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第十三話 究極のリア充

宇宙遊泳中、突然のアクシデントが……

 おれが宇宙を好きなのは、そこがリアルな世界だからだ。

 こうして母船を離れ、大気圏外を遊泳ゆうえいしながら地球をながめると、そこがいかに虚偽きょぎに満ちた世界か、よくわかる。やれ法律だ、やれ経済だ、やれ政治だ、などとかまびすしく言い立てるが、そんなもの虚構バーチャルではないか。リアルなものなど何ひとつない。

 それに引き替え、宇宙では全てがリアルである。き出しの真空、漆黒しっこくの闇、容赦ようしゃなくそそぐ宇宙線。そこには一片いっぺんの嘘もない。試しに、今、おれが宇宙服を脱ぎ捨てたら、アッという間に息絶えてしまうだろう。

 厳しい世界。そして、それゆえに美しい世界。

 おれは地球に背を向け、暗黒の宇宙空間に浮かぶ星々を見た。想像を絶する距離にあるはずなのに、そのきらめきは宝石などはるかにしのぐ美しさだ。ともすればみずから命綱を切って、そちらに飛んで行きたいという衝動にられてしまう。

 だが、夢のようなひと時は、同僚のチャールズの声で破られた。

《おい、イサム。ちょっと母船から離れ過ぎてるぞ。この辺は時々スペースデブリ(=宇宙ゴミ)が飛んで来るから、あまり無茶するな》

《わかってる。ランチには間に合うように戻るさ》

 母船に戻ろうと向きを変えた瞬間、命綱を何かがかすめるのが見えた。

 宇宙では音は聞こえない。だが、命綱からの張力ちょうりょくがなくなったのはわかった。

《どうした! イサム! 大丈夫か!》

《やられたよ。デブリが命綱を切ったようだ。でも、心配はいらない。宇宙服は無事だから、補助推進ジェットでなんとか母船に戻れるさ》

《気をつけろよ!》

了解ラジャー

 おれには自信があった。宇宙遊泳は得意だ。まだ距離も離れていない。充分リカバリーできるさ。

 その時、ヘルメットにコツンと衝撃があり、シューッというまぎれもなく空気がれる音が聞こえた。

 しまった。デブリが直撃したようだ。

 おれは初めて焦りを感じた。母船までの距離がなかなか縮まらない。空気圧はどんどん下がり、意識が朦朧もうろうとしてきた。

《チャールズ、頼む、助けてくれ……》


 ……うっ、ここはどこだ。

 ああ、おれは意識を失っていたのか。良かった、生きてるぞ。きっと、チャールズが助けてくれたのだ。

「チャールズ、ありがとう。おまえのおかげで、ん?」

 だが、おれはそこが母船の中ではないことに気付いた。壁も床も青一色の部屋だ。

 すると、部屋のドアが開き、誰かが入って来た。

「お疲れ様でした。いかがでしたか『体験型3D映画』は? これは予告編ですが、ご希望でしたら、引き続き本編をご覧になれますよ」

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