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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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ごめんなさい。からの被害者数を計算しよう!


九十九は家を出て、住宅街のゲートに向かった。

そこには先日同様、彼が爽やかに立って…


…いない。


(あれ、もしかして遅刻?………あ、先日の喧嘩?に怒って来なかった…とか?)


いや、山下に限ってそんなことはないだろう、と、少しゲートに近づくと「ブツブツ」と何かを言っている声とガリガリと何かを削る音がする。


見ると、山下がゲート端に座り込み、ブツブツと何かを呟きながら、枝の様なもので固そうな地面をガリガリ掘っている。


(ん?…山下くん……なのかな?)


昔、小学生の頃、訳もなく地面を掘っている男子がいた。まさか、それをしているのが本当に九十九が憧憬する山下なのか。

いや。違っていてくれ、と少し思う。


少し近づき確認するも、あのイケメンは山下で間違いない。何を言っているんだろうと、少し耳を寄せると「…とにかく謝って…」「…嫌われてたら…」と断片的な言葉が聞こえてくる。


(…えーっと。うーんと。要はシミュレーションでもしてんのかな。……シミュレーションの仕方が小学生のアレだけど。)


こんな山下の姿を見て笑わずにいれる人がいるのだろうか。九十九は堪えきれず「フッ」と笑ってしまった。


その声にハッと反応し山下が振り向く、九十九と目が合うと、猫が驚いて飛び跳ねるような勢いで山下が立ち上がる。


「わぁ!つ、つ、九十九!いつから!」


山下の顔が真っ赤になっていく。


「あ、ごめんっ……あ、違う!おはよう!」


随分、動転しているようだ。九十九を直視できないのか瞳が大きく右、左と動いている。


九十九は一呼吸して、ゆっくり頭を下げた。

今までにないくらい深々と。


(先日はごめんなさい。ただの八つ当たりで、山下くんは何も悪くありません。ごめんなさい。)


そういう気持ちをいっぱい込めて長く、深い礼をした。そして顔を上げるとキョトンとした山下の顔がみえた。


「え、あ、おはよう。」


九十九が顔を上げた瞬間、サラリと艶やかな髪が揺れ、髪に塗ったオイルがフワリと香る。ビックリした山下が九十九を凝視すると、いつもはしていない色付きのリップが目に入る。


「………って、え!!九十九どうしたの?」


(いや。お前がどうした。)


なぜ、山下は顔をさらに赤くさせて驚いているのか不明だ。

九十九はハッと時間を気にした。


(あ、モタモタしてると遅刻しちゃう。)


兎に角、学校へ向かおう。と歩き出す。

突然 九十九が歩き出した為、山下は慌てて追いかける。


(あれだなぁ。やっぱり礼だけでは謝罪としての意味が伝わらないか。…朝の挨拶と間違えられたし。やっぱり言葉にしないとダメだよね。)


九十九は歩きながら、謝罪の仕方を巡らせていた。そんな九十九をソワソワと山下が見る。


「……あの。九十九。……先日は……」


山下が先日のことを謝ろうとしていることに気づき、九十九は彼の口元に手の平を突き出し、それを止める。


(いや。謝るのはコッチですから。今、謝罪文考えてるから、少し黙ってて。)


こっちは色々と勇気がいるんだから!大体、悪くないのに謝るってどうなのよ!と素直にすぐ謝れない自分のことを棚にあげ、八つ当たり気味に歩き出し謝罪文を考える。その為、いまだに怒っている上に謝罪もお断り、というか話し掛けるなというジェスチャーだと勘違いした山下の絶望的な顔には気付かなかった。



学校の校門を通ったくらいから、九十九は決心を固める。数度、深呼吸をして、足を止める。

突然、止まった九十九に驚き山下も止まる。

スッと九十九が顔を上げ、山下の顔を真正面から見上げる。


「……っ」


山下はビクリと肩を揺らし、目線を左右へと揺らす。


(……なんでこの人、こんな絶望的な顔してんの?)


先程までの短い時間の中で山下に何があったのだろう。いや、今はそんなことを気にしている時ではない。と思い直し九十九は口を開く。


「……山下くん。」


山下が驚きに目を見開き、九十九の顔を見る。

こんなハッキリとした口調は、先日の「いただきます。」以外、家族以外では話したことがない。


「金曜日はごめんなさい。少し、機嫌が悪くて八つ当たりをしてしまいました。山下くんが謝ることは何もないです。本当にごめんなさい。」


そう言うと、九十九はゆっくりと頭を下げ、先程と同じように長く深く、誠意を込めた一礼をする。

凛とした女性のように。そう見えたらいいなという気持ちで。


そして、ゆっくり顔を上げると、山下は口を半開きにしたまま固まっていた。

しかし、次第に頬が赤くなっていく。


(…あ、この顔は……)


そんな時、周囲から「ぎゃー!!」と悲鳴が響く。九十九は驚き周囲を確認すると、山下の顔を見た女子が真っ赤になり叫んでいた。


「ヤバイ!ヤバイ!勇也の顔が!」

「まじエロい!」

「何あれもうダメ!」


どうやら腰にきたようで、立てなくなる女子が続出している。男子も唖然とし顔を赤くして固まっている。


なるほど、やっぱり18禁だったのか。モザイクをかけて正解だったと、九十九は適切な判断をした自分を褒めた。

そうして、自分のするべきことは終わったとばかりに固まっている人達(山下含む)を無視し、教室へと歩き出した。


ハッと我に返った山下が追いかける。

しかし、山下の18禁顔は戻ることはなく、靴を履き変える間も、廊下を進む間も、教室に着いてからも、続々と被害者を増やしていく。


学校中が騒然となり、教師が慌ただしく収拾しようとするが元凶が治らない為、仕方がない。


「山下!もうやめてくれ。」


と、数人の教師に詰め寄られ「え?何が?」と山下がキョトンとした顔になったことで事件は終わりをつげた。


しかし、火照ってしまった生徒の脳みそは、その日 稼働することなく、授業内容を理解できていたのは元凶である九十九と山下のみという状況だった。



読んでいただきありがとうございます。


山下くん。当初は学校一モテる男の子という設定だったのに超人的イケメンキャラになってしまった。

まぁいいか。キャラがどんどん一人歩きしていくので、おかしいとこ等あれば教えてください。

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