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第八話 大発生!

夜のゴミ出しができるようになり、喜んだ小柳だったが……

 小柳が住む街でも、カラス対策として生ゴミの夜間回収が実施されることとなった。生ゴミを出す時間が変わったといっても、その仕事はもちろん亭主ていしゅたる小柳の役目である。

 その日もゴミをギュウギュウにめ込んで一袋におさめ、かどの電柱の下に持って行った。そのままゴミ袋を置いて引き返そうとした時、背後でビリビリとゴミ袋がやぶれる音が聞こえてきた。

 驚いて小柳が振り返ると、街灯に照らされてやや黄色っぽくなった、白と黒のツートンカラーの動物が見えた。

(何だろう。ゴミをあさっているようだが、野良ネコにしてはやけにでかいな。最近、めったに見ないが、野良イヌだろうか)

 その時、人の気配に気付いたらしく、そいつがこちらを見た。白い丸顔で、目の周りだけ黒い。

「パ、パン、パンダ、パンダだあーっ」

 小柳の叫び声に驚いたパンダは、一目散いちもくさんに逃げて行ってしまった。

 一瞬呆然ぼうぜんとしていた小柳は、すぐに家にとって返した。声が聞こえたのか、すでに妻が玄関口に立って待っていた。

「あなた、どうしたの?」

「で、で、出た」

「え、何が」

「パ、パ、パパ」

「どこのパパさんなの?」

「パン、パン」

「あら、パン屋さんのパパさん?」

「違う! パンダ」

「違うパン屋さん?」

「ああ、もう、いいっ! 警察に電話する!」

 驚いている妻を尻目しりめに、小柳は110番した。

「はい、こちら中央署。どうしました?」

「パ、パパ、パン」

 またしても通じないかとなかばあきらめかけたが、警官の答えは意外なものだった。

「ああ、お宅もパンダを見たんですね」

「えっ、お宅もって、どういうことだ?」

「今日はもう何十件も通報が入っています。街中にパンダがあふれているんですよ」


 翌日のニュース番組によると、ある動物ブローカーが秘かにパンダのクローンを密造していたが、交通事故で入院してしまい、その間に飼育場から何十匹も逃げ出したものらしい。

 パンダは絶滅危惧種ぜつめつきぐしゅであるため手荒な方法がとれず、地道に一匹ずつ捕獲ほかくするしかない。だが、何しろ図体ずうたいが大きいので、保健所もおいそれとはつかまえられなかった。そのため、ますます野良パンダが横行おうこうし、大問題になった。

 パンダの主食はもちろん竹や笹だが、本来雑食性だから、腹が減れば何でも食べる。あちこちで農作物に深刻な被害が続出し、やがて、市街地の食料品店や、一般家庭にも出没しゅつぼつするようになった。

 デマも飛び交い、パンダが大挙して量販店で家電を買いあさっていたとか、観光地で傍若無人ぼうじゃくぶじんにふるまっていたとか、様々なウワサが流れた。

 対応に苦慮くりょした政府は、こうなったら原産地に返すしかないと考え、となりの大国に相談した。

 だが、即座そくざにこう言って断られた。

「海賊版は、もうたくさんアル!」

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