シスコンメロス 5
メロスは仮にも主役の身内である。相手の親御さんに挨拶をしなければならない。こういうとき以外には近づけないので今しかないのだ。
メロスとしては心底近づきたくないが。これを怠った場合、嫁入りした妹にしわ寄せがいく。胃痛ものである。
「領主様。」
「…ああ、薄汚いネズミか」
地の文がおかしいが気にしてはならない。
「挨拶に伺いました」
「それぐらい見ればわかるわ」
取りつく島もないが気にしてはいけない。
「お前なんぞに挨拶される謂れはない」
言い分がめちゃくちゃだが気にしちゃいかん。むしろ鼻で笑え。
ここで引き上げたら妹にいちゃもんをつけられるのだ。教師の「真面目に授業を受けないなら出ていけ」と同じだ。されど立場が上のものには逆らってはいけない。長いものには巻かれろというやつ。
まあメロスの頭には妹8割、義弟2割で埋まっているので領主の嫌みは8割スルーするがな。残り2割はシスコン故にできぬ。
結局嫌みはマトリックスのごとくかわしまくって長文の挨拶を言い切った。こういう挨拶にはお世辞もつけるものである。嘘つくと目が口ほどに物を言うメロスだが、お世辞や誉めそやすことなんかは得意だ。貴族のバカ息子に取り入ったことなんかもあるのだ、板についたものである。
夫人からは意外とウケがよかったりするのだ。なおさら領主的に気に食わんのかもしれんがメロスとしてはどうでもいいことである。




