走れよメロス 1
現代の学生メロスです。
メロスのもとに悪い報せが届いた。妹が交通事故に遭ったという、悪い報せだ。命に別状はないそうだが、足に後遺症が残るかもしれないとのことだ。走れなくなるかもしれないと。
陸上に打ち込む妹には致命的な話でかなり参っていた。そんな妹の姿は初めて見たから、メロスは自分も走らないことを決めた。足を使えなくしようかとも考えたが、健常に生まれたのにわざわざ傷つけることもないかとやめた。妹に罵倒されそうな気もしたから。
まあとにかく、メロスは陸上をやめることにした。
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「───おいメロス!走れよ!」
「俺は絶対に走らん!!体力測定の50m走だって、持久走だって、遅刻しててもな!」
バアァァァアアンと効果音が聞こえてきそうなほど堂々とした素振りで背をそらせ腕を胸の前で組んだ。
「ぶっちゃけ競歩で十分早いし!!」
集中線も入りそうだ。
「そんなん妹さんがより気にするだけだろ!」
「知るか!エゴだし!」
「このシスコン!」
「お前から陸上とったら何も残らねぇよこのバカ!」
「意地張ってんなよー」
「つか競歩遅いじゃねーか!」
以上の会話、体力測定・長距離走1500m中の会話である。正確に言うとメロスは宣言通りなれない早足だからか一周遅れている。競歩でも十分早いとは強がりだったのか。そのため他はトラック外からの野次だ。それはともかく、メロスは考えて言っている。
例えば体力測定の結果は貼り出される。走れなくなっても、妹は習慣できっと確認してしまうだろう。メロスが10位以内に入っていなかったらそれはそれで気にするだろうが。
メロスが遅刻しているときはだいたい妹も遅刻している。走れない妹に合わせる気なのだ。まあそれ配慮するくらいなら寝坊しないで起こしてやれよとなるが、そこはつっこんではいけない。なお、メロスが妹をおんぶやだっこ、担ぐなどするのは思春期的にNGだ。




