5話
今回は短いです
教会を出発したが図書館は近くにあるらしくすぐに到着した。
そこで思いがけない事態になってしまう。
「モルド殿、私は所用があるためここで失礼する。アリス、夕刻頃に迎えに来るからそれまで案内任せたぞ。」
そう言い、キースは馬車へ乗り込み行ってしまった。
「それではモルド様行きましょう。」
「わかりました。」
そして図書館へと入っていった。
受付がモルドの恰好を見て怪しむのだが、特に何かを言われることはなかった。
ここは一般に開放されているところなので何か問題を起こしたわけではないため、怪しいという理由だけでは咎められることはないということだ。。
図書館は円形の建物であるため、中もそれに合わせて配置してあった。
中央には机が配置され、その周りをぐるりと本棚が何列も並んでいた。
多くのジャンル置かれているらしく、様々な年代の人が訪れていた。
「モルド様はどんな本をお探しなのですか?」
「そうですね.....まずこの国の歴史や勇者のことが知りたいです。」
「それでしたらこっちの棚にあります。」
そう案内され着いた棚にある本の題名を目で追う。
『グラン王国建国記』
『歴史早見表~グラン王国編~』
『ダマトが語るグラン王国の歴史』
「この辺から調べていくか。」
そう思い何冊か手に取り調べ始める。
調べていって分かったことがある。
このグラン王国は建国1000年の国であり、現在の王は32代目らしい。
戦争の無い平和な国であったが、突如それは終わりを告げる。
300年前に魔王が出現したためだ。
魔物で構成された魔王軍はどんどん進行領域を広げ、もはや人類は滅亡の危機であった。
そこである希望が舞い降りた。
勇者の誕生である。
勇者はその圧倒的な力で魔王軍を退け、支配されていた地域をどんどん開放していった。
そして遂に魔王と対峙し、厳しい戦いの末、勇者も深手を負ったが魔王を討伐することができたのであった。
再び平和が訪れたのだが、勇者はこの時に負った傷が原因で数年後に命を落としてしまったのだ。
元の世界に戻る手立てはなく振り出しに戻ってしまった。
「(調べても特に進展はなし...可能性はあったがこうも欲しい情報が手に入らないとは誤算だったな。せめて勇者が生きていれば。)」
「あの、モルド様?難しい顔をしていますが何か記憶の手がかりは見つかりましたか?」
「これといったものはまだ何も。案内してもらったのにすみません。」
「謝らないでくだい!モルド様は何も悪くないですし、まだ調べてない本はあります。きっとここからですよ。」
「そうですね。」
自分より若い子に勇気づけられ大人としては少し情けないが、この言葉で前向きになれ情報収集を再開した。
**********
日が赤くなり始めたが帰還の方法はわからなかった。
というよりもそもそも勇者が広めたものは多いのだが、勇者本人の情報は全くと言ってもいいほどなかった。
そのため残るは帝国にいるという勇者に期待するしかなかった。
一日かけ調べたがあまり情報を見つけることが出来なかったため思わずため息をはいてしまった、
「きっと大丈夫ですよ!!!」
「アリスさん?」
「まだ記憶が戻らないと決まったわけではありませんし、私もこれから手伝いますから!!」
驚いた。溜息を吐いたところを見られ、設定とはいえ記憶が戻らなかったことで落ち込んでいると思い励ましてくれたのだ。
偽りのことを話した罪悪感がすごい。
そこである質問した
「アリスさん、一つ質問いいですか?」
「質問ですか?大丈夫ですけど....」
突然質問を問われアリスは戸惑っていた。
自分の口下手さに苦笑しながら続ける。
「もしもですよ、私がここではない世界から来たと言ったら信じられますか?」
「.......知らない人だったら信じられないかもしれません。ですがモルド様は意味もなく嘘をつくような人ではないと思います。」
そうモルドを目をまっすぐ見つめはっきりとした口調で答えた。
たった一日程度行動を共にしただけで何故ここまで信用できるのかモルドにはわからなかった。
「なぜそこまで言い切れるのですか?」
「モルド様は成り行きとはいえ私たちの命救ってくれました。そんな人が人を好き好んで騙すわけありませよ。なので私はモルド様を信じます。」
微笑みながらそう断言した。
人を信じることは誰でもできるが、この子のように一片の疑いもなく信じることが出来る人には今まで一度も見たことがない。
お人好しともいえるが、それがこの子の良さなんだろうとわかった。
そしてアリスに本当のことを話すことに決めた________
「モルド様が他の世界から来たことには驚きましたが、ですが記憶がなくなっていなくて本当によかったです。」
話した内容には驚いていたようだったが、それよりもモルドに何も問題がないことに安堵していた。
「モルド様はこれから帰る方法を探すのですか?」
「当分はそのようにするつもりですが、帝国にいる勇者にもいつか会いに行こうかと思っています。」
「それでは私もそのお手伝いを致しますわ。」
「いや、流石にそこまでお世話になるわけにはいけませんよ。」
そう話してたら後ろから声を掛けられる。
振り返ると用事を済ませたのかキースが立っていた。
「待たせたな。さあ帰ろう。」
「キースさん、話があるのですが少しいいですか?」
「構わんが、何のはなしだ?」
アリスに話した通りのことをキースに同じように話した。
「モルド殿は異世界人であったか。通りでその強さなのに噂の一つもないわけだ。もっと詳しく聞きたいが続きは帰宅してからでもよいか?」
「大丈夫です。」
そして帰宅し、夕食の席で詳しい話をした。
こちらの身の上の話はしたがゲームの概念がないため、そこら辺の話はかいつまんで話した。
「なるほどな。気づいたら草原に一人で立っていたと。にわかには信じられない話だが、地理や場所がわからないことや、その強さに辻褄が合う。してこれからはどうするのだ。」
「とりあえずはこの街を拠点にして情報を集めてみようと思っています。」
「なるほど。あぁそうだ、報酬として欲した家の候補が見つかったぞ。」
「何から何までありがとうございます。」
「別に構わない。我々を助けたその報酬だからな。」
再び感謝の言葉を言おうとしたが、これ以上は失礼にあたると思いは口に出さず、心の中で言った。
そして夕食がおわり、またお風呂に入らせてもらうことにした。
昨晩のような失敗に要注意し、入浴した。
ゆっくり浸かりながら今日起きたことを思い返してみる。
「にしても職業がゲームと違うのは予想外だったな。スキルや魔法が使えるかの検証もしないとな。」
考えを整理し、明日から行動を始めようと決めるのであった。