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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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自主的に学校の風紀を守ろう!


「おはよ。九十九!」


朝からイケメンがキラキラした笑顔を振りまいている。


(はい。紫外線対策はバッチリしてきました。)


そんなことを考えながら「おはよう。」と答えると「わぁ。初めて挨拶返された!」と山下は感動し始めた。

そうだったかな…と考えるも彼のことは家族並みに信頼してると自覚しただけで九十九の中では特別に対応を変えているつもりはなかった。


「昨日のご飯美味しそうだったね。」


「うん。お父さんの知り合いが経営してるレストランでね、どの料理も美味しいの。」


「フレンチでしょ?そんなとこ行ったことない。高級そうだった。」


「ふふっ、私もそこの店にしか行ったことないよ。たまに…特別な日とかに行くの。」


すると山下が再度「わぁ。笑ったぁ!」と感動し始めた。

いい加減うざい。そんな目で彼を見るとすぐに顔を引き締めキュッと口をつぐむ。


大体、山下の前では結構笑っているはずだ。


(あなたの行動が奇怪すぎて。)


「…………。…あ、そういえば九十九。クラスマッチの日はサンドイッチありがとう。美味しかった。言い忘れててゴメンね。」


(あ。初めて美味しいって言われた。)


でも、そうじゃない。九十九が欲しい「おいしい」は口に入れた瞬間に山下が叫ぶ時のアレだ。

それに、あのサンドイッチはサンドはしたが具を用意したのは母だ。

なので、山下の言葉には軽く頷くだけにした。


「あ、箱忘れて来ちゃった。サンドイッチが入ってた箱。明日でもいい?」


「箱なら捨てていいよ。」


「え!すごく可愛い感じの箱だよ?」


「うん。でもあれ、お土産でもらったお菓子の箱にお母さんが包装紙を貼り付けたリメイク箱なの。使い捨て用の。」


「………捨てていいなら貰ってもいい?」


「……いいけど。…汚れてたよね?」


一応、衛生上の問題から箱にはクッキングシートを敷き詰めサンドイッチを入れたが、油は染みていなかったのだろうか。


「ううん。そんなに。」


「……ならいいけど。……新しい箱いる?まだあるよ。」


もし、誰かのプレゼントに使うんだったら大変だ。多分サンドイッチの匂いが残ってるし、油も付いてるはずだ。


「ち、違うよ!他の箱が欲しいわけじゃないから!ただ、嬉しかったから記念に……と思っ…て…」


言いながら恥ずかしくなったのか山下の声が小さくなり頬が赤くなっていく。


ならいいけど。と九十九は話を止めるが、フと考える。彼はすごくモテるだろう。バレンタインや誕生日に色んな人から色んな物を貰っているはずだ。その箱などを記念にと集めてたら部屋中が箱だらけになるのではないだろうか。


(………………。変な想像は止めよう。)


少し遠くを見てると、山下が焦って九十九に話し出す。


「……違うから!…変な収集癖とかないから!…変な事に使ったりもしないから!」


「……………?…変な事って何?」


「……………………。」


「…………………使うって何に?」


「……………………。」


純粋な瞳で純粋に質問をしてくる九十九に山下は言葉が出ない。

初めて九十九が喋って困ると感じる山下だった。




お昼になった。

クラスマッチの日と土日で合わせ3日間ぶりに一緒に食べる昼食だ。


「九十九。卵焼きちょうだい。」


食事の挨拶後にすぐに山下から言われる。卵焼きが弁当に入っていたのでご機嫌だ。

そんな彼に小さめのお弁当箱を渡した。


「……え。」


渡されたお弁当箱と九十九を交互に見る。


「…昨日、外食だったから弁当のおかずがなくて、夜に下準備したの。もうそこまでしたらお弁当1つも2つも変わらないから。」


九十九の言葉に山下の唇がフヨフヨと動くが声が出ないみたいだ。お弁当を開けると、九十九のお弁当と同じ中身で、山下は顔をじわじわと赤くさせる。

山下はいつものような大口ではなく1口1口を丁寧にゆっくり食べた。


「……はぁ…幸せ…」


(おぉ!「おいしい」はいただけなかったけど「幸せ」をいただきました!)


ならいいや。と九十九は満足し自分の弁当を食べ始めた。

しかし、ゆっくり食べていた山下が九十九より早く食べ終わり、九十九がお弁当を食べ終わる頃にはパンを2つほど食べ終わっていた。

そうして3つ目を今開けている。


(……くっ…いつかあの胃袋にも勝ってやる!)


「…あ…九十九。お弁当ありがとう。洗って返すから。」


「………うちで洗うから大丈夫。」


「や、さすがにそこまでしてもらうのは…」


「明日も使うから。」


そう言うとサッと山下が弁当箱を返してくる。


「………明日……」


またフヨフヨと山下の顔が緩んでいく。

こうも頻回に18禁顔をされると、脳内モザイク修正を掛けるのが面倒になってくる。

よし、慣れてしまおう。そう思い、山下の顔を見てみると案外すでに慣れているのに気づいた。

しかし、このままでは学校の生徒に被害がおよび、また面倒な騒ぎになる。

どうやって戻したらいいか。


「……つ、九十九?」


じっと見つめられ、山下がソワソワしている。


「……その顔キライ。」


「っ!!!!!!!!」


バーーーン!!と

幸せの絶頂からどん底へ叩きつけられ山下は息すら出来ずに固まった。もしかすると心臓が少し止まったかもしれない。


「いつもの顔がいい。……戻して。」


いつもの顔とはどんな顔だろう。キライと言われた顔はどんな顔だったのだろう。山下は混乱しながら考えを巡らせるが答えに辿り着かない。兎に角、何か縋れるものはないかと必死だった。声が震えるのは仕方のないことだ。


「………いつもの顔は………キライじゃない?」


「うん。」


「………好き?」


「…うーん。…うん。」


「……よかった。」


はぁ…と息を吐く。やっと山下は息ができるようになった。


「あ、よかった。戻った。」


ニコッと九十九は可愛らしく笑う。

九十九はこうして学校を守った。

そう、確かに守ったのだ。

が、しかし行った行為は小悪魔を通り越し、大魔王の所業だ。




帰りになった。

昼休みに受けたダメージが少しずつ回復した山下が九十九に話し掛ける。


「九十九。今日もメールしていい?」


今日…ということはバイト中に…ということだろうか。九十九は少し考えて答える。


「………怒られない?」


「うん。大丈夫。」


(まぁ、立ち回るのうまそうだもんね。)


「…迷惑にならないならいいけど…。もし、メールに夢中で注意されたり怒られたりしたらもうメールしない。」


「……えっ!!…それはバイト中にしないってこと?これからずっとしないってこと?」


「これからずっと。」


「絶対、怒られないから!!」


山下が食い気味に宣言した。

と言っても、怒られたかどうかなんて九十九にわかるすべはないのだが。でも、自分が原因で山下の評価が下がるのは嫌なので厳し目に言っておく方がいいだろう。


「今日も10時までバイト?」


「うん。そう。」


「毎日、遅くまで働いて大丈夫?うちのお父さんも心配してたよ。」


「うん。大丈夫。心配してくれてありがとう。」


山下がニコニコ笑う。


「…あ、そういえば、クラスマッチで山下くんが助けてくれたこと言ったら、お父さんとお母さんがお礼がしたいからうちへ来てもらいなさいって言ってた。」


「え!!うそ!行きたい!」


(おぉ。やっぱりハイスペックな人は彼女の家なんてヘッチャラですか。)


そんなことを思ってると山下が悩み出す。


「九十九のお父さんは土日がお休みだろ?あー。俺、土日は全部バイト入れてるわぁ。来月でもいい?」


「………いつでもいいけど……別に土日じゃなくてもいいよ?」


「やだ。ちゃんと挨拶したい。慌ただしくは嫌だ。」


そんな会話をしていると九十九の住宅街に着いた。ゲートで別れ、家にたどり着いてから『着きました。』メールを出すと そこからメールが続き、山下の『時間だ!バイトいってきます』と返事が来るまでハイペースなメールのやり取りが続いた。


バイトが始まってからも山下のメールがちょこちょこ届く。

メール内容にクスクス笑いながら、やはり山下にはバイトで怒られないように頑張って欲しいと思う。


こんなに楽しいメールが終わるのは悲しいから。



読んでいただきありがとうございます。


だいぶ、九十九が喋る子になってきました。

山下に関しては、幸せそうにヘラヘラしてるとつい叩きのめしたくなるのは悪い癖です。


2人の仲の良い姿をもう少し見守ってもらえると嬉しいです。

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