シスコンメロス 6
メロスは手持ちぶさたになったので、会場を見て回っている。そこそこの頻度で声をかけられて少し話して離れていく。ぶっちゃけ全部祝辞なわけで、似たり寄ったりな内容だから流れ作業だ。
それでも気疲れした今は苦痛である。元来、メロスはあまり人ごみが好きではないのだ。本音としては読書に没頭したいところである。主役の身内として挨拶は必要だから仕方ないが。
「にいさん。」
背後から美しい耳慣れたソプラノの声が聞こえて振り向く。疲れているのに機敏な動きだった。
のだが、すぐに落胆した。
妹じゃなく義弟の弟だったからだ。やけに声質が似ていて、疲れているときは間違える。平時は間違えないあたり流石だ。まず当たり、つまり態度が違うからわかりやすいのだが。
「なんでしょうか?弟様。あと私のことは呼び捨てで…」
「妹君のご結婚、おめでとうございます。」
義弟の弟の年の頃は8つ9つのはずだが恐ろしいほど利発だ。あとメロスに妙になついている。最近いつの間にやら背後に立っていることも多く、ストーカ…じゃなくて、暗殺者の適正があるかもしれない。そもそも屋敷からどうやって抜け出して来ているかもわからない。
「ところでにいさん。妹君と兄様が結婚したなら、にいさんも一緒ですよねっ」
「えぇと…」
メロスは義弟に心中で説明しとけよ馬鹿野郎と唾を吐いた。そうしても始まらないので、懇切丁寧に先ほどの言葉を否定した。
のだが。
「お聞きになっていないんですか?兄様が、妹君が嫁入りしたらにいさんも引き込むとおっしゃっていましたが。」
領主の仕事は大変である。代替えも近いのに確かまだ義弟の秘書が決まっていなかった気がする。
「父様も説き伏せておられましたし」
義弟の周りには優秀な従者がいる。対してメロスは人並み以上に教養のない孤児で、実は表向きニートである。肩書きは牧人だが稼ぎのいい、あまり言えない仕事なんかをしていて家畜の世話は妹だった。
「家畜は、人を雇って世話をさせるそうです。」
やっかまれること間違いない。
これから死ににいくのだから早々に辞退しなければならないが。
ここで少し振り返ってみよう。義弟は酔い潰してしまった。(昔潰れたときは5日ほど寝込んだ。)領主はもう屋敷に戻ったらしい。
メロスはいつ仕事に赴けるかを思い黄昏た。




