貴方は変態でしたか。
目が覚める。腕を掴む。シアが居た。が。
「…あ、あの?なんで僕脱がされてるのd…?…ひゃっ!!」
「あっあっえっと、誤解しないでください。下着を交換して差し上げようと」
女々しい声を上げ近くの崩れた柱に隠れる。
それと先ほどの戦闘時…といっても逃げようとしているだけだったけど。お粗相してしまったようだ。
ええ、思い出したとも。どうにでもなってしまえと思っていた事も。神様の事も。
夢だと思いたいのだがあの感覚夢ではなさそうだ。妙にリアルであった。
「下着を交換してくださるのはありがたいのですが。何故鼻血を垂らしているのですか…?」
「はな…?ハッ!?これは、先ほどの戦闘で鼻からオイルがもれてですね…!」
戦闘の影響だと言っているが怪我1つ無いし、これだけ派手に破壊活動をしているのに服が埃っぽくない。出ているのは鼻血だけだ。
脳内決議の結果。この娘は変態だ。一番常識人に見えてぶっ飛んでる系の変態と言う事が判明した。
しかし、助けてもらった手前信じている事にしないと。
「…戦闘で…本当なんですね?他意は無かったんですね?申し訳ないですけども下着をこちらに投げてもらえませんか…?」
「…はぃ…どうぞ。」
なんでそんなにがっかりしているのかな!?最早隠そうともしていないじゃないですか!
男子で健全たる思考を持っていたらきっと喜んでいただろうが、やはり違和感を感じる。不思議と不快感は無い事からこの感覚は気にしなくてもよいだろう。たぶん…
「うぅ…情けないなぁ…。この歳で…うわぁ…靴まで濡れてるよ…」
仕方がないよね。僕は一般人。他の人達みたいに割り切れた訳でもないしこちらに来て日が浅い。
べ、別に意気地なしな訳ではないですからね!戦い方を知らないだけです…。畜生…!
…靴の替えと靴下あるかなぁ…。
「シア、靴と靴下の替えはありますか…?あの…その…履き替えたいので」
シアの方は気づいているだろうが、とってとっても言い辛い。「少々お待ちください」と、瓦礫の向こうから聞こえた。何か小声で言っている。気になるので頭だけ出して確認すると。
「この服に似合うのはこの下着…いや…少し大人過ぎる気がする。いやいや少し待とう。まずは服から選ばねばなるまい。だがあの小さな体だ。下手すれば小学生と間違えられてもおかしくない故に。スモックでゆったりした物はどうだろうか?それも良いのだが安全面も考慮しなければ。伸縮性の優れたパンツにジャケットというのはどうだろう?このご時世だいつ戦いが……いやっ!駄目だ。私が守ればいいのだ。可愛い服は譲れない。だとしたら…」
ファッションコーディネーターさんかな?背中しか見えないが空中に手を躍らせぶつぶつ言いながら何かをしている。あの様子だとあの謎の画面で何かをしながら…着せ替え?だろうか。
どっちにしろ背中しか見えないのだが、その背中に何か執念的な何かを感じる。
確かにシアの見立てた服は可愛いし似合っていると思うが…前もこんな風にぶつぶつ言いながらやっていたのだろうか?少し怖い。
ふと気が付いたことがある。この格好でも寒くないという事だ。朝の冷え込む感覚からすると秋っぽい季節だったような気がするのだが。鳥肌どころか冷気を感じないのだ、人間を辞めてしまっているから環境に何らかの耐性が付いていてもおかしい話ではない。むしろ便利な気がする。やはり人間には戻ろうとは思えないし思わない。
「お待たせしました。ではそちらに服を送りますので着用をお願いします。」
「ありがとうございます」と一言伝えて服を受け取った。
やはりシアの見立てた服は良い。ぶつぶつ言っていた物が全部合わさっている。
膝下程のベージュのトレンチコート・白地に控えめに草木の刺繍の入ったのトップス・膝上程のひらひらが控えのスカート、こ、これは青と白の縞模様の上下セット下着だが…。本当にあったんだコレ。それと二―ソックス…。普通に穿けばいいのだろうかこれは…。これは…?ブーツなのかな?やたらごつい。ここは妥協したみたいだ。いざという時があるしね。
ん?あれ?ブラが上手く外れないのは慣れていないからでしょうか…?
「ふぅ、ありがとうございます。本当に服はいっぱいあるのですね」
「か、かわ………そうですね。街中の服屋を漁ってましたからね。」
見て見ぬふり。メッキが剥がれて中身が丸見えだぞ。
それから助けてもらったことを感謝した。そして何が起きたかを事細かく説明してくれた。
シアに分体が居るなんて。そしてそれが僕に付いていたなんて全く気付かなかった。
それと、お漏らしした件は秘密にしてもらえる事になった。元より言いふらす事は頭になかったみたいだが。ありがたい…くぅ…。
「分体から連絡がありました。あちらも戦闘が行われていたようでしたが制圧完了との事です。」
「そうですか。あの二人もお強いですね。弱い私が恨めしいです」
実際悔しい。皆戦う力があるのに攻撃能力は自分にはゼロに等しい。魔法が使えればどうにかなるのだろうか?小学生の頃魔法が使えるようになりたかったから練習したっけな。
掌の中心に意識を集中させて念じる。それを10分程、今となっては黒歴史だが懐かしい。
「!?ユキ!なにをしているのですか?危ないですよ!?」
「へっ?うおぁっ!」
何気なしに表を向けた掌に鋭利な棘がびっしり付いた氷塊が浮いていた。猛烈な勢いで膨らんでいく。浮いている物体とシアの呼び声に驚き、その拍子に地面に落ちて砕けて跡形もなく消えてしまった。言葉通り砕け散った破片も無くなった。僕が出したモノなの…?
「ユキ…今あなたは無意識に魔法を行使しましたか…?教えた覚えは私には無いのですが。」
「昔こうやって気を込めたら魔法が使えるかなぁ…っとおバカな真似をしていたのを思い出してですね…」
「あなたの使っていた魔法はアイスボムですよ?私が止めなければ臨界点に到達して暴発するところでしたよ?私は魔法が使えませんが教える事は出来ますのでそれまで使用は控えてください。」
うっ、怒ってる…そりゃ怒るよなぁ。そんな危ない魔法だったなんて。
「ごめんなさい…」と謝っておくのだが、これは収穫だと同時に思った。これで皆と同じように戦うことが出来る!なぜ使えるかは人間じゃないから!っと、いう事だが深くは考えてはダメだ。
それにしても夢のような世界だ。魔法が使えるなんて体力的に劣っていても魔法の方で援護できるのではないか?補助魔法とかあるのかなぁ?
などと考えていると、2人と1匹?が帰還したようだ。
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