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第七話 リーサルウェポン

独裁国家の秘密兵器とは……

(『星空文庫』さんで「最終兵器」として発表したものを改題しました)

 ここは、とある独裁国家の秘密軍事研究所。

 長年の研究が完成したとの報告を受け、この国の最高権力者である将軍がやって来た。将軍は、厳重なセキュリティに守られた特別研究室に入り、自分が呼ぶまで誰も近づかないよう命じた。護衛たちが完全に部屋の前から離れるのを待って、責任者らしい老人に尋ねた。

「教授、ついに最終兵器が完成したというのは本当か?」

「本当でございます、将軍さま」

「見せてくれ」

「少々お待ちください」

 教授は奥から小型のピストルのようなものを持ってきた。

 将軍の片方のまゆがググッとり上がった。

「どういうことだ。こんなちっぽけなピストルが、最終兵器だとでも言うのか」

 すると、教授は自信ありげに薄く笑った。

「将軍さま、兵器というものは、何のためにあるとお考えですか?」

 今度は、将軍の反対側の眉が吊り上がった。

「何をくだらんことを。敵をやっつけるために決まっておろう」

「つまり、敵を降伏させることが目的でございますね?」

「もちろんだ」

「ですが、どれほど建物を破壊しようと、どれほど兵士を倒そうと、相手国が参ったと思わない限り、勝ったことにはなりません」

「そこをグウの音も出んようにたたつぶすのだ。そのための兵器だろうが」

 教授はちょっと悲しそうに首を振った。

「それでは犠牲が増えるばかりです。要は、相手国がみずから降参してくれればよいのです」

 将軍の左右の眉が忙しく上がったり下がったりした。

「お前の言っていることの意味がわからん。わかりやすく説明しろ」

 教授は小さなピストルのようなものを持ち上げて、将軍によく見えるようにした。

「この機械から出る光線は、相手の人間の脳に直接働きかけ、機械を操作する者の命令に絶対服従させるのです。今は試作品なので、一度に一人の相手にしか効き目がありませんが、大型化すれば、一瞬にして相手国全員に降伏を命じることが可能となります」

「ほう、そうなのか。ちょっと見せてくれ」

 教授からそのピストルのような機械を受け取ると、将軍は銃口を教授に向けた。

「悪いが、ちょっと実験台になってもらおう」

 将軍は引き金を引いたが、教授はニヤニヤ笑っている。

「すみませんが、それはダミーです。あなたがわたしに支払う報酬ほうしゅうしんで、そういう行動に出るだろうということは予測できましたのでね。こっちが本物です」

 教授はまったく同じ形の機械をポケットから出した。

「や、やめろ。すまなかった。報酬はきちんと払う!」

 教授はため息をつき、引き金を引いた。

 すると、将軍の顔から怒りと絶望の表情が消え、天使のような晴れやかな笑顔になった。

「あなたは、ここで見たこと聞いたことを忘れ、わたしを無事に国外に脱出させ、その後はわたしのことを忘れなさい」

「はい、かしこまりました、ご主人さま」

 将軍が出て行った後、教授はもう一度ため息をついた。

「これからどうしよう。相手国に亡命しても、結局は同じことになるだろう。いっそ、この機械を使って、世界中に向けてすべての戦争をやめるよう命じてみるか。そうすれば、本当の意味でこれが最終の兵器になるはずだ。しかし、大型化は一人ではできない。途中で秘密が漏れれば、誰かにうばわれてしまうおそれがある。もし、悪い人間の手に渡ったりしたら、人類は誰一人そいつに逆らえなくなってしまう。うーむ、しかたあるまい」

 教授はその機械を台に置き、大きな金槌かなづちを振り上げた。

 だが、なかなか振り下ろすことができず、額にあぶら汗がにじんできた。

 さて、あなたなら、どうしますか?

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