プロポーズをされてから、お付き合いが始まる
「結婚指輪を贈りたいと思ってるんだけど、僕の事を真剣に考えてくれる?」
赤いバラの花を私に差し出しながら、コウイチさんはこう訊いてきました。
「え?え?」
待ち合わせ場所が駅の改札口の近くだったので、人が沢山行き来する中での突然のプロポーズ。
私の頭は急な展開に付いていけずに、キョロキョロと周りを見渡しながら少しパニックになりかけていました。
おろおろしながらも、ひとまず場所を変えましょうと、コウイチさんの手を引いてカフェに入りました。
コウイチさんはコーヒーを、私は紅茶を注文し、改めて先程言われた言葉を思い返していました。
さっき指輪って言ってた?え?プロポーズ?海外に一緒に行けないって話してたから今日はお別れの話じゃなかったのかな??
まだパニック状態に陥っている私を置いて、コウイチさんが徐に話し始めました。
「……脳の病気の事を少し調べてみた。医者がどう言おうと、やっぱり体をしっかり休ませて体調が整えば変わってくる場合もあると思う。医者というものもそうなんだけど、僕は日本の法制度とかあらゆるものを信用していなくて、その点、海外は日本より進んでいて住みやすくて良いと思う。
行く行くはイギリスか北欧辺りに住みたいと思っていたんだけど、エイミさんの事情も解ったからこれからは日本での仕事と生活も考えていこうと思う。でもイギリスは良いよ!僕はイギリス紳士が憧れで、このバラの花もイギリス紳士に倣っての事なんだ。
僕の仕事はインターネット環境とパソコンさえあれば世界中何処でも仕事が出来るものだからその点も心配しないで良い。経済的な心配もさせないから、専業主婦になって欲しい。」
「……海外に永住するって言う夢を諦めるんですか?」
「諦めた訳じゃないけど、大切なパートナーと一緒に居る事が大前提だから。住む場所は二の次で、いつか行けたら良いなとは思ってる。それが今すぐでは無くなっただけで。エイミさん次第だけど。
……病気の事を聞いても、僕の人生のパートナーはエイミさんが良い。生涯のパートナーになって欲しい。」
そう言って、私の目をしっかりと見据えたコウイチさんはもう一度バラの花を差し出してきました。
「……私は今のところ、日本に住む以外の事を考えられないんですけど、コウイチさんがそれでも良いのなら。」
まだ冷静に考えられていないなぁと心の何処かで思いながらも、私はバラの花を受け取っていました。




