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俺の拳に勝てないものはない  作者: 流紋岩まん
2/5

2話

 砂の混じった風が吹き荒れ、生き物気配が感じられず、草木が一本も生えない荒野のフィールド。

 かつてここには栄えていた国があったのだが、死を振りまくと言われる混沌龍が住み着くようになってしまったその後という設定フィールドであった。

 ここには最難関クエストである混沌龍討伐専用フィールドであり、滅多に人が来ないことで有名だった。

 そこへ一人のプレイヤーが歩いていた。

「流石にソロで混沌龍討伐はきつかった…二度とソロではやらねえ。」

 そう愚痴をこぼしていたのはプレイヤーはモルドであった。

「賭けに見合う対価があったからよかったもの、それがなかったら一生やらねぇ。」

 モルドは一緒に[All Vertex]をやる仲間であるサンソンとある賭け事をしていた。

「モルドこの前追加された最高難易度のクエやったか~?」

「あれだろ?混沌龍討伐っていう」

「そうそれ。でトップランカーのモルド様はやったのか?」

「茶化すな。まあクエ自体はやってないな。他に欲しい素材があったからそっち優先してた。」

「それは丁度いい。」

 サンソンニヤリと笑い、モルドは嫌な予感がした。

(こういう時のこいつは碌なことを言わないからな)

「モルド賭けをしないか?」

「まぁ内容にもよるな。」

「賭けと言っても自分への挑戦みたいなもんだからそう身構えるなよ。」

「なんだそれは。とりあえず早く言えって。」

「お題は混沌龍討伐ソロクリア。」

「はぁ~~。馬鹿だろ」

「馬鹿はねえだろ、馬鹿は。」

 最高難易度のクエストというのはパーティー推奨のクエストであり、現在3つ公開されている。だが、世界に多くいるプレイヤーの中でもソロクリアは片手の手で数えるくらいしかいなかった。

「それでクリア報酬は何だよ?」

「ふっふっふ。聞いて驚くなよ。この古よりの指輪をやろう!!」

「はっ!?お前何で持ってんだよ!?10個限定の代物だぞ!!」

「何かこの前ガチャ乗りで引いたら当たった。」

「お前ふざけんなよ!!??俺の涙を返せ!!」

 古の指輪は10個限定の装備であり、装着者の能力を倍にするといった壊れ性能の装備品だった。当然モルドも引いたが爆死。この目にすることはあきらめていた代物だった。

「まじでそれくれるのか!?」

「ソロで行くっていうなら今からでもいいぞ。」

「お前とこのゲームやっててよかったわ。」

「で、どうすんだ?やるn」

「もちろんやるに決まってんだろ!!ってかいいのか俺にそのアイテム渡して。自分で使ったりしないのか?」

「まぁ俺はお前ほどガチでやってないし、これからIN率下がると思うから。」

「あーお前この前子供生まれたからな。」

「そういうこと。だから俺が使うよりもお前にやった方がいいと思ってな。それに知り合いに世界に誇れるゲーマーがいると自慢できそうだからな。」

「サンソンお前のことは決して忘れないよ。」

「勝手に俺のこと殺すな。指輪やらんぞ。」

「嘘です。すみませんでした。」

 その後もしばらく話し合い二人で笑いあっていた。



 そして今に至る。


「この指輪がなかったらきつかったかもな。」

 そういいながら自分に装備された派手な装飾はない銀色の指輪を眺める。

「サンソンにはいいもんもらったな。また今度礼を言おう。」

 そう思いを決め一歩踏み出すと不思議なことが起こった。自分を目の前から地面から周囲100mぐらいの円が広がった。見た目は結界のようでありながらも、自分の周りにはこの現象を引き起こした人物は見当たらない。

「(なんだこれは?魔法にしては術者がいない…)」

 モルドは警戒を強めながら臨戦態勢をとる

「(来るなら来い、返り討ちにしてやる。)」

 円の外側が霧に包まれていき、まるで世界からこの円ごと隔絶されたように感じる

 刻々と時間が経っていき、10分が経とうとした頃に臨戦態勢を解いた。

 そしてタイミングを合わせたように霧が晴れていき、円が消えていった。

「(一体何だったんだ。意図が全く分からん。これを仕掛けた人物はなにをしようとしたんだ)」

 そして警戒はしながら考えているとある異変に気付く。

「なっ…なんだこれは!?」

 青々と茂る大地。円の内側だった場所は荒野のままであるが、その外側は場所の光景が360度変わっていた。はっきりといって異常である。モルドは即座に運営と連絡を取ることにした。

「データが破損とかしたら冗談じゃない。早くGMコールを…」

 そう思いコンソールを開き、GMコールするために使用するためのボタンを押そうとするが、違和感に気づいて動きを止めてしまう。

「な…なんでGMのボタンがないんだ。」

 通常ではありえない事態に戸惑いを隠せずに、何度もコンソールを閉じたり開いたりしてみるが何も変化はなかった。

「(一体何が起きているというんだ。そうだ、ログイン中のフレに現状を伝えよう。そいつがGMしてくれれば万事解決だ。)」

 フレンドリストを開いてみるが、そこに表示された名前は1つもなかった。

「フレンドリストも異常か。そうなるともうお手上げだな。後は強制的にログアウトしかないか。だけどな…」

 このゲームでは自分の拠点でしかセーブできない。つまり今ログアウトしてしまうと、混沌龍を討伐した記録も消えてしまうため、渋ってしまうのも自明の理だった。しかし、自分が出来る対処はもうログアウトしか残っていないのも事実であった。

「…このまま待っても埒が明かないしログアウトしよう。ソロ討伐の記録が消えるのはきついけどな…」

 そう思いログアウト画面を開くが[You cannot log out this time]の文字が浮かび上がる。

「お前もだめなのか。誰か対処法を教えてくれ…」

 最後に残されたたい対処の方法も今潰えてしまった。そして野原へ体を預けた。

「さて、この後どうするか。動くか運営の助けを待つか。」

 寝転がりながらこの後どうするか考える。だが、自分が出来ることは全て確かめてしまったため、後は他人に任せることになってしまうのだが。

 そうしてしばらくの間、思案していたが、

「このまま燻ってても仕方がないし、どっかの町にでも行くとするか。」

 このままでは埒が明かないと判断し、行動することにした。幸いなことにマップ機能は正常に作動しているため、行く方向は定まっていた。

「しかし、ここはどこなんだ?このエメクリスっていう町は聞いたことがないぞ。」

 不安に身を寄せながらも、エメクリスへ向けて動き出したのであった。


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