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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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2回目のデート。〜九十九の好き〜



プラネタリウムに着いた。

広い空間と天井全面の巨大スクリーンに九十九は「わぁ!」と声を出した。


山下と九十九はペアシートを予約していたがそれはシートと言うより少し小さめのベッドのようだ。


「うわ!マジやばい!」


先ほどまで少しだけ拗ねていた山下もそのペアシートを見てテンションが上がった。


2人で並んで座り、背中をシートにあずけると浅い傾斜になっていて、とても広い範囲の天井が見える。

照明がオシャレに置かれている薄暗い空間につい九十九は本音が出た。


「あ、これダメかも。寝ちゃうかも!」

「あは。言うと思った!」


山下の満面の笑みがすぐそばで見えた。


先ほどのやり取りのせいか山下の笑顔にドキリとする。

近いな、恥ずかしいなと思って少しだけ緊張しているのに、山下から腰を引っ張られ、さらにグッと近くに体を寄せられる。


「近いよ。」

「近くがいい。」

「他のお客さんいるから。」

「関係ない。」


上映時間が迫ってきているので他のお客さんが続々と入ってくるのが見えた。

ペアシートは4、5mほど離れた場所に並んで置いているので、そこまで近いわけではないが、カップルや親子が楽しそうにシートに座っているのが見えるので、自分達の姿も同じように見えてると思うと恥ずかしくなる。


山下が九十九の頬に手をあて、横を向くように促してきたのでその通りにすると、おでこにキスが落ちてきた。


「山下くん。ダメ。」

「ん、じゃーぎゅうだけ。」


山下にぎゅーと抱きしめられたまま、上映が始まるまでしばらく2人で小さな声で話しクスクスと笑い合っていた。


プラネタリウムの上映が始まると彼から腕を解かれ、手を繋いで上を見上げた。

空間が暗くなり想像よりずっとリアルな星空が天井に映し出される。


「わぁ!すごいキレイ!」


キレイな音楽とキレイな風景に声を出してしまうほど感動してしまった。

隣からクスクスと彼の笑い声がする。


色んな国の風景と星空がナレーションとともに映し出されるていく。

しかし星座の話になり、星空の映像がシンプルなものに変わった瞬間、嫌なことを思い出してしまい、九十九は体を固くした。


あの事件で『ヤマト』に胸ぐらを掴まれ、仰け反られたとき、『ヤマト』と後ろにこのような星空が輝いていた。


その映像が浮かんだ瞬間に九十九は体をブルリと震わせる。少しだけここが夜の野外だと錯覚しそうになる。


「……九十九?…どうしたの?…怖い?」


手を繋いで体を寄せていたので先ほどとは違う九十九の反応に山下が気づいて小さな声で聞いてきた。


「…………少し。」

「おいで。」


繋いでいた手を離し、彼が腕を背中に回してきて、ぎゅっと抱きしめてきた。

九十九は彼の体温を感じてホッと息をはく。


「大丈夫だよ。まだお昼過ぎだし夜じゃないよ。俺も側にいるから。ね、大丈夫。」

「…………うん。ありがとう。」


星空から目をそらし、山下の胸元に顔をうずめると彼の心音が聞こえた。

背中に回された彼の腕が九十九を落ち着かせようと何度も優しく撫でてきた。


(本当に私は大切にされてる。)


本当はデートをするのに相手の家族と計画を立てなきゃいけない彼女など面倒だろう。プラネタリウムを急に怖がって慰めなくてはならない彼女など迷惑だろう。


それなのに、こんな風に宝物のように大切に丁寧に接してくれる彼に涙が出そうだ。


九十九は山下の胸元から顔を上げると、心配そうにこちらを見ている彼と目が合った。


「…………大好き。」

「………え?」

「………山下くんがすごく好き。」

「……………。」


最初の言葉で彼が驚き、2回目の言葉で彼が固まった。そして次第に顔が赤くなってくる。この暗い会場でもわかるほど真っ赤だ。

九十九はその顔を見てクスリと笑った。


ずっと山下に『好き』が言えなかった。

彼から告白されたとき『俺の女神』と言われた瞬間から、その言葉が引っかかり、今までずっと言えずにいた。


さっきも何度も言われた言葉。

『俺の女神』

彼の理想の女の子に使う言葉のはずだ。

でも九十九は「そんな彼の理想など私にひとつも当てはまらない。」とその言葉を拒否していた。


でも、こんな風に大切にされ、どこまでも慈しまれているのにその言葉を拒否するのは不自然な気がした。


(彼からの言葉を、ひねった考えをせず素直に受け取ろう。彼から『女神』と思われるなんて幸せなことだもん。)


そんな風に思うことができた。

だからやっと言うことができた。

彼への心からの気持ち。



真っ赤になった彼はハクハクと口を動かしていたがしばらくして「ちょ、待って、やばい、待って、え?夢?」と顔を隠しながら混乱し始めた。


「ふふ、……山下くん好きだよ。」

「ちょ、待って、やめて、心臓が…。…………や、嘘。もっと言って、ください。」

「あはは、……うん。…大好き。」

「…っ!…っお、俺も九十九が好き。」

「うん。ありがとう。あのね、いつも大切にしてくれてありがとう。勇気をくれてありがとう。好きって言ってくれてありがとう。私を山下くんの彼女にしてくれてありがとう。大好き。山下くんがすごく好きです。」


彼の顔がトロリと溶けたような表情になった。

背中にあった山下の腕は腰に回され、グイッとさらに引き寄せられ、片手は九十九の頬にソッと触れた。


「九十九、好き。」

「ん。」


彼の顔が近いて来たので、九十九は目を閉じると、おでこにちゅ、とキスをされた。

彼の唇が肌を這うように降りてくる。

眉毛に、瞳に、鼻に、頬に、唇の横に、そして、


ふ、と彼の息が九十九の唇にかかり、そのままピタリとキスが止まった。


九十九は不思議に思って目を開けると、彼の目と目があった。すごく近い。ただ暗い会場内なので彼の瞳の色ががちゃんと見えないことが残念だった。


彼の瞳は九十九を伺っているような、何かを訴えているようなそんな風に見えたので、九十九は瞳を閉じることで彼に答えた。


すると、彼の柔らかい唇が九十九の唇に触れた。

触れるだけの優しいキス。

その触れられた唇だけで彼からの気持ちが伝わってくるようなそんなキスだ。


少ししてそれが離れたので九十九は目を開けると、さっきより更にトロリとした山下の顔が見えた。


「……は、……はぁ……」


彼の色気を帯びたため息が耳に届いた瞬間、九十九も今までの自分の行動を自覚してボボッと体が熱くなる。


「………九十九、好きだよ。」

「……っ!」


山下からちゅ、ちゅ、と唇にキスをされる。

角度を変えながら、何度も何度も。


「っ!ちょ…!…ん、山下く、…ん、待っ…っ」

「ん、九十九、好き、」


山下の色気全開のキス攻撃に九十九の心臓がフルマックスでなっている。


「も、ダメ。…ん、ダメだってば!…ちょ!ん、」


九十九は必死で山下からのキスを止めようと、手で唇を隠すも逆に指同士を絡まれ、拘束される。

顔をそむけるも唇以外をちゅ、ちゅ、とキスされ「もうやめて。」と彼に向かって訴えたときに再度、唇のキスに戻された。


(ヤバイ、心臓がヤバイ!死ぬから!それ以上キスされると発作おこして死ぬから!!)


最終的に九十九が困惑しすぎてうっすらと瞳に幕を張ったことに気づいた山下が我に返ったことで、彼のキスから解放された。


プラネタリウムの上映はまだ終わっていなかったので、続きをちゃんと見ようと山下に話し、スクリーンを見上げる。

その間に少しでも落ち着こうと九十九は考えた。


しかし、隣で「九十九、好き、可愛い」と呟かれ続け、手や頭や頬を撫でられ、顔を擦り寄せられ続けたので、全くプラネタリウムに集中出来ず、上映終了後にはげっそりとした表情で会場を出た。


(人の人生で打つ心拍数は決まっていて、15億回くらいで一生が終わるってなんかの本で読んだけど、この分だと誰よりも早く死ぬかもしれない…。)


そんなことを思っているなかでも彼は九十九の顔を覗き込んで「可愛い。好き。九十九、もう一回好きって言って。」と、しつこく九十九にイチャイチャベタベタしてくる。


(……く!…コイツ、私を殺しにかかってるな!)


九十九がそう思っても仕方ないないことだ。





読んでいただきありがとうございます!


イェーイ!!100話記念!!

山下くんもおめでとう!やっとキスできたね!

100話がハッピーな回になって嬉しいです。


そういえば、この物語の中ではまだ2ヶ月ちょっとしか経ってませんが(しかも1ヶ月は1行で簡単にぶっ飛ばした)それで100話ってどんだけのんびりしてんだって話ですね。


さて、これから九十九と山下は最後の試練が待ってますが、その前にのんびり他のキャラの話とか書いてから最終章に突入したいと思います。


もう少しお付き合い下さい。

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