HRが始まらない。
今日、HR前に行われるのはゲームの順位発表だ。
ゲーム内容はくだらない。
先生にばれずにイタズラが成功した、とか。
クラスでどれだけ笑いを集めたか、とか。
小さい賭け事をどれだけ当てられたか、とか。
(しょうもない。)
でも、彼らは、そのゲームをする事で、自分達はクラスの中心にいるかの様に勘違いをしている。
(厨二病を患わっていらっしゃる。)
だからだろうか、土間は大声を出してクラスの注目を集める。
「よ〜し!じゃーゲームの順位を発表するぞ!」
呆れてる人もいれば、便乗して騒いでる人もいる。そんな中、九十九は半目がちにその様子を黙って見ていた。
普段なら、こんな馬鹿らしい事には一切、関わらない。それ以前に人と関わらないように日々、努力をしている。
家族以外と1言も喋らなかった日は『頑張ったで賞』としてケーキをご褒美として買って帰るほどである…という話は余談だ。
それでも、このゲームの行く末を見守らなければいけない理由が九十九にはあった。
このゲームの優勝者は2位以下の者から学食、又は遊び先での支払いを奢ってもらえる権利が与えられる。多分、金額の上限は決まっているとは思うが、参加者以外は深くは知らない。
そして、最下位者は罰ゲームがある。
罰ゲーム内容は
『九十九と1ヶ月付き合うこと』だ。
次第に九十九の目が据わる。
そんな、様子を見たクラスの女子が囁く。
「ってかさ、九十九さんも嫌ならこんなゲーム断ればいいじゃんね。」
「案外、本人、楽しんでるんじゃない?」
あははは!と甲高い嘲笑が、さらに九十九の癇に触る。
(誰か好きこのんでこんな馬鹿達の相手をしたがるんだよ‼︎)
悔しくて奥歯をギリリと食いしばる。
このゲームの罰ゲームの対象になったのは1年の半ばだった。
「じゃーこれからゲームしようぜ。負けた奴は九十九に告白な!」
突然クラスで名前を出されたことに唖然としてしまい、展開について行けず、何も対応できなかった。
ゲームが進んで行く中、罰ゲームの内容が『告白』から『付き合う』に変わっていった時は、さすがに九十九も「困る!」と、訴えに行ったが土間の前に立つと足が震えた。
「何だよ。」そう言いながらニヤニヤと嘲るような表情を見た瞬間、あの日のあの事件がフラッシュバックした。
息が出来ない。
殴られてもいない頬に痛みを感じる。
震えが止まらない。
九十九は首を横に振り、そのまま何も言わず従った。そうすることしか出来なかった。
そんな始まり方をし、3ヶ月に1度のペースで九十九は罰ゲームの対象として恋人ができる。
(男は絶滅しろ。)
そう祈ることしかできない。
「まずは1位!安東!!」
「よっしゃー!!」
「続いて、2位、河野ー!!」
「げーっ!2位かよ。え?何ポイント差?」
(いや。知らねーよ。お前のポイントはどうでもいいんだよ。)
「3位は2人いて、金子と俺ー!」
「はあ?ズルしてねえ?」
「してねーよ!」
まだ呼ばれてない杉田が口を挟む。
「あ、5位、杉田ー!」
「よっしゃー!!マジセーフ!マジセーフ!」
(よっしゃー!マジセーフ!!)
同じ気持ちになり、同じセリフを心で叫ぶ。
これまでした罰ゲームの中で九十九は杉田との1カ月が1番辛かった。
彼じゃなければ、あとはどれも一緒。
そう思うほどだ。
「つーことで、最下位は〜」
少し、教室がシンとなる。土間の声が響いた。
「山下 勇也!」
「はい!」
………………………。
教室がさらにシンと静まる。
起こった事象を理解するまでにゆうに10秒以上かかった。
「「はあ!?」」
窓ガラスがクラスほぼ全員の声量でビリっと軋んだ。
読んでくださってありがとうございます。




