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出来たばかりの異界化生活!  作者: トマトマート
10/14

運って機能はいらないよね?

 ビルの中にはエレベーターが無いようで薄暗い蛍光灯が照らす階段を降りた。この店は3階にあるようで、ほかの店も並んでいるようだが軒並みシャッターが閉まっている。ゴーストタウンならぬゴーストビルのようだった。ギリアム曰く大異変以降自分たち以外にこのビルに出入りする姿を見たことが無いという事だ。僕を背負ってこの階段登ってきたんだな。ありがとうヨルン。

 このビルの敷地面積自体は大して広くはないようですぐに出入り口が見えた。

 こっちの世界の朝日は初である事を確認しながらも日本に居た頃と何も変わらないと思い安堵した。

 太陽が昇り日の光でビルが陰影を作り出している。朝日に目が沁みるユキはこの光景は見たことがあると思いながらあたりを見渡していた。区画整備がしっかりしているのか延々と続く一本道、脇には4階5階建ての建築物が並んでいる。ふと振り返ると自分たちが出てきた4階建てのビル、壁は四方1m程のタイルが連なって貼ってあるシンプルな物で軒並み並んでいる建造物も同じような感じだ。道に迷ったら困りそうな建物だ。しかし、建築されてから年数が経つようで所々ヒビが見える。古いがゆえに目印になるし、それが味になっているようにも見える。他にもどこにでもありそうな建造物を眺めているとシアの声が聞こえた。


「では、周囲の安全確認を行った後に習得訓練に向かいたいと思います。尚私が使えるものがあなた達に使えるかどうかは不明ですので留意しておいてください。魔法に関しては我が種族では使えないので一般の魔物が使用している映像を再生し説明を行う事しかできませんのでご許し下さい。では10分後ほどにこの場所で。」


 そう言い終えるとシアは静かにゆっくりと飛び上がった。言葉通り飛び上がったのだ。

 服がはためきスリットの間から艶めかしく足が見え隠れしているのだが一点に気付く。大腿部の外側が開いているのだ。内部から何かが出ているようでシアの足元が歪んで見える。しかし服は焼けていない点を見る限り熱は発生していないようだ。


「私は上空から周囲の確認を行います。異常があった場合は戦闘行為は無理に行わず店内に逃げ込んでください。」

 

 朝からぶっ飛んでますね。いや、本当に飛んでますが。

 くだらない事を心の中で呟き、シアを見送る。

 呆然としているのは自分だけではないと分かった。隣の二人も飛んで行ったシアの後を目線で追っていたのだ、それも開いた口が塞がらない様子でだ。どんな原理で飛んでいるのだろうか、想像もつかないのだがそのうち聞いてみよう。そう心に誓うユキであった。

 

「さ、さて、私たちも安全確認を行いましょう」

「う、うむ。あの娘空まで飛べるのか。驚いたわい」

「空を飛べるとか羨ましい限りだな」


 しかし、どのぐらいの範囲を見回ればいいのだろうか?周囲100mぐらいで事足りると思うのだが。

 ユキは腕を組んで考え込んだ。すると横から柔軟体操をしているヨルンの声がした。


「この店の周囲で良い気がするのだが…運もよくここら一帯は魔物も少ないし、出たとしても倒せるレベルの物ばかりだ」


 今日の彼は服装が違うと共に気合いの入り方も違う。前の窮屈そうなスーツとは違うのだ。

 黒茶色のどこかで見たことあるミリタリージャケット、インナーは藍色、気持ち丈が足りない黒色のゆったりしたデニム。靴は昨日とは別にスニーカーに変わっている。前世であったらきっと欲しいと思う高そうな服だ。今は何とも思わないのだが。

 それにしても気に入らない。シアのチャイナ服の事ばかり気にして二人とも僕の服装の事に何も突っ込みを入れてくれない。嫉妬しているわけではないのだが…いやこれは嫉妬なのか?とりあえず気に入らない。

 とりあえず与えられた仕事をこなそうと思う。しかし土地勘が全くないのでヨルン達についていくしかないだろう。


「さて、手分けしてさっさと終わらせr」

「私土地勘が無いし『攻撃力10』なのでその辺の雑魚にやられてしまいそうなのですが…」


 ヨルンがさっそく手分けとか言いだした。これだけは避けたい。迷子になったら恥ずかしい上に魔物の餌になってしまうというおまけつきだ。

 最弱アピールは忘れない、別に悲しいわけではないんだ…。


「そうさな、ユキちゃんはお留守番しておった方がよかろうに」

「あーそうだなユキさんは建物内に居たほうが安全な気がするな」


 自分から最弱アピールをしておいてなんか悔しい。きっと今自分の表情は引きつった笑顔になっているだろうか。それともう一つ言いたいことがあるのだ。


「そろそろ『さん・ちゃん』付はやめましょう?なにかむずがゆい物を感じます。」


 ギリアムはそれもそうだな。という反応をしているのだが、ヨルンはと言うと呼び捨てに抵抗があるようで眉をひそめている。 


「確かにな。これから長い付き合いになりそうだからな。改めてよろしくたのむぞユキ」

「…呼び捨ての方がむずがゆい気が…。まぁ、そっちがそう言うならしょうがないな」


 ギリアムは大きな声で笑い、ヨルンは不承不承と言う感じで収まった。

 さて、皆は散ったし僕は部屋で待とうとしようかな。

 この建物自体外見はひび割れでぼろい印象が強いけども内装はちょっとホコリっぽいぐらいで立派なものだ。他に店があるとは言っていたのだが本当に誰も居ないのだろうか?僕ならあの二人の外見が怖くて姿を見せなかっただけ。っという可能性もある。さらに、隠れ住んでいるとあれば少なくとも戦闘力は無いと思う。まぁ、それは僕だったらという想定であるわけで、狂暴な何かが獲物を捕らえるべく息をひそめているという可能性も…え?

 

「だ、だれかいらっしゃうのですか?」


 噛んだ。ビビり過ぎて噛んだ。だが何かの気配がした。願わくば対話が可能な種族の事を願います。


「バれタ。オレニククウ。オンナうまそウ。」


 片言の掠れ声が聞こえた。聞き取りづらかった『クウ』とかいう単語が聞こえたね。うん。

 ここは建物の2階。シャッターが閉まっているので薄暗くはあるが日は昇っているはずなのに通路の奥が真っ暗だ。この先の暗い場所に誰かが居る。考えたくも感じたくもないがこの体になり危機管理機能がかなり向上しているようだ。危機感を感じすぎたおかげで足が動かない。動きたくても足が竦んで動かないのだ。尻もちをついていないだけましだと思え!

 運が1だったことがさっそく実証された結果だね。


「に、逃げなきゃ。逃げなきゃ!」


 前方の黒い空間に気を取られ過ぎて逃げる事を失念してしまった。

 気が付けば後ろにも黒い空間が広がっていた。退路が無くなってしまった。


「ドコへ イコウと イウノか?」

「オマエも ナカマに シテヤる」


 黒い空間から何かが出てくる。まずは腕、青白い肌をしたやせ細った人間のモノだ。

 しかし何かが違う。それは腐臭だ。この人間からは腐臭が漂う。それに体が人間ではないようだ。

 謎の空間からすべての体が出切ると背中からもう2本腕が生えている化物が出てきた。生きている様子はないようだが声の主はこいつのようで耳障りな声が前方の怪物から発せられた。


「もうニゲられなイ。ワタシのニクになレ。オマエはヨワくてウマそうダ。」


 歯の根が合わないというのはこういう状況なのだろう。実際自分が発している音だと気づくのには時間がかかったが。手元に何もない。相手の手にも何もない。お互い素手同士勝負はわかr…

 卑怯だ!化物の手元にはいつの間にか鋭利な何かが飛び出していた。まぁ化物さんだから何でもありですよね。

 完全にフェアな戦いにならなくなった。例えるなら鍬を装備した村人でドラゴンを倒さなければいけないぐらい辛い状況だ。死ぬ覚悟はまだ出来ていない。いやだ。いやだ…。また股間に生暖かい物を感じる。

 あぁ、どうせ最後だ。もう気にならない。掃除はこいつがしてくれるのだろう…。


「座標特定。耳を塞いで動かないでください。掃射開始」


 声が耳元にしたと共に爆音。動かないでって怖くて動けないから大丈夫。

 聞き覚えのある声がしたと共に意識が遠のく感じもした。極限の恐怖から解放されると本当に気絶してしまうんだと思ったよ。

思いつかぬ。読んでくれたら幸いです。

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