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嵐の前の穏やかな歓談




「今年の1月にコウイチさんと出会って、2月には結婚に向けてのお付き合いをさせて貰うようになったんですが、こんなに早くお話が進んで良いのかなって私自身も急な展開に驚いているところなんです。」


「そうすると、出会ってまだ半年も経ってない訳だ……。エイミさんにね、素朴な疑問なんだが、コウイチの何処を好いてくれたのかな?親としてはやっぱり気になるところでね。」


「そうですね、理知的なところとお仕事に対する向上心が強いところがとても素敵だなぁって思っています。いつも冷静で論理的な考え方が出来るのも凄い事だなぁと思っていて……あ、でもコウイチさんの口下手なところは私がカバーしていってあげられたらって、これから支えていけたらって思っていますね。」


「愚息の事を、そんな風に思って貰えてるとは有り難い限りだな。エイミさんももうある程度はコウイチの性格を解ってくれているとは思うんだが、コウイチは頭が固いと言うか思い込んだら一直線に行動して柔軟性に欠ける場合が多くて、杓子定規な考え方が過ぎる時は冷たく思われる事もあるようだから心配していたんだが……まさか、エイミさんみたいに器量好い人がコウイチの嫁に来てくれるとは思っても見なかったから、本当に有り難く思っているよ。しっかりしてるし、本当に、コウイチには勿体無いくらいだ。」


「いえいえ!とんでもないです!私の方こそ、コウイチさんと釣り合うように頑張らなきゃと思っているところです!」


「いやいや、エイミさんが頑張る必要は全く無くて、コウイチが色々と努力しないといけない事ばかりだな。他人とのコミュニケーション能力が極端に低い上に、自分だけが理解していたら良いと考えている性格だから、そこを直して他人に理解して貰えるようにコウイチ自身が積極的に周りに関わっていかないと……。あー、エイミさんは結婚した後も仕事は続けるつもりで居てるのかな?パティシエをされていた事は聞いてるんだが、今はどんな仕事をされてるのかな?」


「そうなんです、パティシエの資格を持っていてケーキ屋さんに8年勤めたんですけど、少し頑張り過ぎてしまって体調をくずして辞めて今は百貨店で和菓子の販売をしています。今のお仕事は、コウイチさんが専業主婦希望なので来月いっぱいで辞める予定をしているんです。」


「エイミさん自身は仕事を辞める事に関しては納得してるのかな?別に辞めなくてもとは思うんだが。」


「そうですね……。今の職場の人間関係がとても良くて環境も問題無いので出来れば続けたいなぁとは思うんですけど通勤時間を考えると、2人で住む新居の近くでパートタイマーとして働く方が良いのかなって。今は実店舗を持たなくてもインターネットを使って販売が出来るのでパティシエの経験と資格を活かして個人でお菓子を作って売っていくって言う方法も、働く選択肢としては持っていますね。

コウイチさんが働く事をオッケーしてくれたらなんですけどね。そうなったら、パソコンとインターネットに強いコウイチさんを頼って教えて貰おうかなって考えてますね。」


「今はインターネットを使って、やろうと思えば幅広く出来るから凄いな。僕はコウイチと違って機械全般はからっきしでまるで解らないから、そう言った分野は全くの未知の世界だな。」


「私も全然詳しくないので、パソコンや機械関係はコウイチさんに頼ってばかりになってしまってます。コウイチさんみたいに、日々勉強していかなきゃとは思うんですけどなかなか同じようには出来なくて。難しいですよね、私の場合はまずは苦手意識を無くすようにしなきゃいけないですね。」


「いやいや、コウイチの唯一の得意分野を残しておいて貰わないと。

お付き合いをしてまだ然程月日が経っていないのに、今年中の結婚を考えているのは何か理由があるのかな?急いでる訳では無いのに。」



それは……えっと……と言い淀んでしまった私が隣に座るコウイチさんに目を向けると言葉を返してくれました。



「僕の仕事が落ち着いてきて、僕とエイミさんのタイミングが良いから。とりあえず、早くて6月くらいから一緒に住めたらと考えてて今、家を探してるところだよ。」




タダオさんの視線が私からコウイチさんに移り、質問内容もコウイチさんに対するものに変わっていきました。



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