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出来たばかりの異界化生活!  作者: トマトマート
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安全確認も大事だ。

 戦力外のユキ飛んで行ったシア取り残された俺たち。


「なぁ、シアが上空から確認するなら俺たち必要なくないか?ギリアム、俺たちはどこを確認すればいいのだろうか?」

「んなもんしらんわ、シアの言った通り店周囲でいいんじゃないか?」


 当初の予定通り店周囲という事で収まったのだが準備運動にもならない事に懸念を抱く。

 スポーツだったら準備不足で怪我をする。試験だったら赤点を取る。準備という物は怪我防止・事故防止という点でも怠ってはいけない代物だとヨルンは自負する。


「店周囲なんて2分ぐらいで終わってしまうのではないか?準備運動にこの区画1周ぐらいいけそうじゃろう?」

「うーん。普段やっていた事の延長上みたいなものだが…細かくやろと思えば10分ぐらい稼げるだろう?」


 確かにギリアムと俺にとっては日課になりつつある事だ。

 この首都アンネルは7の区画に別れている。

 沿岸に面し高い塀に囲われ巨大な工場が乱立した区画は第一区の工業地帯。

 正直言うと工業地帯の事はよくわからない。興味が無いというのが本音だが重機やら機械やら触れる自信がないからだ。不器用と言う事は自覚している事だ。

 海と山と畜産の第二区、沿岸工業地帯とは湾を挟んで対岸上にある区域だ。大きな漁港があり更に自然豊かな山々が広がってその雄大な自然の中で酪農を営んでいる人もいる。ブランド牛だか豚だか覚えていないのだが他都市では高く売れるらしい。この二区画の半分は山と言う事で構わないだろう。あと、遠洋漁業も盛んでマグロは最高に高いが旨い。…マグロ食べたい。

 因みに俺たち一般人の求人は大体この第二区に集中している。別にマグロが食べたいわけではない。

 この流れで来ると言ったら加工業であろう。第三区の食品工業である。

これも小難しい機械を使ったりして缶詰やらパウチ加工やらにしているらしいのだが機械音痴の自分には向いていない。体を動かしたりしている方がしっくりくる。

 次は第四区、まさに今から一周する区画だ。化物による破壊活動は区画によりマチマチだ。俺たちの居る第四区は昼間人口が少ない地域だったから暴れた化物が少なかっただけだろう。

 ベッドタウンとなる第五区画はひどい有様だったらしい。あそこは魔境の地といってもよいであろう。

 今でもたまに閃光や爆発音が聞こえる。

 その次に被害が大きそうだったのは第六区画、商業・娯楽との生活にかかわる区画だった。時間が時間だったからだろうか?人もそれなりに居たはずだ。

 第六区にはランドマークにもなっていた十八階建ての複合商業施設があったのだが、真っ先に倒壊してしまった。そこには好きな服屋があったので残念である。この体ではどうせ着れないだろうが…。

 そして最後に第七区。中枢区画といってもよかったのだが…。まともな人間…ではない。ヤツがまだいたのだろうな。全区画に緊急警報を使い隔壁を閉じたようだった。放送内容はマイク越しでもわかるぐらいに混乱している状態であったことだろう。もちろんその後殺されたであろうという『音』も。

 つい最近までは平和だったのだが。いったい何が起きたのか。よくわからないだからこそ安全地帯は必須なのだ。確実にここなら休めるという地を作っておかなければ安心して眠れない。

 この体になってから特にその傾向が出ている気がする。認めたくはないが縄張り意識的な物が自分に芽生えている事が判る。不服であるが。

 それ故に、この付近に何か違う物が近寄ってきているのが分かる。


「ギリアム、何か近づいてきてる…と思う」

「思うってなんだよ。この状況で何か見えるっておかしくないか?」


 二人は立ち止まり辺りを見回した。

 確かにギリアムの言う通りで道路のど真ん中を駆けてたとしても前方には何も見えない。普段の3分の1ぐらいの速度で走っていたので、道中見落としたという事は少ないだろう。


「みーつーけーたぁー!アーァー!?」


 ヨルンが即反応し殴り飛ばした硬質な音を立てて道路に埋没する謎の物体。

 突然上から降ってきて目の前に現れた怪しい生物…?小さい何かを思わず全力で殴ってしまった。


「な、なんだ?思わず殴っちまった!」

「みつけたとか言ってなかったか?なんだかこえーな。このままヤっちまうか。」


 ギリアムの声が硬く低い声でそう言った。

 確かにいきなり見つけたと言われるとゾッとするモノがあるが聞いた事がある声だ。


「なぁ、今殴ったのシアじゃないか?声が何となく似ていたような」

「あの嬢ちゃんがそんな事言うか?あいつなら…その。もっと事務的な感じだろ!」

「いきなりひどいですよー?ぬー?」


 結構にめり込んでいたのかなかなか抜けないようだ。頭が。


「いきなりー。ぬぅー!話しかけたのはー。んー!!あやまりーー!ますぅー。んー!!!」


 頭が埋まっているのにしっかりと声が通るのが怖い。発声器官が口ではないのではないか?

 そんな事よりもこの物体は自分たちを知っているようだ。この声。やはりシアのようだ。


「ギリアムさん。力持ちでしょ?」

「え?俺が抜くのか?お前が殴ったんだろ!…まぁいいか…」


 収穫された大きなカブのように引っこ抜けるちっこいシア。不思議と顔と服は汚れていない。


「伝言ですよぉ?ユキさんが襲われましたので帰ってきてください~」

「まぁ、お前が居るという事はユキは無事だという事だな?お前はシアの使いっぱしりみたいなものか?」


 ちびシアは、心外だと言わんばかりに首をブンブン横に振る。


「わたしはー崇高でパーフェクトなシアの分体でございますのぉ」


 きっと、ギリアムも同じことを思っているに違いない口元がひくひくしている。全力で殴りたいと。

 とりあえず問題が起きたらしいので戻れと言う事なんだろうが、このツカイはどうかと思う。 

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