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回想列車

作者: コング


2016年9月23日午前0時10分

三味傘駅

意味もなく何本の電車を乗り過ごしただろう


この駅について

はや二時間はたっている


もう、涙はでない


私はつい二時間前この場所で

彼女にふられた


もう30過ぎ

彼女が最後の希望だった


そんな最後の希望にあまりにも軽々とした終わりを告げられた


別れを告げられてから二時間

僕はずっとこの駅にいる


今までの彼女の思い出と自分の人生を振り返っていた。


時計は12時をすぎ

終電の電車が駅に到着した。


私はその電車すらも乗り過ごした


そして、眠りについてしまった。


お客さん、お客さん。お客さん!


その声に目を覚ました。

おそらく駅員だろう


もう、なにしてるんですか仕事を増やさないでください


駅員は深く帽子を被りあまりはっきりと顔は見えなかったが

怒っている様子だった


ふと時計を目にやると夜中の2時過ぎをさしていた。

私は焦りここから自分の駅まで帰り道を駅員に聞いた。

すると駅員は


え?あぁまだ、電車ありますよ


私は耳疑ったそんなはずがない

私が眠りにつく前確かに終電は見過ごしたはず…


すると線路の奥のすべてが吸い込まれそうな暗闇から大きな音がきこえ

次第にその暗闇から光が漏れ

電車が到着した


本当に電車があったのだ


さ、これが最後の電車です

ご乗車ください。

山本さま。


なぜだ、色々聞きたいことがあったが。

電車があるのは間違いない。

私は駅員に促されるままに乗り込んだ。


電車の中は誰もいない妙に静かな車内


私は警戒しながら窓際の席にすわった。


すると同時にドアがしまり

大きな音をたてて電車は出発した。


やはり変だこの電車こんな時間に電車があるはずがない。

本当に目的地につくのだろうか


私はそんな疑問かかえながらも窓の外をながめた

窓に映る目が腫れた自分の顔をみて。


再び彼女のことを思い出してしまった。


はぁ


私はため息をついた。

すると窓の外が突然輝きだし目の前には

あるひとつの高校が浮かび上がった


私はその独特の作りの学校。

すぐにわかった。


私の母校だ。

電車は徐々に学校に近づいた。

そこには若かりし頃の私と

彼女の姿があった。


そう、彼女との出会いは高校の時だった

同じ部活で

はじめはお互い友達だと思っていたが。

次第に惹かれあい

私から告白したのだ

あの時の彼女の笑顔は今でも鮮明に私の脳にこびりついている。


はぁ


私はまた、ため息をついた


するとまた窓の風景は変わり

次はとあるカフェが浮かび上がる


この場所もすぐにわかった

彼女の大学時代のバイト先だ


頭が良かった彼女は大学に進学した

私は高校卒業後すぐに就職したがあまり長く続かず

職を転々しながら

ほぼ毎日彼女のバイト先のカフェに来ていた。


彼女と初めてケンカしたのはこの時だ

お互いの気持ちがすれ違い

ケンカが多くなった。

私はその度に自分の愚かさを恥た。


はぁ


また私はため息をついた


するとまた、風景はかわり


ある、アパートが映った。


ここは私と彼女の同棲している部屋だ。


彼女は大学を卒業しアパレル関係の仕事に就職した。


私もこの頃はやっとひとつの仕事におちつき

これからの2人で頑張っていこうと

お金を出しあって

2人で借りたアパート

決して楽な生活ではなかった。

それでも彼女がいればそれだけで幸せだった


はぁ


また、ため息をつく


するとさっきの駅が映る。


これはつい先程の光景だ


彼女は泣き去っていく


この頃の私は彼女に必要に結婚を迫られていた

でも、私は仕事が安定するまでもうちょっとまって

と何かと話をごまかしていた


それが彼女に振られた理由だろう


いつまでも子供でいないで

はやく大人になって


彼女に言われたこの言葉は

あまりにも深く僕の心を傷つけた


それと同時に僕のなかから何かが抜け落ちたような気がした。


はぁ


また、ため息をつくと


そこにはさっきの駅の様子が再び浮かび上がった

だが様子がちがう

どうやら何か事故があったらしい

電車は近づき私は様子をじっくり見ていると

おどろきの光景が浮かび上がった


線路の上には首から下のない私の顔


それを見て泣き叫ぶ彼女


一体どうゆうことだ


がたんっ


突然電車がゆれ

私は現実の世界に引き戻された


すると先程の駅員が私の隣にいつの間にか座っていた


おどろきましたか?

これがあなたの人生の最後です

あなたは先程の駅で

彼女に振られたあと。

終電の電車が来る線路に飛び込み自殺をしました。

すぐに連絡を受けた彼女さんは

すぐに駆けつけ

私のせいだと

大変悲しんでいたそうです。


私は状況が理解出来ず

言葉がでなかった


すると駅員は

まあ、理解できないのも仕方がないでしょう

だってあなたはまだ、魂は生きているのだから

だからこうやってこの

回想列車に乗って

『 あの世』に送られているのです。


ちょっとまて、俺はもう本当に死んだのか


私は信じることができなかった


えぇ、あなたは確かに死にました

あの駅で

電車に飛びこみ

自ら命をたちました


そんな、


私は現実を受け止めたわけではないけれど

涙が止まらなかった

とめどなくながれだす涙を止める術を私にはわからなかった

もっと、生きたかった。


いま、もっと生きたかったなんて思ってます?

まあ、そりゃそうですよね

失ってから気づくものはあまりにも大きいですよね


でも、もう無理です。

生き返る事はできません。

過去は必ず変える事はできませんから。


私は泣きつづけた


あなたはこれから生まれ変わります

何に生まれ変わるか。

選んでもらいます。

ただし。人間はむりです。


この中から選びなさい


駅員は

泣きじゃくる私に半ば無理矢理カードを3枚渡してきた

私はそんなことを冷静に考えることができるはずもなく


てきとうにカードをひいた。


おや、猫のようですね。


では最後に質問ですこれは非常に大事な質問ですので覚えておいてください。


突然駅員の口調がかわった


私も泣きながらも駅員の話をきいた。


あなたは

この、人間だった頃の記憶を消しますか?

それとも、残したまま猫に生まれ変わりますか?


私は今までの記憶のすべてが走馬灯のようによぎった。

答えはひとつしかなかった


残します。


すると電車は光に包まれ彼の体を

様々な光がまとわりついた

宙に浮かび上がったところで彼は気を失った。



2016年9月23日午前2時17分

三味傘駅に。

1匹の猫が舞い降りた

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