御開帳だけど…
扉を閉め扉の鍵をしっかりと掛けた。前世?では鍵を書けるなんてしたことが無かったのでしっかりとロックされているのを手触りで確認する。脱衣場の照明は落とされており外側からは点けれない。
何も慌てることは無い。閉めた扉の右側、暗闇で光るスイッチらしきものが見える。
カチッと音がして白い蛍光灯が点いた。予想は…と言っても部屋に光るスイッチと言えば照明のスイッチだと予想しなくてもわかることである。ここは本当に前に居た場所と何も違わない気がする。
脱衣場は店内のおしゃれな雰囲気と比べると不似合いな無機質なつくりの脱衣場。棚・衣服を入れるバケット・バスマットのみ。利用するのは客ではないのでコストを削減させたのだろう。
「さて、お楽しみと悲しみがあふれる時間が参りました。」
誰も居ないのだが小声で独り言をしてしまう。
故?結城は紛れもなく母親以外の裸体を見たことが無い…いわゆる童貞というものだった。その彼?がついに他人の赤裸々な姿をお目にかかることができるのだ!
スルスルと服を脱いでゆくのだが上半身はまだしも下半身を見るのが怖い。いろんな意味で。
カッターシャツを脱いだ時点で違和感を感じた。さらにシャツを脱いで確信した。
「あれ?何も思わないし興奮もしない…男としては…やっぱり終わってしまったのか」
他人の裸体と言っても今は自分の裸体である。自分自身に興奮する者は居るまい。
お楽しみであった物も悲しみへと変わってしまった今、これ以上嘆くことは無いであろう。
勢いよくズボンと下着を脱いだ。
「あー、やっぱりか…ちょっとだけだったけど…うーん。自分の体だけどマジマジと見るのは変な感じになるなぁ。でもホントに付いてないやオプションパーツ…」
この歳でお漏らししたなんて口が裂けても言えない。それもギリアムの顔が怖くて漏らしたなんて失礼だしなんかカッコ悪い気がする。
衣服をすべて脱ぎ終えた。さて、ご飯ももうすぐ出来上がるだろうしさっさと済ましてしまおう。
シャワールームに入るや否や衝撃事実に気付いた。
「ほあぁ!?これ僕なの?」
折り戸を開け正面に洗面台があった。もちろんその上には鏡もある。その鏡に映る姿に驚愕した。
顔は人形のように整っており、肌は不健康なほどに白い。その白い肌の反対色の漆黒の髪、驚愕に彩られた表情に唯一目立つ色をを出しているもの、それは真っ赤な大きな目だ。充血しているわけではなく元から赤いのであろう。
「か、髪の毛は少し伸びたぐらい…?いや、だいぶ伸びているよっ!なにこれ自分人形になったのかなぁ、…やっふぁひ痛覚はあるなぁ。いたた…」
散々体が痛いと言っていたはずなのに更にほっぺを抓って確認する。現実味が無いのでしょうがない。
これはすごい状況だ。生まれ変わった先が超絶な美少女であった。中身は男だが。
身長は高くはない。それは前から変わっていないので何も気にならないのであるが、外見が。何度も言うのだが超絶美少女である!人外魔境であるこの世界ではもう人間かどうかなんて関係はない。
尻尾と耳の時点でお察しであるのだが。
マジマジとカラダを確認していると、突然鍵の開く音が聞こえた。
「着替えおいておk………ゴメン……」
そういえばシャワールームの扉閉めてないな。鏡に夢中だったせいで忘れていた。
顔だけ右に向けたらヨルンとばっちり目が合った。顔をしっかり見たのは初めてだと思う。髪の毛は短目でマットな濡れ髪の様な感じに仕上がっている。変質後もお手入れは欠かせないようだ。目は澄んだ青色。今はまさに目がテンになっている感じであるのだが。口も魚のようにパクパクさせていたが、ようやく絞り出した言葉が、謝罪の言葉3文字だった。
言い終える前に扉が大きな音を立てて閉められた。結構勢いがすごかったんだが、扉が壊れてしまうよと言いたい。
それはそうと色白イケメンが朱に染まる瞬間を見てしまった。ううむ、イケメンだから絵になるな。
だが今度は半裸ではなく本当に全裸で合った故当然の反応だろう。だが鏡に正面を向けていたので見えてもおしりぐらいだろう。
いや、これは完全に男の感覚である。
ベタな展開あるならば、ここで僕が『キャーーー』ッとでも言って桶をヨルンにぶん投げるシーンであるだろうに、桶無いけど。
んん?まてよ…しっかりカギを掛けたはずなんだが。これはあとからヨルンを問い詰めなければいけないな。
「時間も無いしさっさとシャワー済ませようかなぁ」
今度はしっかりと折り戸を閉めた。先ほどのあったことは何も無かったかのようにシャワーを浴び始める。文明崩壊レベルの事が起きているので水浴び覚悟をしていたのだが温かいお湯はまだ出るようだ。
「ふぅー!シャワーはぬるめが好きだな~」
ボディーソープ・シャンプーリンスはしっかり置いてある、ボディタオル置いてあるのだが柔らかいお肌に優しい泡立ちの良い素材の物を使っていたようだ。もしかしたらギリアムの私物?だとしたら顔に似合わず繊細なお肌をしているのだろうか?
体を洗っているとある事に気付く。
(尻尾ってなんか変な感じがするな、元々無かったものだから感覚が変なのか?)
自分の意志からある程度動かせるものの状態の固定ができない。指でいうと曲げた状態がキープできないのである。振り回すことは出来るのだが…
(ええい暴れるな尻尾!このっこのっ)
ベシベシと尻尾が壁にぶつかるもののキャッチは出来ない。5度目のチャレンジでやっと掴めたのだが、その時ユキに電撃が走る。
「おお…なんと良い触り心地なのだ…ツルツルしてる。んん?よく見たら細かいウロコが…蛇のウロコみたいだなぁ、自分は何族になったんだろう?尻尾と耳だけではわからないなぁ」
尻尾の触り心地を楽しんでいると扉の外からくぐもった声が聞こえた。
「ユキさんよ!飯が出来上がったから冷めないうちに上がってきておくれよ」
「あぁ、もうそんな時間が経っていたのですか。わざわざすみません。もう上がります」
どうやらずいぶん時間が過ぎていたようだ。時間にルーズなのは直さなければいけないなぁ。
シャワーで泡を流しヨルンの用意してくれたバスタオルで体を拭いているとある事に気付いた。
「こ、これはどう見てもメイド服だろ。この店どうなってんだよ!コスプレ喫茶かよ!ま、まぁ下着は男物を用意してもらっ…えー」
畳んで置いてあるメイド服一式をどかしたら下着が出てきた。
あら?水着の下の様な下着が一枚。どう見てもビキニタイプのかわいいピンク柄パンツである。
この店大丈夫か?もしかしたら風俗店とかそういうオチはないよね…?
さっきヨルンが貸してくれるって言ってたのにどうなってやがる…!ああっ!?もしかしてヨルンはそういう趣味の人だったのか、深くは追及しないほうが良いのだろう…。
心の中で誓いを立てた。そして、生まれて初めて女性ものの下着を穿く。ヨルンの穿いていたと思うとちょっと躊躇してしまうがノーパンスカート痴女プレイなんぞ僕はしないからな。
下着の衝撃で見落としていたがブラジャーたるものも在るではないか。だが。
「え?なにこれでかすぎる。胸囲が全く足りていないだが…ん?これは…まぁそんなものか。」
まぁ、予想していたけどね貧相すぎるのよね自分のが。誰のだよ!なんだか無性に腹が立つな。
お行儀が悪いかと思うが脱衣場の隅に投げつけておいた。そうか、これは彼のだった。ヨルンは上までつけるしっかり者なんだな。
関心関心。ああ見えて実は女だったってオチもありうる…。こっそり聞いてみるかなぁ?
「た、たぶんコレでいいはず…。メイド喫茶のおねーさんと見た目は変わらない。尻尾でスカートが捲れるのがどうにかしたいんだが…。穴をあけるわけにはいかないからなぁ。まぁいいやパンツぐらい減るものではない。」
完全に思考が男である。
髪の毛を乾かしたいのだがドライヤーが無いので念入りに髪の水気を吸い取っておこう。前ならば自然乾燥であったので何も気にしないところだったのだが、他人の家さらに女の子になっている。なぜかドライヤーを使わなければいけないと言う使命感が湧いてきたのだったが。無いならばしょうがない。
時間も押しているしね。お腹の虫がまた鳴ったのを確認し先ほどのホールへ戻る。
後ろから見ると尻尾が邪魔でおしりが半分出ている、ユキは気づいていない。更に尻尾が邪魔でパンツ、いや…おしりも半分丸見えだという事に気付いては居ないのであった。
なるべく4日更新目指します。
誤字脱字やらいろいろあると思いますがご指摘をお願いいたします!
まほーはまだ出ません。当分先ですよ~