シスコンメロス 3
───この義弟は、自分よりずっと頭がいい。きっと名主になることだろう。妹を、きっと幸せにしてくれるはずだ。
無駄に感傷的である。だがそう思わなければメロスは色々とやってられないのだ。
なんといっても今回の依頼、成功する可能性がかなり低い。あとメロスに対して妹がひどい。妹に寛容で温厚なメロスも、酒が入れば声高に抗議の声をあげるだろう。
依頼主は『神官のふりをして城に侵入れ』などと宣っていたが、メロスに作法はわからないし祝詞も読めない。(まあそんなことを正直に言えば依頼がそれこそなかったことになりかねないので言わないが)そんなものを疑わぬか?この時代に身分証なんてない。本物でも疑わしきは罰されるのだ、それこそ問答無用である。
そもそも王をわざわざ殺す理由はない。
依頼主の美意識的に『王座に座す資格なし』らしいが、周辺の強国から被害も最小限に上手く逃げ回る手腕は称賛すべきことだ。小国ながら『ネズミ』と揶揄され得るほど認知されていることも。
まあそんな旨みのない話だからこそ、暗殺の心得もなく武芸に優れているわけでもないメロスにお鉢が回り、かつ足下を見られることもなかったのだから、珍しく幸運だったといえなくもない。
「───それで、どこから捻出したのか、どうかご教授いただけないだろうか?義兄殿。」
────どれだけ追及されようとも、メロスは金の出どころをけして吐かない。義弟に叱りつけられるのが嫌だからだ。なんとも情けない理由である。
真っ先に知らせに来たのも、実際は嫌なことは早く済ませようという気持ちの方が強かった。理由の6割がたを占めていた。義弟の詰問はメロスが腹芸に不得手なことを浮き彫りにするもので、メロスとしては回避したいものだからだ。
どうせ非合法的に稼いできたと予想がついているだろうに。仕方がないだろう。なんてふてくされた根性が頭を出す。
笑顔満面に一頻り話したのだが、誤魔化されなかったようだ。いつの間にやら正座をさせられている。
「まさかヤミ金なんかから借りてはいまい?」
「受け手がいない、割りのいい仕事を受けたか?」
「どのような内容だ?」
「後ろめたいのか、そうか。商人から探ってもいいのだが」
「…まあいい、危険を冒しても生きているのだし。」
一方的な問いかけの末お咎めなしという判決に、メロスは胸を撫で下ろした。やはり結婚が嬉しいのだろうと微笑ましくも思った。
このあとメロスは顔面を鷲掴みにされた。保護者面がよくなかったのだろうか。




