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一話

新作始めました!ぶっちゃけ投稿頻度は遅いです、いせきし優先させたいんで。

「私……お兄ちゃんのことが好きなの!」

「亜美……! 俺も、お前のことが好きだ!」


 そうして俺達は、互いの唇を重ねた。

 亜美のことが好きだ。

 血の繋がった兄妹だとしても、この気持ちに嘘偽りはない。


 ――――――――――――――――――――――――――――


「――ふっ」

「お。羽上またラノベ読んでたのか。今回も思いっきり鼻で笑ったけどそれどうよ?」


 本の世界から俺を呼び戻したのは同じクラスの稲森颯太(いなもり そうた)

 高校で新しくできた友達だ。

 羽上琉生(はがみ るい)とは俺の名前だ。高校一年、十五歳、趣味は読書。

 『クラスで目立ちはしないけど、友達は一定数以上いる』グループに所属している。ちなみに稲森もその一人だ。

 俺は視線を本から稲森の顔に移し、手に持ったライトノベルの表紙を稲森に見せつける。


「これはダメだな。文章が幼稚だし、キャラの動機が不明瞭。内容に深みが無いし、ありきたりな『小説家の兄と万能妹』の話だったよ。アラゾンレビューに星を付けるなら2だな。ちなみにこのうちの一個はイラストレーターさんのだ。妹のデザインが好みだった」

「だろうな。お前がラノベを読んで鼻で笑うのはたいてい駄作だったときだけだもんな」

「……なんでそんな詳しいんだ?」

「だってお前一ヶ月に何冊本読んでるよ? 毎回本が変わってるから、お前の癖を見抜くのは簡単だよ」


 稲森は俺の真似をするように鼻で笑った。

 まあ、確かに本を読むペースは速いほうだと思う。

 俺は月に十冊以上本を買っている。

 ジャンルは問わず。異世界無双系、異能バトル、学園モノ、ラブコメ。

 通っている高校から近い場所に本屋があるので、一週間に一度は出向き、何冊か立ち読みしてはレジに持って行くという行為をもうここ何ヶ月かはずっと行っている。

 それにしても、本屋の新刊コーナーを見る度にいつも思うことがある。


「最近、異世界系……なろう系が増えてるんだよな」

「あー、確かに多いよな。アニメなんかも最近多いよな」

「ああ。異世界無双はもう飽きた。なんか新しいジャンルないんかねえ」


 手に持っていた本を机の中に入れ、教室に備え付けてある掛け時計を確認する。

 いつのまにか放課後になっており、周りに居たクラスメイトがいなくなっている。

 どうやら帰りのSHRでも本を読みふけっていたせいで、稲森以外のクラスメイトは帰ってしまったようだ。

 俺は机に入れた本をもう一度取り出し、稲森に手渡す。

 

「やる。俺にとっては面白くなかったが、お前なら面白いと思うかもな」

「スパシーバ。んじゃ帰ろうぜ」


 椅子の下に入れていたリュックを肩に掛け、本を鞄に入れている稲森を横目に教室を出る。

 少しゆっくり歩いていた俺の隣に稲森が駆けてきた。

 稲森は囲碁将棋部で、これから部活なのだ。

 だから別に待ってやらなくてもよかったんだが、それだと少し冷たいかなと思い、遅めに歩いていたのだ。

 

「あー彼女欲しいー!」

「なんだいきなり。欲求不満か。自分で処理してろ」

「性欲が溜まってるわけじゃねえよ! 溜まってるけどそうじゃなくてだな、こうなんか、彼女がいるっていう人生の勝ち組に入るためのステータスが欲しいんだよ」


 稲森はグラウンド側の窓に張り付くように校庭を見下ろした。

 俺も一歩下がって外の様子をのぞき見る。

 校庭ではサッカー部と野球部がグラウンドを半分ずつに分けて使用していた。

 暑い日差しが差す中で、汗を流して何かに熱中する姿は、俺はいつも美しいと思っている。

 仲間と互いに高め合ったり、悔し涙を流したり、笑い合ったり。

 そんなことが、俺には酷く輝いて見えた。

 残念ながら、稲森はそういう意図で外を見ているわけじゃないらしい。

 血走った目で外の様子を隅々まで眺めた稲森は俺の手を引き、ある一角を指し示した。


「ほらあれ! カップルが休憩をしてる振りしていちゃついてやがる! おのれぇ、成敗してくれる!」

「いつの時代の人間だお前は。ほら、さっさと部活行け非リア」

「くそぅ。いつか絶対あんなことしてやるぅ!」


 稲森は校舎に怨嗟の声を撒き散らしながら部室に走って行った。

 俺は話し相手もいなくなったので玄関に足早に向かい、校舎から出る。

 稲森はカップルを酷く羨んでいた。

 そう。だから俺はあいつに隠している。

 俺には――


「――あ、琉生。遅かったね」

「ごめん佳奈。ボーッとしてたらHR終わってた」

「もう、琉生ったらいつもそんなのなんだから。もう慣れましたよーだ」


 彼女がいることを。

 校舎の門に背中を預けて待っていた少女の名は藤森佳奈(ふじもり かな)

 中学二年から交際している、俺の彼女だ。

 

 そう。俺はどこにでもいる男子高校生ではあるが、異世界主人公の生前の様な非リアではない。

 ちゃんと可愛い彼女がいるのだ。


 佳奈はプイッと顔を背けるも、俺の顔を見てフスッと吹き出した。


「もう、そんな顔しなくても、怒ってないよ」

「ほんとに?」

「もちろん。ただし、条件として、その、……今日は手を繋いで帰ること……」

「……恥ずかしいなら無理しなくても」

「い、いいから! はい、握って!」

 

 佳奈は頬を朱に照らしながら手を差し出してきた。

 普段はおとなしく控えめな彼女がこんな風に甘えてきてくれるのは可愛いと思う。

 だから悪戯で、普通に手を繋ぐのではなく、恋人つなぎをしてみた。

 佳奈は驚いた様な顔で指を硬直させた。それでも、それは一瞬のことで、すぐに握り返してくれた。


「もう……。たまにこういうことするのやめてよね。ビックリするから」

「止めた方が良いか?」

「それはダメ。それとこれとは話が別ですぅ」


 少し拗ねたように答える佳奈の表情は、口調とは裏腹に、口元をホニャッと緩ませていた。

 もう二年も付き合っているのに、未だこういう初々しい反応されるのは清純な男子高校生としては来るモノがある。

 思い上がっていると思われるかもしれないが、愛されているなぁと思うと俺もにやけてしまう。

 



「――それでね、小泉先生ったらね、私が追試食らったこと皆の前で言っちゃうんだよ? 酷くない?」

「うわそれはうざい。小泉めっちゃ嫌われてるから今更な気もするが、佳奈は化学苦手だもんな」

「だって、構成式? とかよくわかんないし……琉生は化学得意だったよね? 追試明後日だから教えてよ」

「おっけい。じゃあ明日佳奈ん家行くわ」


 遊歩道を歩く俺達は、他愛ない会話で笑い合っていた。

 時折老人や子連れの親が微笑ましそうに見てきたり、稲森のような非リアが死んだような目で見てきたりしていたが、恥ずかしがってるのは佳奈だけなのでとくに気にすることは無いだろう。

 

 お互いの家が近くなってきたとき、佳奈が不意に足を止めた。


「佳奈?」

「あの子、お母さんいないのかな」


 佳奈の視線の先には、小さな男の子がいた。

 手には何も持っておらず、フラフラと危なげに歩いている。

 迷子なのだろうか。時折すすり泣く声が聞こえる。

 

「ちょっと声かけてくるね」


 佳奈はそう言って手を放し、男の子に小走りで近づいていった。

 俺も男の子の元に向かおうとしたとき、どこかから何かが壊れたような音がした。

 音のした方に目を向けると、工事中の家の鉄骨が、崩れようとしていた。

 

「ぇ、ちょっ――⁉」


 その家は俺からだいぶ離れた所にある。

 だから、万が一にも俺に被害が及ぶことは無い。

 ……だが、その家は、佳奈と子供のちょうどすぐ傍に位置していた。

 

 そこからは、酷く世界が遅かった。

 佳奈は鉄骨が自分たちに降り注いでいるのに気づき、子供を強く、それでいて優しく突き飛ばした。

 子供を突き飛ばした瞬間、小さく「ごめんね……」と言ったのが聞き取れた。

 ああ、優しい佳奈らしいな。と思うと同時に、俺は佳奈の元に駆けだしていた。

 だが、間に合わない。

 それどころか佳奈だけでは無く、俺も鉄骨に潰されてしまうだろう。

 だが、駆けだした足を止めることは出来ない。

 大切な人を守りたいという思いを捨てることは出来ない。 

 俺は佳奈に手を伸ばした。

 佳奈も、近づいてくる俺に気づき、手を伸ばした。


 手を伸ばし、


 手を伸ばし、


 手を伸ばす。


 僅かに指先が触れ、




 体が酷く、冷たくなった。





 △▼△▼△▼





 ――何も見えない。


 ――体が動かせない。


 ――何も感じない。


 ――それでも何故か、声が聞こえた。


『……君は……長く……ありません。巻き込まれ……の子は即死。――非常に残念で……』


 ――恐らく医者の声だろう。


 ――会話の流れによると、どうやら俺は死ぬらしい。


 ――死。死か。


 ――あまり悲しく……。






 佳奈は?

 佳奈はどうなった?

 死んだ?

 死んだのか?

 違う。

 嘘だ。

 そんなの、

 嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

 嘘だ。

 君がいなきゃ、

 俺は。





 死ぬしかない。





 △▼△▼△▼





「――エミリー。エミリー? あの子ったら、どこへ行ったのかしらねぇ。私じゃ見つけられそうにもないわ」

「……ふふ」

「……と見せかけて、見つけたわよエミリー!」

「お母様ー!」


 お母様は、机の裏に隠れていた私をイタズラッ子の様な顔で抱っこしてきたのです。

 私は面白くってお母様に思いっきりハグをしてしまいました。


「かくれんぼは終わりよ、エミリー。さ、今日は貴女の八歳の誕生日なんだから、お父様の所にも行くわよ」

「わかりました、お母様!」

「ふふ、貴女は可愛いわね。私の自慢の娘よ」


 そういうとお母様は私のおでこにキスをしてくれました。

 私もお母様のほっぺにキスをし、二人で手を繋いでお父様のいる書庫に向かいます。


 私の名前はエミリー・ブランド。

 リア王国の領主の一家、公爵家ブランドの娘です。

 兄弟はいませんが、今お母様のお腹の中には一人子供がいるそうです。

 私は近いうちにお姉ちゃんになるそうです。

 面白い父、優しい母、遊んでくれる使用人。

 私は今とても幸せです。

 きっと、この先も幸せがいっぱいで……







 ――?

 私?

 私。

 ワタシ。

 わたし。

 ――()

 俺はエミリー・ブランド――

 

 違う。俺は()()()()

 俺は、


「……女になってる」

「? なにか言った? エミリー」

「い、いえ。何でもありません、お母様」


 不思議そうな母に答える。

 異世界転生?

 いや、これはただの異世界転生じゃない。

 ――これは。


「TS転生かよ……」


 誰にも聞こえないよう、俺は小さく呟いた。


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