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出来たばかりの異界化生活!  作者: トマトマート
8/14

寝相悪いですよ?

 カーテンの隙間から明かりが差してきた。どうやら朝になったようだ。

 布団というモノは魔物だ。入ると出たくなくなる。

 こちらの季節も秋に近い物なのだろうか。朝は冷える。意識はぼんやりと覚醒しているが目を開けたくはない、ユキは目をギュッと瞑り布団の温かさをかみしめていた。

 冷えた空気が鼻腔へ侵入する事で意識がはっきりとしてくる。まだ起きたくないと布団の中へ潜り込むのだが何かに衝突した。柔らかい何かに。


(なにこれ?やわらかいあったかくてきもちい…またねむくなってきた…)


 柔らかくて暖かいものに顔をうずめてまた寝息を立て始めた。だが…


「ユキ?先ほどから私の胸で何をしているのですか?」

「……んっ!?」


 掛け布団越しで誰かの声がした。目が覚め掛け布団を跳ね飛ばす勢いで起き上がった。

 体勢は下に女性の上にユキ小柄なユキ女性に覆いかぶさろうとしているように見える。

 首を起こしてみるとサラサラとしてそうな空色の髪が肩口まで伸びた赤い目の女性と目が合った。

 ユキが何をしていたというのも薄暗い布団の中で目を開けると乱れた寝間着姿の女性に抱き着いていたのだ。それも胸元に顔をうずめて。そうか、一人で寝てたんじゃなかった。


「僕はっえっと!!寝相が悪くて…ご、ごめんなさい」

「別に怒ってはいません。女性同士であるのですがいきなり揉んだり顔をうずめたりするのは改善したほうがいいかと思います。最善の入眠時の姿勢なのですが…」


 思わず飛び退き距離を取って正座をして謝った。この速度は人から一線越した速度であるとユキは思った。

 シアは寝間着を直しながら寝方について人間の体の構造から説明をしだした。

 どうやら僕は寝ぼけてうずめるだけでなく揉んでいたようだ。一人称にも行動にも素が出てしまった。なにしてるんだ僕は…。


「…ということです。いいですか?その尾が正しいスタイルを乱しているのです。寝る際は尾を纏めて潰さないようにすれば自然と寝相もよくなるはずです。…私の話理解できましたか?」

「あっはい。尻尾ですね気を付けます。」


 ではどう改善したらいいのか?と言われたら困る。ほとんど聞いていなかったのだ。

 話の流れを変える為にも疑問に思った事を問おうと思った。シアの着ている寝間着の事だ。


「ねぇ、その寝間着は持ってきたの?昨日は手荷物らしい物は無さそうだったけれども…」

「それは物質圧縮収納パーツが私には内蔵されているのです。精密機械及び生物は圧縮により崩壊してしまう可能性があるので収納できません。収納できる大きさの下限上限、さらに大きさは限られてきますが。」


 なるほど!すごいぞ機族!ちょっと不便な四次元〇ケット的なのを内蔵しているのか。 

 突然シアが「服は面倒ですね。」と、言いながらパジャマのボタンを外し始めた。


「ちょちょ、ちょっとトイレ行ってきます!」

 

 部屋から脱兎のごとく逃げだしたユキ、機族と言っていたが見た目はほとんど人間と変わらない。温盛も人間のようだった。そして柔らかさも…。

 朝から何を想像しているのかと自分に言い聞かせ邪念を追い払おうと頭を右手で軽く叩く。


「ふぅ、スッキリした」


 トイレは慣れない。全く慣れない。ただ座るだけのはずなのだがそれが慣れない。あえては言わないが慣れない…。早くこの体にも馴染めるようにしなければ。

 朝のトイレから始まるユキの決意表明、今日は戦技やら魔法やらを実演して教えてくれるそうだ。

 シアも着替え終わっているだろうと思いスタッフルームへ戻ろうと廊下を歩いていると。


「おはよう。ユキさんやよく眠れたかね?」


 上半身は相変わらず裸の男。

 その赤熱した様な色の髪はどうセットしたのか問いたくなるスパイクの様な髪型、身長差が有りすぎて小人と巨人のような関係になっている。近づくと見上げないと顔が見れないのだ。


「おはようございます。ギリアムさんお蔭様でぐっすりと眠れました」

「うむ、そりゃよかった。シアも起きているだろうしな。そろそろメシにしよう。大したものは出来ないがな!」

「いえ、昨晩の料理は缶詰を使った料理とは思えない程美味でしたよ?半分はシアが食べてしまいましたが…」


 昨日の夕飯を思い出しながら素直な感想を述べた。

 ギリアムが満足げな顔をして「そりゃどうも」と呟いてシャワー室へ入っていった。

 見た目は人間離れしているが根幹は人間だと思える仕草に安心感を覚える。

 きっとギリアムだけの話ではないはずだろうが、人間としての記憶を持っている化物…いや魔族は感情が大半残っているのだろう。シアは消去させられたと言っていたが消去したものは再構築すればいい話だ。

 現に照れる・怒る、の感情を表現していた。人間であったというモノはそう簡単に捨てることは出来ないということだろう。

 しかしユキは思う。この感情は自分だけなのだろうかと思う節が多々あった。

 対象を捕食してしまいたい。

 今までは無いよくわからない感情。これは理性で制御できているのだがその箍がいつ壊れるのかがわからない、変質した体が原因なのは分かっている分恐ろしい。よくわからない自分の体が怖いのだ。

 そうこう考えている間にスタッフルームの扉の前に着いた。もちろんノックは忘れない。

 室内のシアの「入室を許可します」と言う声が聞こえた。

 扉を開けると昨日とは別の服を着ているシアの姿があった。


「お戻りになりましたか。そろそろ朝食が出来ると聞いて素早く身支度を済ませました。」


 今日の彼女の服装は何故か青いチャイナ服であった。

 見事にスリットの入った太ももが妖艶さを演出させる。


「ギリアムさんの声大きいから聞こえたかな?…その、あのーシアさんどこでそんな服を仕入れたのですか?」

「私の居た区画の約6割の服を奪…調達してきました。理由は簡単です。機族には服は必要ないからです。」

 

 いやまって…奪った!?あんた服欲しているじゃないか!!

 シアは表情一つ変えていないのだが若干言っている事がおかしい。本当に合理性だけを求めるマシンなのだろうか?じっとシアの姿を見ているユキ。

 何かを感じたのだろうシアが伏し目がちになって少しトーンの落ちた声色で。

 

「…その反応は似合っていないのですね。すみません。あと2分ほどまっ…」

「いや!めっちゃ似合ってるからね!?初めてチャイナ服なんて見たし!カッコカワイイってすごい思ったからね!」


 慌てて言葉を紡ぐ、朝の事件でユキの理知的なイメージなんてシアの中からはもう無くなっているだろう。とりあえず思っている事を吐く。

 ここまでべた褒めすると逆に疑いたくなるのではないかと思ったのだが。


「…そう。ですか?では、今日はこの動きやすい服装で過ごしたいと思います。」


 このロボっ娘も転がしやすい。

 男性にはとてもトゲのある態度なのだが同性にはとても甘いようだ。

 声色も弾んだようになり明らかに照れている。これは普通にカワイイ。外にはねた短めの髪を人差し指でクルクルと巻いている。彼女の癖なのだろうか?

 これで感情はやはり消え去っていないことが判明したので僥倖であろう。

 シア自身は気づいていない様子であるのだが感情豊かだ。


「ギリアムさんはシャワー浴びに行ってるからまだ時間掛かるはずですよ?」


 「なるほど」とシアが言う。表情はいつものに戻っているが心なしか柔らかい印象に見える。


「ところで、服が大量に収納されていると思うのですが。私のメイド服に変わる服も入っていませんか?」

「スキャン…測定148.68.53.70…倉庫内検索…検索…」

 声に出して言うなんてひどい。なんとなくわかる数字を言われるとなんだかイヤだ。頭頂部に何度も矢が刺さる幻覚に襲われた。

 もはやこれは僕の体だ。分かっていたのだがあの低い数値はアレだな…僕は子供体形って事か…。


「検索結果8件…臀部にチューリップのワッペンが着いた短パン。上着に花のワッペンが着いた子供服のセットほk」

「子供服しかないのか!!そんな恥ずかしいの穿けないし着れないよっ!」

「では、こちらはどうですか?その少し大きめなメイド服よりは幾分マシだと思います。」


 シアが取り出したのは黒いドレスコートであった。

 楽器のコンサートで着られそうなお高そうな物であった。

 確かに大きめのメイド服よりはマシであろうが、そのドレスコート子供服と言う所に引っかかる感情が残っているのだ。こだわってもしょうがないよね…。


「じゃ、じゃぁそのドレスコートでお願いします。お代は持ち合わせていませんので出世払いで」

「いえ、これも奪…再利用させてもらっているだけなのでお代は結構です。」


 さて、貰えたことはいいのだが着衣の仕方が分からない。

 メイド服を脱ぎ畳んだ後、なんとなく入れそうなところから入ろうとするのだが入れない。

 悪戦苦闘しているとシアの声が聞こえた。ファスナーを下げれば楽に着られるとのこと。

 そんなものは知るはずがない!

 その後もシアにシアに指示を貰いながらも何とか着ることができた。

 これを一人で着るのは難しいのだろうと思っていたのだが、シアは似たような服を一人で着れるとのこと。それは肩の関節が人外の動きをするからだろう?と問いたくなったのだが実際に一人で着れるようだ。 初めて着た豪華そうな服にテンションが上がって右足のつま先を立ててくるりとその場で一回転した。 

 ひざ丈程のスカートがふわりと空気を孕んで膨らむ。男時代では考えられない感覚に喜びを感じる。


「ふぅ…何とか着られました。どうですか?シア似合いますか?」

「はい。とてもにお似合いです。子供らしさと妖艶さが入り混じり複雑なスパイスを醸し出しています。」


 シアの満足げな顔を眺めているとお腹の虫が鳴った。もちろんユキのだ。

 いいタイミングでギリアムの呼び声が聞こえた。

 さて、お披露目大会と行こうではないか。

私は大きいのが好きです。

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