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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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2回目のデート。〜対策と教訓〜


プラネタリウムから出た九十九と山下は電車に乗って家の最寄り駅まで戻る。


山下から手を引っ張られ足を動かしたが、いつもとは違う、以前通ったことのある道に行こうとしているのに気がついた。


「山下くん。うちに行かないの?」

「え、俺のアパートで買ったコップ使うって言ったじゃん。それに九十九をすぐに帰すなんてそんなもったいないこと絶対しない。」


(………これは貞操と生命の危機では。)


プラネタリウムで彼に散々ショック死させられそうになった九十九は山下の発言に体を硬くする。

あんなに色気ムンムンの山下に迫られて次はちゃんと拒否できるのか。しかも、次は公共の場ではなく彼のアパートだ。


(無理だと思う!)


細かく首を振って拒否を試みてみるが、山下はニッコリとした満面の笑顔でそんな九十九の抵抗を無視して「早く行こう。」と手を引っ張ってくる。

九十九は情けない顔になるも、ここで逃げられないのなら、と山下に向き直った。


「………山下くんのアパートでキスはしない…。」

「え!!絶対やだ!ってかそんなの絶対ムリ!」

「……じゃーやっぱりうちに帰ろう。ほら夕食の準備しなきゃー。山下くんのために頑張って作るから。」

「いや、絶対ダメ!俺が耐えられない。少しだけ、本当に少しの時間でいいから。ね?」

「……キスしないなら…。」

「う、……やだ。じゃー5回だけ。」

「ご!………キ、キスはしないって!」

「やだ。じゃー4回!お願い。……っ!っ!……じゃー3回!!それならいい?」


そんな悲痛な表情をしてもダメだ。と九十九がいつもの道の方へ体を向けて歩こうとすると、山下からガシッと捕まえられた。


「じゃー2回!!2回でいいから!お願いします!絶対ムリ!帰すとかムリ!キスできないとかムリ!絶対ムリ!」


駅前で必死に訴える山下を周りの人がチラチラと見てくる。

九十九はそんな周りの目線にポキリと折れてしまった。


「……1回しかしません。」

「…わかった!1回!」

「夕食の準備あるし長くいられないから30分だけね。」

「うん!」


パッと表情を輝かせた山下から手をグイグイ引っ張られて歩いていき、アパートに行くと思ったら彼のバイト先へ連れていかれた。

自分の家かのようにバイト先で、買ってきたコップを洗い、プラネタリウムで売っていたハーブティをバイト先の備品のポットに入れ、そのまま裏口から出て山下の部屋に行く。


その間、オサムやその他の従業員に「本当にすみません!」と九十九は頭を下げまくった。

呆れた顔をしながらもオサムから「大丈夫だから。あいつが迷惑かけるな。」と逆に慰められた。ホロリと涙が出そうだ。



「わぁ!見て九十九!すごくキレイな色!」


プラネタリウムで買ってきたお茶はバタフライピーという青いハーブティーだ。花が浮いていて、金粉がキラキラと輝いている。とてもキレイでまるで夜の湖に星が映っているような幻想的なお茶だ。

お揃いのグラスコップに注がれている。

飲み物を入れると花の模様が浮かび上がるコップなので、さらにお茶を美しく見せていた。


2人のグラスの花模様は違っている。最初に山下へプレゼントしたものにはハナミズキやミモザなどの春をイメージさせる花で、男の人へのプレゼントだからとあまり華やか過ぎない模様がいいと思いそれを選んだ。


山下が九十九に選んだのは百合の模様だ。

山下のコップと違い、大きめの百合の模様が華やかに描かれている。

色んな種類のコップの模様を見ていたが、それを見た瞬間「これにする。」と彼は即決していた。


彼は花に特に詳しいわけではない。九十九のあげたコップの模様を見て「これ何の花?」と聞いてきたし「花はチューリップかバラくらいしか見分けつかない」と言っていた。

なので、彼がなぜそれを即決したのか不思議だった。


九十九の中で百合は豪華で華やかなイメージだ。

どちらかというと可愛いというより美しいと表現したくなる。バラとはまた違う迫力があって、同級生の女の子に渡すには少しだけ気後れする花ではないかと思った。


(山下くんが私に選んでくれるなら、チューリップとかコスモスとかそんな感じかと思ったんだけど。)


「どうして百合の花の模様にしたの?」

「え?嫌だった?キライ?」

「ううん。とてもキレイ。でも不思議に思って。」

「…え?……九十九っぽいなって思っただけだけど?」


キョトンと首を傾げる山下に少しだけ驚き、すぐに頬が緩むのがわかる。


「ふふ、嬉しい。光栄です。ありがとう。」


彼が九十九のことを百合のようだと思ってくれていることについニヤニヤしてしまう。


(こんな豪華でキレイな花をイメージしてくれるなんて嬉しい。少しでも百合の花のようなステキな女性になるよう努力します。)


そう心から思った。


しかし、


「ちょ!ちょっと山下くん待って待って!」

「ん?何を?何を待つの?」

「ちょっとキス待って!」


ハーブティをニマニマと飲んでいると、山下から「やっばい可愛い!」と急に抱きしめられた。

あやうく買ったばかりのグラスを落として割るところだった。


そのままぎゅーと横向きに抱きしめられ、頭や顔にちゅ、ちゅ、とキスをされる。


(ちょっと!頭や顔のキスはキスに入らないんですか!?すごい数のキスをされてるんですが!)


そんなことを思いつつも山下の色気を帯びた視線や雰囲気に圧倒され、九十九は真っ赤になりながらもそれを受け入れるしかなかった。


そして唇にキスを落とされる。

最初のキスとは違い、少しだけ強引で押し付けるようなキスだ。

つい、恥ずかしさと息苦しいのとで山下を押すように体を後ろへ引くと、そのままゆっくりと上半身を床に倒された。


「は、はぁ……九十九。」


彼が唇を離さないまま九十九の唇の上で呟く。

その声にゾクゾクと体が震えた。


「ん、九十九、好きだよ。」


角度を変えながら何度も唇を吸われ、ちゅ、ちゅ、とリップ音が聞こえる。


「九十九、ちゃんと息して。ほら。」


山下の指が九十九の唇をわり、少し強引に口を開けさせられる。


「あ、は、はぁ…!」

「そう、上手。……九十九、可愛い、好き。」


あまりに激しく長いキスに九十九は息を忘れていたようで、その時ようやく呼吸ができた。


キスはその後もずっと続き、何度も窒息しそうになるのを彼の言葉で息をする。

九十九はパニックになっており、山下の言葉につい従順にしたがうしかできなかった。



ピリリリリリリリ!



突然のアラーム音に九十九と山下がビクリと体を揺らす。パニックに陥っていた九十九はその音を聞いてハッと我にかえり、九十九をまたがるようにしていた山下を押しのけ、そこから脱出する。


「わ!九十九、何!?」

「もう時間だから。30分経ったから。」

「アラームをかけてたの!?」

「かけなきゃいつまでも終わらないと思ったから。」

「……………。」


少しだけ九十九を責めるような口調だったが九十九の言葉に反論できず、山下は口を閉ざした。


帰り支度をサクサクと進める九十九だったが、心中は、動悸を戻すのに必死だった。


(やっばい!本当にやっばい!アラームしてなかったら本当に死んでた!それか気絶してた!アラームがなかったら絶対、気絶するまで終わってなかった!!)


このままではいけない。彼の色気に対する対策を考えなくてはと、ここ1番の緊急な課題としてソレをあげるのだった。


(あと、あれだ。キスの約束事は回数ではなく時間にしよう。)


今日1番の教訓だった。




その後は九十九の家に帰り、恵美子とキッチンに並び夕飯を作った。

山下はそれをニタニタデレデレとキッチンカウンターに頬づえをつきながら眺めており、時折「可愛い」「好き」と呟いていた。

さすがに両親の前で恥ずかしいので「やめて!」と彼を睨むとキョトンとした顔をされた。

どうやら無意識に呟いていたようで、九十九はガクリと肩を落とした。

両親も呆れながらも苦笑いして「まぁ大切に思われててよかったわね。」とだけ言って後はなかったかのように流してくれた。


夕飯はグラタンとささみのチーズフライだ。

彼はとても幸せそうにニコニコと食べていた。何度も九十九の方を向いて「おいしい」「幸せ」と言ってくれた。

とても嬉しいが両親の前でいたたまれない気持ちになった。



2回目のデートは幸せながらもとても疲れる1日だった。



読んでいただきありがとうございます。


前話で次話のことを書きましたが、まだ2回目のデートが途中だったのをうっかり忘れてました。

すみません。

2人のイチャイチャは大切です。笑

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