表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

聞く耳を持っていたら何かが変わっていた?

百貨店での買い物デートを終えて自宅に帰って来た私は玄関扉を開けると同時にただいまと叫び、一目散に自分の部屋へと駆け込みクローゼットの中を漁り始めました。


「母さーん、ちょっと来て欲しい~。来週の日曜日にタダオさんとサチさんに会いに行くんだけど、この服装で良いかなぁ?」


紺色の膝下丈ワンピースに着替え終え、自室の全身鏡の前から母を呼び出しました。



「タダオさんって言うんだね、向こうのお父さんは。離婚されててお母さんは一緒に住んでないのよね?」


台所でのおかず作りの作業を中断しタオルで手を拭きながら私の部屋まで来てくれた母は、日程が決まった時点でご挨拶に行く旨を話していたので、初めて聞く名前でも直ぐにピンときたようでした。



「そうそう。お母さんのお名前はね、ナツミさんって言うんだって。今の旦那さんはユウヤさんだって。まずは来週タダオさんとサチさんのお家に行って、来月にはお家に挨拶に来て貰って、それからナツミさんに会いに東京!」


と語気を強めながら話す私に、気怠げな様子でクローゼットに凭れて立つ母は


「やっぱり、向こうのご両親に会いに行くのは急ぎ過ぎてる気がするけどね。もうちょっとお付き合いをしてみて、じっくり決めたら良いと思うんだけど。出会ってまだ4ヶ月でしょ?向こうも、何をそんなに結婚を急ぐ必要があるんだろうね?」


と困惑した顔で冷ややかに発言し、


「ん~、確かに私よりコウイチさんの方が、早く早くって感じに結婚の話を進めてくれてるんだけど、早めに結婚したい私にとっては積極的でラッキーってぐらいの感じなんだけどなぁ。それだけ真剣に考えてくれてるんだなぁって。」


と私が楽観的に言うと、


「でも、デートの度に何時間も話し合いをしてるんでしょ?一つの事を決めるのに、毎回何時間も話し込んでたら疲れないの?そんな人とこれからずぅっと一緒に生活していけるの?しかも、専業主婦希望な上に、向こうの仕事は在宅でも出来るって言うんだから、四六時中一緒に居る事になるんでしょ?それも耐えられるの?」


と今度は母が強い調子で詰め寄って来ました。




母のその勢いに少し吃驚しながらも、


「……その、コウイチさんが納得するまで話が終わらなくて毎回話し合いが長引いちゃうって言うのは、もう、コウイチさんの頑固って言うか四角四面な性格的に仕方が無いかなぁって私は思ってるから、母さんやレナ達が言う程には気になってないところなんだけどね。意見の相違はどんな人との間にもあるし……。口論の間にさ、話し合っても埒が明かないからもういいよ!!って言って、テーブルをバーンって叩いて部屋を出て行くような短気な性格よりも私はそっちの方が自分の性に合ってると言うか……。

直ぐにイライラして怒りの感情をぶつけられたり怒鳴られたり大きな音を出されたりしたら、怖くて萎縮しちゃってもう何も言えなくなっちゃうから、話し合いが延々と長引いてもそれで解決出来るなら会話に付き合う方が私にとってはそんなにも苦痛じゃないんだけど……。これいつ終わるんだろうって思っちゃうくらいに長~い時間を話し合うのは確かに疲れるんだけど、せっかちさんじゃないから辛抱強く待てるし、私がコウイチさんに合わせるばっかりでも無くてこっちの意見と希望もしっかり聞いて貰った上で最終的にはお互いの妥協点を今のところは見つけられてるから……それで良いかなぁって。

四六時中一緒に生活って言うのは、平気かなぁやっていけるかなぁって不安もあるけど、2人でのライフパターンが安定してきたらパートで働こうと思ってるし、それも納得して貰えるようにきっちり話そうとは思ってるよ。コウイチさんが専業主婦で居て欲しいって望んでても、月々に掛かる自分の疾病保険代くらいは自分で稼ぎたいなぁって思ってるし。」


と難しい顔をしながら私が話すと、


「誰との間にも意見の相違は絶対にあるものだからこそ、そんなにも話し合いをしなきゃいけない程に融通が利かなかったり妥協出来ない性格が問題なんじゃないかって言ってるんだけど。……もう!エイミは一回言い出したら人の言う事を全然聞かないんだから!就職内定が決まった時もそう!折角、大手の企業さんから来て欲しいって言われてたのを断っちゃって……。父さんの看病があったからエイミが居てくれたのは心強くて、凄く助かったのはそうなんだけどね……。もう!」


と困った様子で、仕様が無いと諦めたような複雑な表情を覗かせた母は大仰なまでの深い溜息を吐いて見せました。



母を心配させて困らせてしまっているのが本当に申し訳無くて、身の置き場が無いように感じた私は


「それよりさ!母さん、ほら見て!ご挨拶に行く時の格好!このワンピースだったら変じゃないかなぁ?どう?」


話を変えて楽しい雰囲気にしようと、紺色のワンピースの裾を広げながら必死になって問い掛けていました。




慎重な性格の母はいつだって冷静に物事を捉え、この時も私の事を非常に心配してくれていました。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ