シスコンメロス 1
これは太宰治著の「走れメロス」から着想を得たものです。
時代背景などを全く守っておらず、至らぬ点も多々あります。
不快に思われた場合は即座にブラウザバックし、他の方々の作品を読んでお口直ししていただければ幸いです。
メロスは少しく不幸な男だ。親に恵まれず、体格に恵まれず、育ててくれた親も、豪商の馬に轢かれて亡くなった。
そのため彼は妹と二人暮らしだ。
彼は妹のためならば命もなげうつ所存である。
かなり重い愛を妹に捧げる彼はまごうことなきシスコンであった。
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メロスはいかにもあやしげな、外へ声が漏れるさびれた隠れ家で
「貴方にはあの薄汚い偽の王を討ってほしい。これは前金だ。」
なんて、とんでもない反逆の罪を背負う依頼を受けていた。まずこの発言が不敬罪である。外に人がいないかすさまじく不安である。
知り合いの商人から斡旋される仕事はいつもハイリスクで、本当なら堅実に『命大事に』を胸に生きたいところである。
だがそうもいかない。これを受ければ、妹は嫁いでゆけるから。この法外な前金だけでも今までの貯蓄と合わせれば、どうにか挙式できる。
妹は領主の一人息子と愛し合い結婚を誓い合っていた。それでも身分の差は厳しいものである。まして孤児だ。懸命な説得と懇願の末、『結婚式の費用が工面できるならば結婚を認めてやろう。』と言われた。
領主であることを念頭に置いても、より豪奢に行われるだろう。なんとも意地の悪い話だった。周りからは散々に諦めることをすすめられた。
それでも諦められなかった。求婚は立場の弱いものがするものである。そして求婚を途中で取り下げるには謝礼金を払わねばならないのだ。しかも次期領主が相手である分、一般よりもお高めである。非があるわけでもなく、何も得ていないのに払う。なんて虚しいことか。
それもこれでもう大丈夫だ。
見積もりより余裕があり、祝儀にも少しばかり箔がつけられそうである。
メロスは改めて「よろしくお願いします。」と折り目正しく頭を下げた。
余談だが、依頼主がぺらぺらと喋っていたときにそんなことを言ったものだから、メロスは依頼主から不興を買って嫌みを言われた。




