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出会って4ヶ月でご挨拶伺い

4月の中旬には、コウイチさんのお父さんとお祖母さんが住んでいるご実家へご挨拶に伺う予定を立てていました。



その日が近付くにつれ、お仕事をしている時やお家でリラックスしている時でもご挨拶当日の事をふと考え始めると、緊張で顔が強張ってしまう自分を心の中で叱咤したり、深く長い溜息を付いて気持ちを落ち着かせる事が多くなっていました。


ご挨拶予定日の一週間程前の休日。


ご実家に持って行く手土産選びの為に百貨店前でコウイチさんと待ち合わせをしていました。


この日の天気は気持ちの良い快晴で、ご挨拶当日もこんな天気だったら良いのになぁと思った事を覚えていますが、私の気分は天気のように晴れやかなものではなく曇天と言った感じでした。


どんなお菓子だったら御二人のお口に合うのかしら、当日はどんな服装でご実家に伺ったら良いのかな、ワンピースを着るにしても丈が短いものは避けなきゃ、お化粧はナチュラルメイクをしたら大丈夫だよね?それなら普段通りのメイクで問題無いよね?絶対に失礼の無いようにしないといけない……等と言った考え出したら切りが無い事ばかり思い悩んでいると、普段はしない顰め面のような微妙な表情をしていた私の顔を見た途端にコウイチさんは珍しく噴出して笑っていました。


何その変な顔と言って笑うコウイチさんに目を向け、矢継ぎ早に質問を浴びせ掛けました。



「ねぇ、御二人はどんなお菓子が好きなのかなぁ?最中だったら日持ちは長いんだけど、年配の方は食べづらいかなぁ?もしかして、手土産はお菓子じゃない方が良い?甘い物はあんまりかなぁ?お菓子がNGだとしたら、何を持って行ったら良いかなぁ。即席のお味噌汁とかかな?お湯を注いだら直ぐに食べられるような……。あ!コウイチさんのお祖母さんは今何歳?固めの物は食べにくいかな?って言うか、お父さんとお祖母さんのお名前教えて!」


「ちょっと落ち着いて。」



気が逸った状態の私をコウイチさんが宥めると言ったいつもとは真逆の一幕を繰り広げながら、コウイチさんが教えてくれました。



「まず、親父は甘い物が好きじゃないからお菓子じゃない方が無難かもしれない。祖母ちゃんは好き嫌いが激しかったような気がするな……。甘い物は大丈夫だけどあんまり量は食べられなさそうだな。あと、祖母ちゃんは今年で90歳になるけど全然そうは見えなくて70歳くらいに考えてくれたら良い。体調も歯も問題無いし、今でも台所に立って毎日料理しているくらいだから。祖母ちゃんに会ったら、きっとエイミさんは吃驚すると思う。」


「え~!そうなんだ!お若い見た目をされてるんだね!90歳だったら私のお祖母ちゃんと同い年だけど去年から施設に入っていて認知症も進んできてる感じだから、毎日料理をされてるなんてコウイチさんのお祖母さんは本当にお元気なんだね~。元気な秘訣を教えて貰わなきゃね。お祖母さんに会うのが楽しみだなぁ。御二人のお名前は何て言うの?」


「親父がタダオで祖母ちゃんがサチだよ。」


「タダオさんとサチさんだね!ご挨拶に行った後には御二人にお礼状みたいなお手紙を書こうと思ってるから、住所も後でまた教えてね。」


「……そこまでしなくて本当に大丈夫だけどな。とりあえず、2人で顔を見せておいたら親父は納得するだろうし。まぁでも、親父の真面目な性格上、お礼状とかの手紙は喜びそうだけど。」


「わ!そうなんだ!やっぱり、出来るだけ失礼の無いようにしておきたいからさ。あ~、タダオさんとサチさんに会うって考えたら今からでもやっぱり凄く緊張しちゃうなぁ。変なテンションになっちゃう!」



いつもよりオーバーリアクションで、体の横で両手をバタバタさせるような妙な動きをしながら笑う私に、コウイチさんはまた表情をくずして微笑んでくれました。




そして、日持ちが1ヶ月程で硬過ぎないお煎餅の詰め合わせが入った進物を一つ購入してこの日のデートを終えました。


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