ダメロス 3
間違いで牢に連れてこられたメロスは、大人しく処されるに甘んじようとしていた─────訳もなく、盛大に見張り番の兵士へ文句をぶちまけていた。
「だーかーら!!帰してくださいっつってんですよこっちは!!」
先ほどから同じことを繰り返し言っているため、苛立ちから微妙に敬語が崩れてきている。もっと言うとキレているからこそできる行動だ。一度理屈っぽく思えなくもない言い分を伝えても取り合ってもらえなかった恨みが加算されている。
今回の件を国王はよほど重く見ているのか、筋骨隆々のいかにも『百戦錬磨で修羅場潜って来てます。』みたいな監視役を置いている。
大事なことなので二度目だが言っておく、メロスはモヤシのチビである。萎縮しないのは理性が飛んでバーサークしているから。我に返ればガクブルする。
それはさておき、ガチムチ兵士はにべもない。対応しているだけ良心的だろうか。
「無理です、諦めてください、無駄です。」
というか、今にも倒れそうな青白い顔で似たり寄ったりな言葉を吐いている。しつこく騒ぐやつがいるせいで、交代の同僚が休みやがったのだ。五日不眠不休で警戒態勢を敷き大きなわめき声を捌き続けていたのだ。屈強な兵士でも体力が尽きるというものだろう。
お役所仕事を連想させる受け答えに、『一度捕らえた手前帰しづらいんだろクソが』と、メロスは内心で毒づいた。メロスに反乱軍とのつながりはないし、メロスの他に傍観していた一般人も捕らえられたままだし。
口に出さないあたりちょっと冷静になったようだ。親の仇見たレベルで睨み付けてるから意味ないが。
「もうそろそろ諦めてくださいよぉ…こっ…」
兵士が、両手で顔全面を覆いながら泣き言をいい始めたと思ったらぶっ飛んだ。牢屋の石壁もぶっ飛んだ。
構えるメロス。そうしていると、予想外の声が浴びせられた。
「愚兄、残念だけど五体満足みたいだね。ドブネズミみたいで近寄りたくないけど手を貸してあげる。正直巻き込んですまんかった。」
それに対し、
「はあ!?つまり兄ちゃんお前のせいで捕らえられたのかよ!慰謝料よこせ慰謝料!!」
なんて返したメロスの対応力はきっと53万ごえ。妹はトラブルメイカー。
格上に浴びせたらやばいと無意識に自制し、溜め込んでいた鬱憤を妹にぶつけるメロス。メロスにとって妹は格下認定らしい。つくづくメロスはダメだった。




