クラスマッチ本番。〜スポーツマンシップに則り戦います。いえ やはり少し罠だったかもしれません〜
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今日は練習に頑張る九十九に母がお弁当を作ってくれると言ってくれた。昨日の夜から準備をしてくれて、今朝は一緒にそれを作った。
(サンドイッチ美味しそう。)
兎に角、具沢山で見た目も可愛い。卵はもちろん、ツナマヨや照り焼きチキンやハム。デザートにイチゴのフルーツサンドまである。
綺麗にカットされたサンドイッチを可愛いバスケットに入れてくれた。それだけでテンションが上がる。
「うわぁ。九十九さんのゴハン可愛いね。」
そう言われれば嬉しさ倍増だ。自分1人では食べきれない量が入ってたので皆にお裾分けする。
今頃、山下もサンドイッチを食べているのだろうか。ふと思う。
彼に渡したものは九十九が作ったものだ。と言っても具は母が作ったのでサンドしただけなのだが。
母はお土産でもらった箱に綺麗な柄の紙を貼りリメイクすることが趣味で家には大小さまざまな箱が沢山置いてある。その中でシンプルかつサンドイッチが映える可愛い箱を選んだ。
その箱に色や形のバランスを考えて四苦八苦しながら詰めた自信作だ。出来上がりを満足気に頷いて眺めていると、ずっとモノ言いた気に見ていた母が「…お友達用?」と聞いてきたので少し悩んだ後に頷いた。すると、母は嬉しそうに笑った。
(まぁ多分5分もかからず食べ終わっているんだろうけど…)
そして多分、今日も叫んでいるんだろう。
「サンドイッチ!!」と。
想像して、笑いが込み上げてくる。
そんな楽しい気分の中、皆であの試合は…とか、あの選手が強かった…とか、時々起きたハプニングなどを笑いながら話す。
とても、楽しい。
「次の決勝の相手さぁ。本当に強いんだよね。私1年の頃からメッチャしごかれたんだけど、その分 自分にも厳しい先輩でさ。」
丸山はその先輩のことを尊敬しているのだろう、彼女の話をしていると顔が綻んでいく。
「先輩には山下トラップも効かないだろうし、ここは皆で確実に点を取っていこうと思うんだ。」
あ、トラップって言っちゃった。
そう思うも余計なことは言わず、九十九は丸山の作戦や動きの流れを把握していく。
クラスマッチ最後の1試合だ。気合いを入れる。
昼休みが終わりコートに選手が集まる。山下が応援に来ているので観客が多い。
多分、九十九達の気合いの入った雰囲気を察したのだろう。山下は昼休みを明けても話し掛けて来なかった。しかし、コートに入る九十九と目が合うと「頑張れ。」とばかりに頷いてきたので頷き返した。
そうして試合が始まった。
丸山の言っていた通り、今までのチームの中で1番強い。しっかりと1番の弱点である九十九に狙いを定めており、強いボールが九十九に向かって飛んでくる。しかし、それはこちらも把握済みなので上手く連携を取ってボールを返していく。
受け身だった九十九が突然、スパイクを打った時は意表を突けたのか、まさかの点が入り、つい丸山と抱き合ってしまった。
しかし、ジワジワと点差が出来、試合は5点差で負けてしまった。
短い試合なのに最後は息が上がるほど激しい戦いで、終わった直後に歓声と拍手が上がった。
丸山は例の先輩に「流石ですね!負けました!」と笑いながら話しかけ「まだ負けないよ!」と頭をグリグリ撫でられていた。
それを素敵だな、と眺めていると丸山から突然、肩を組まれた。そしてチーム皆と肩を組み、そのまま体育館から出る。
「楽しかった!…ちょっと悔しいけどやりきった!」
そう笑う丸山に九十九は「…ごめんね。」と謝る。
試合中はずっとチームの皆がフォローをしてくれた。失敗だっていっぱいしてしまった。多分 九十九が気付いていないことで邪魔な動きをしたこともあるはずだ。
もしかしたら、九十九がチームにいなければ勝てたかもしれない。
そんな気持ちを丸山は気付いたのだろう。
とても柔らかい笑顔を九十九に見せた。
「うちら、九十九さんのフォローするのにメッチャ連携したんだよね。これまでにないくらい。」
すると他のメンバーも笑いながら言った。
「確かに。こんなに上手く協力出来たことってある?ってくらい連携出来てたよね。」
「そう。だから逆なの。九十九さんのおかげでここまで戦えたんだよ。だからすごく楽しかった。満足!」
本当に満足そうに丸山は向日葵のような笑顔で笑った。九十九は声が出なかった。嬉し過ぎて。
涙が出そうになるのを必死にこらえていると、皆から「あはは!泣くな。泣くな。」と抱きしめられた。
(頑張ってよかった。あの時 踏み込んでみてよかった。)
競技の選択の時、いつも残った競技に参加していた。それを初めて手を挙げ自分の意思を伝えた。九十九にとって最大の勇気を振り絞った行為だった。
それを馬鹿にするでもなく、丸山やチームの皆やバレー部の皆も九十九に尽力してくれた。
本当にただただ楽しくて嬉しい日々だった。
「私も楽しかった!ありがとう!」
そう、心から皆に感謝を述べると、さらに皆からギュギュッと抱きしめられた。
「おい!九十九!!」
「……………。」
(おや、こんないい気分の時に男の声が聞こえた気がする。いやいや、まさか。こんな感動の場面で話し掛けてくるバカはいないだろう。うん。気のせい。気のせい。)
「いや、気のせいじゃないからな。無視すんな。」
空気を壊されムッとした九十九がしぶしぶ顔を上げると土間がいた。
「バスケの決勝が始まるんだよ。応援に来い。」
「……なぜ?」
「ぅお!喋った!」
イラっとした気持ちがそのまま表情に出ていたのだろう。土間が口を一瞬閉じておののいた。
「………。お前がいないと山下のやる気がなくなる。」
(何をバカなことを真顔で言っているんだ。こいつ。…冗談キツイ。)
「いや。冗談じゃない。」
(いや。心を読むな。)
「つーか、あいつマジ何なの?お前がバスケの試合を見てると真剣にプレイするくせに、お前の試合が被った時は試合中でもポヤーっとバレーの方見てたりするし。」
(山下くん何やってる………。)
「さっきも。お前らが仲良く体育館から出て行った瞬間からテンションだだ下がりで、やる気半減してんだけど。あいつってあーゆー奴っけ?」
(知らないよ。私も山下くんについては5%すら理解できてないよ。)
「兎に角、俺はここまで来たからには優勝してーから。お前、山下からほとんどの試合で応援してもらってんだろ?そのくらい協力しろ。」
九十九は少し悩むも、確かにずっと応援してくれたし、影ながら(?)トラップとして活躍もしてくれたし、応援しようと元々思ってし、と言い訳のように自分に言い聞かせ、土間に頷く。
「よし。じゃー早く行くぞ。試合始まる。」
丸山達に目配せすると「いってらっしゃい。」と手を振ってくれたので皆に頷き、焦る土間の後について行った。
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