて早く帰ろう。掃除の時間はよくそう思うが、昨日からは特にそんな思いが強い。


「なぁ。もう机戻していいか?」


「……………。」


気にせず棚を棚用雑巾で拭く。


「なぁ。聞いてんだけど。」


(何で私に話掛けるんだ!そこの可愛い女子に聞け!)

ビシッ!と学年一美少女の芹川を指差す。


「いや、話し掛けるとか無理だし。」


(照れても可愛くねーから!…ってかあんたの私の立ち位置なんなのよ!)


イライラしつつ、教室をパッと見渡すと黒板を掃除している鈴木が目に入る。


(あ!鈴木さまー!助けて下さい!)


鈴木の元へ駆け寄ろうとすると「あ、待て。」と津々見より肩をガシリと掴まれる。そこから全身に向けゾワゾワッと身の毛がよだち、咄嗟にその手を払いのける。


「…っ。なんだよ。いってーな。」


驚いてつい強く払ってしまった九十九は、慌てて頭を下げる。本当にそんなつもりではなかった。


「…あ、いや。こっちもいきなり悪い。」


九十九がすぐに謝った為、津々見の毒気が抜ける。男嫌いなことはすでに知っていたので急に触ってしまった自分も悪かったと思い津々見は九十九の顔を見る。

少し顔色が悪くなっているような気がする。


「…悪い。口調キツかったよな。……大分弁使わなくても怖がられんだから仕方ねーよな。」


「………?」


「あ、いや。大分弁ってキツイらしくてよ。昔、他県から転校してきた女子に泣かれたことあって。だからなるべく使わないようにと思ってたんだけど、標準語慣れねーし。」


九十九はバツの悪そうな津々見の顔を見て、なるほど見た目通り不器用なんだな、だから女子に話し掛けられないのか。と少しホンワカとした気持ちになったが、同時にだったら何故私には話掛けてくるんだ。とイラッとした気持ちにもなった。


(こいつ…本気で私を女と思ってないな。)


ジロリと津々見を睨む。なんだか彼に対して怯えているのが馬鹿らしくなってきだした。


「………。なんだよ。」


(こいつが私を女と思わないなら、私もこいつを男と思わなければいいんだ。)


そう思うと少し気が楽になってくる。


「…なぁ。それよりコレどこになおすんだ?」


九十九の睨みに少したじろいだ津々見は話を変えようとしたのだろう。モップを九十九に差し出す。


(…………。ん?…なおすとは?)


九十九の怪訝そうな顔を見て津々見は慌てる。


「モップのなおすとこ!」


(…なおす?…壊れてるの?…そうは見えないけど。)


「ねえ。それってどういう意味?…モップが壊れてるってこと?」


スッと山下が九十九の横に並び、またも筋肉だけで作ったような笑顔を浮かべている。


「はぁ?…ちげーよ!どこに片付けるかって……こと…………………。え、これ方言?」


言葉の途中で津々見は固まり、九十九の顔を見る。聞いたことないし、そうだろうと九十九が頷くと、津々見は頭を抱えて座り込む。


「うわー!真剣 恥ずかしんやけど。」


少し関西弁のような、しかしイントネーションがテレビで聞くソレとは違う。


「しんけん…?」


「はぁ?…何?それも方言なん?嘘やろ?」


九十九の中でストンと何かが腑に落ちる音がした。ああ。この人は例のヤマトではない、と本能が納得したようだ。


「…それがいい。」

「あ?」

「…大分弁で喋って。」

「………喋ったら慣れるのかよ。」

「………。うん。」

「…じゃーお前の前だけな。」


それでいいと九十九が頷く。

それを見て山下が唖然とした顔で2人を見た。


「…え?ちょっと待って。…何で?今ので何で仲良くなるの?…え?」


すると九十九と津々見が山下を同時に見る。


「「…仲良くない。」」


同時に同じ言葉を発する2人に山下の顔色が悪くなるのは仕方ないことだ。





「九十九。帰ろう。」


HRが終わりすぐに山下が九十九の元に来た。それを見て「え、お前ら帰りも一緒に帰ってんの?」と津々見が話し掛けてくる。

頷くと彼は「ふーん。」と言い「じゃー明日な。九十九。」とバスケ部員と部活に行った。


道中、いつもより山下の発言回数が少ない。

今日の彼は元気がなく、とても不安そうだ。


「………九十九は津々見のこと怖くなくなった?」


意を決したように山下が言ってきた。


『ヤマト』という名詞は未だに九十九にとって禁忌だ。これからどのように対処するべきか考えなくてはならない。

しかし、津々見に対しては『ヤマト』かもしれないという恐怖はなくなった。しかも、彼は九十九を女としてみていない。

彼にとって九十九の存在は芸能人が集まる教室の中にいる同じ一般人…のような扱いだ。

ん?違うか?国宝が並ぶ中に小学生が作った作品が混ざっている?…それも例えが分かりづらい。

兎に角、彼にとって九十九の存在があることで教室に居やすいのだろう。そのうち他の人に慣れてそんな風に思わなくなるはずだ。

だって彼は見た目ワイルドイケメンだし、性格も多分いい…はず。

まぁ今のところ、津々見は可愛い女子に怖気ついて話しきれないヘタレだし、九十九を女と思っていないので、九十九も彼を男と思わないようにした。彼の存在は鈴木に近い。自分を害さない人だ。そのため、津々見のことは怖くない。


そう思い、山下の言葉に九十九は頷く。

それを見て山下はさらに不安そうな顔をした。


「……じゃー………好き?」


すぐに首を振る。

彼を不安にさせてるのは津々見の存在なのか。そういえば昼も津々見のことを聞いてきた。

九十九と津々見の距離が縮まることが気になっている様子だ。


(…これはもしかしてヤキモチというやつでは…)


自分にしか懐かなかった子犬が、急に現れた奴に懐きだした時の感覚だろうか。

九十九はそんな風に思うも今まで誰かからヤキモチを妬かれる経験がないため、少し浮き足立つような気持ちになる。

しかも、ヤキモチを妬いてくれた人が憧憬する山下だ。今まで彼に何度もヤキモチを妬いてきたが、まさか彼が九十九に妬いてくれることなどあるとは思わなかった。

そんな風に思うと山下がとても可愛く感じる。


「……ふふっ」


「…何で笑うの?……やっぱり好きなの?」


山下の顔が拗ねたような不機嫌顔になる。

それすら可愛く見えるので重症だと思った。


「好きじゃない。…どうしたら山下くんの機嫌がなおるかなと思っただけ。」


「…!!……膝枕してくれたらなおると思う!」


拗ねた顔から一転、目が欲望を孕みキラキラと輝く。


「……今日もバイトでしょ?そんな時間ないよ。」


「………。今日は休み!」


「嘘はダメと思う。」


あれだけ言葉を詰まらせておいてよく堂々と嘘ついたな、と呆れながら九十九は言う。


「…じゃー……ちょっと待って。……手を…いやいや。……頭……うーん。」


じゃーって…。大体、何に悩んでるんだろう。っていうか既に機嫌はなおってるのでは…


「…なおってないから!」


九十九の表情を見て山下が咄嗟にツッコミを入れる。考えを読むのはやめてほしい。そう思うも山下の唸り声にキリがないような気がして九十九は歩き出す。

「ゲートに着くまでに考えないと無効ね。」と言うと山下が焦る。


「じ、じゃーハグして!」

「ハグ?」

「うん!」


山下が九十九の顔を覗き込む。こうゆう時は「ダメかな?」とお伺いを立てている時だ。

九十九にとっては今朝の行為とたいして変わらないし、膝枕より羞恥レベルは低い気がした。


「いいよ。」

「いいの!?」


山下の顔がじわじわと赤くなっていくが、ここには生徒もいないし問題ないだろうと思い、九十九は「…はい。」と手を広げた。

山下がソロリと近づいて来て九十九をゆっくり抱きしめる。九十九も山下の背中に手を回す。


(……あ…これ、気持ちいいな。)


九十九は頭をずらすとこめかみに彼の鎖骨が当たる。そんなことで身長差を再確認する。

2人の間には沢山の空間が空いているはずなのに九十九はパズルのピースがピチリとはまったような感覚になる。

彼の少し早めの心臓の音が心地よい。


トクトク…ドクドク…ドッドッドッ…


「……って!心臓、大丈夫!?」


九十九はあまりに速い心音に不安になり体を離すと、山下が真っ赤な顔で必死に九十九の体を捕まえる。


「大丈夫じゃないけどもう少し!!」

「ダメだから!発作起こすから!止まるから!」


つい山下の口調で止めてしまう。

その後も山下は粘ろうとするも九十九は全力で拒否をした。

ハグで心臓止められたらたまったものではない。




読んでいただきありがとうございます。


津々見に慣れる回では頭の中でキャラクターがピタリと動かなくなって困りました。


どんだけ仲良くなりたくないんだよ九十九。

と思いながら書いたので少し表現とかがおかしいかもしれません。すいません。

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