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異世界詐欺師のなんちゃって経営術【SS置き場】  作者: 宮地拓海


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【書き下ろし】ナタリアプレゼンツ、ミリィと行くピクニック、時々レジーナ

――陽だまり亭・早朝


ナタリア「おはようございます、ヤシロ様」

ミリィ「ぁの……ぉはよう、てんとうむしさん」

ヤシロ「なんだ? 珍しい組み合わせだな」

ナタリア「実は、ヤシロ様。私たちと共に行っていただきたい場所があるのです」

ヤシロ「なんだ? 何かトラブルか?」

ミリィ「ぅうん……そういうんじゃないんだけど……」

ヤシロ「じゃあ、どこに行くんだよ?」

ナタリア「ピクニックです」

ヤシロ「…………ん?」

ナタリア「お弁当も作ってきました」

ヤシロ「……いや、なんで急に?」

ナタリア「道中、みんなで歌う歌も作ってきました!」

ヤシロ「無駄なとこに労力割いてんじゃねぇよ!」

ナタリア「作詞:エステラ様。作編曲:私です」

ヤシロ「エステラも協力したのか!?」

ナタリア「いえ。エステラ様の寝言に勝手にメロディを付けました」

ヤシロ「なんか物凄く興味湧いてきたな!? ちょっと歌ってみたい俺がいるよ!」

ミリィ「ぁのね、なたりあさんと、『お散歩は気持ちいいね』って話をしてたら……いつの間にかピクニックに行くことになってて……」

ヤシロ「んで、いつの間にか俺まで巻き込まれたわけか」

ミリィ「ぅん……決定事項だって……」

ナタリア「さぁ行きましょう。ヤシロ様には、息抜きが必要だと思うのです」

ヤシロ「いや、俺はそこまで根を詰めてはないけどな」

ナタリア「ご同行いただけない場合、ミリィさんのお顔にユニークな落書きをします」

ミリィ「ぅええっ!?」

ナタリア「さぁ、どうされますか!?」

ヤシロ「お前は、やり口が汚いよな……」

ナタリア「では決定ということで。さぁ、参りましょう」

ヤシロ「しょうがねぇな。じゃあ付き合ってやるよ」

ミリィ「ぃいの? ぉ仕事、忙しくない?」

ヤシロ「まぁ大丈夫だろ。ウチは従業員が充実しているからな」

ミリィ「ぅん。そうだね」

ナタリア「我が館も、かなり充実しておりますよ」

ヤシロ「そこのトップが遊び呆けてんじゃねぇか。しっかり働けよ給仕長!」

ナタリア「たまの息抜きはいいんだもん! ぷぅ!」

ヤシロ「なに!? どっから出てきたの、そのキャラ!?」

ナタリア「ヤシロ様は、こういうのがお好きと伺ったもので」

ヤシロ「誰がそんなデマを……あぁ、いや、いい。言わなくてもだいたい想像がつく」

ナタリア「では、話もまとまったところで、参りましょうか」

ヤシロ「まとまったかどうかはさておき……どこに行くつもりだ?」

ナタリア「私のおすすめの場所でも構いませんか?」

ヤシロ「ミリィを連れて行ける健全な場所ならな」

ミリィ「ふぇ!? そうじゃない可能性ってある、の?」

ナタリア「大丈夫です。ミリィさんも行ったことのある場所ですので」

ヤシロ「健全な場所なんだな?」

ナタリア「では、参りましょう」

ヤシロ「おい、答えろ! そこ一番重要だから!」


――ナタリア、先頭を歩く。ヤシロとミリィ、それに続く

――四十二区を歩く一行


ナタリア「♪大変だ、笑うイチゴが追いかけてきた~♪(折角のBカップが萎んでいくよ~)(←コーラス)」

ヤシロ「……どんなカオスな夢を見てんだよ、エステラ…………」

ミリィ「た、楽しそうな夢、だと、思う……ょ?」

ヤシロ「じゃあ、今晩ミリィが同じ夢を見るように祈っておくよ」

ミリィ「ぅ…………ぁの、ごめんなさい、やめてほしい、かも」

ナタリア「というわけで、到着です」

ヤシロ「……って、お前。ここ……」


――薬剤師ギルド・店の前


ヤシロ「レジーナの家じゃねぇか!」

ナタリア「ミリィさんが来たことがある、おすすめスポットです」

ヤシロ「確かに、ここじゃあ『健全』だとは絶対言えないわな」

ナタリア「ここはいいですよ。スリルとサスペンスがあります」

ヤシロ「ピクニックには不向きだろう、その雰囲気!?」

ナタリア「とりあえず、中へ入りましょう」


――店のドアを開く


レジーナ「♪くしゃみをしたら、鼻から巨大なイチゴが~♪(そのイチゴの中からもう一人のボクが~)(←コーラス)」

ヤシロ「流行ってんの、その歌!?」

レジーナ「ふぁあっ!? な、なんやのんな、急に!? 驚かさんといてんか!」

ナタリア「レジーナさん。お邪魔いたします」

レジーナ「邪魔すんねんやったら帰ってんか~」

ナタリア「………………は?」

ヤシロ「いや、そこは乗るなり突っ込むなりしてやれよ! ドン滑りじゃねぇか、レジーナ!」

ナタリア「ここを誰の家だと思っているのですか?」

ヤシロ「レジーナの家だよ! お前は客! つか、招かれてないから客ですらない部外者!」

ナタリア「酷いこと言うと泣いちゃうんだから! ぷぅ!」

ヤシロ「だから、それやめろ!」

レジーナ「あれ? 自分、こういうキャラ好きやろ?」

ヤシロ「あぁ、やっぱり出所はここだったか……なんだろう、今すぐお前らに正座させたい」

ナタリア「そして、痺れた足をつんつんして、悶える私たちを見てはぁはぁするのですね、分かります!」

ヤシロ「分かってねぇよ、お前は何も!」

レジーナ「足痺れて動かれへん隙に『ぽぃ~ん!』やろ? 分かるで!」

ヤシロ「だから分かってねぇって、なんも!」

ナタリア「ミリィさん。気を付けてください。ヤシロ様に近付くのは危険です」

レジーナ「せやで。気ぃ付けな迸るフェティシズムの餌食にされるさかいな」

ミリィ「ぇ……ぁの……」

ヤシロ「とりあえずミリィ。こいつらみたいな大人にだけはなるな」

ミリィ「ぅん……気を、つける……ね?」


――ヤシロ、ミリィをナタリアとレジーナから遠ざける


レジーナ「ほんで、なんやのんな。急にウチに来て」

ナタリア「ピクニックです」

レジーナ「嫌や! ウチは行かへんで!」

ナタリア「そうおっしゃることを見越して、ここが目的地です」

レジーナ「な、なんやて!? ……ピクニックにそんな裏技が……!?」

ヤシロ「ねぇよ」

レジーナ「ウチ……人生初ピクニックや……」

ヤシロ「家から一歩も出ないで何がピクニックだ」

ミリィ「で、でも、なんだか嬉しそうだよ、れじーなさん」

レジーナ「しゃーないなぁ。ウチも付き合ぅたるわ、ピクニック!」

ヤシロ「ピクニックの定義ってなんなんだろうな?」

ナタリア「みんなで集まって美味しいお弁当を食べる。それだけで楽しいではないですか」

ヤシロ「くっ……ナタリアのくせに正論を」

ナタリア「それにですね……」


――ナタリア、照れ隠しに咳払いをする


ナタリア「ここにいるのは、仕事の関係で陽だまり亭になかなか行けない人たちなのです。何かがあって、みなさんが集まる時でも、その集まりに参加出来ないことがあるメンバーなのですよ」

ミリィ「なたりあさん、領主様のお屋敷を守らなきゃいけないもんね」

レジーナ「ウチも……ここを離れられへん理由があるしな……」

ヤシロ「お前のはただの出不精だけどな」

ナタリア「ミリィさんも、いろいろ忙しくてなかなか遊ぶ時間が取れていないのではないですか?」

ミリィ「……ぅん。そう言われてみれば、そうかも」

ナタリア「私も含めてみなさん、ヤシロさんと遊びたいと思っているのですよ」

レジーナ「せやな。たまには遊んでもらわなな」

ミリィ「ぅん。みりぃも、てんとうむしさんとぉ話、いっぱいしたい」

ヤシロ「お前ら……」

ナタリア「そして、私も含めてみなさん、ヤシロさんの鎖骨のくぼみをペロペロしたいと虎視眈々と狙っているんですよ」

ヤシロ「それ、お前だけだよ! つか、狙うな!」

レジーナ「ウチは、耳たぶをはむはむしたいなぁ」

ヤシロ「便乗するな!」

ナタリア「ミリィさんは?」

ミリィ「へっ!?」

レジーナ「何したい? 何させたい?」

ミリィ「ぇ……ぁの……ぇっと………………ぅ、腕の血管を、ぷしぷししたい……かも」(顔真っ赤)

ナタリア・レジーナ「「……マニアック」」

ミリィ「ぅぇえ!? みりぃが変なの!? 二人よりマシだと思う……ょ?」

ヤシロ「とりあえず全員、俺から一歩離れてもらおうか」

ミリィ「ぁうっ! みりぃも含まれた…………」

ナタリア「それよりも、お弁当を食べましょう。ピクニックなのですから」

ヤシロ「ピクニック感ゼロだけどな。室内だし」

ナタリア「早起きをしてお弁当を作ってきたんですよ? 一口、味見をお願いします」


――ナタリア、サトイモの煮っ転がしを器用に箸で摘まみ、ヤシロに「あ~ん」と食べさせる


ヤシロ「(もぐもぐ)…………ん! 美味いな!」

ナタリア「でしょう? 自信作なのです」

ヤシロ「甘さもしつこくないし、煮込み加減もバッチリだ。これなら何個でも食えるな」

ナタリア「そうおっしゃると思って、本日お持ちしたお弁当、計四つ、中身はすべてサトイモの煮っ転がしです!」

ヤシロ「バカなの!?」

ナタリア「これが一番得意なんです!」

ヤシロ「いろんなもん入れてこいよ! バランスを考えてさぁ!」

ナタリア「ピクニックといえば現地調達ではないですか!」

ヤシロ「そんなサバイバルなピクニックしたことねぇよ!」

ミリィ「ぁの……じゃあ、今からなにか作る? みりぃ、あんまり上手じゃないけど、なにか作ろうか?」

レジーナ「いや、ウチに任しとき。こう見えて、一人暮らしが長いさかいな」

ヤシロ「いや、一人暮らしが長いようにしか見えねぇけど」

レジーナ「ほなら、ちょこ~っと待っとってな~」


――レジーナ、店の奥――住居スペースへと入っていく

――直後、そちらから『ぎゃぁぁあああ!』という野太いオッサンの悲鳴


レジーナ「お待たせ~! 新鮮マンドラゴラのぶつ切りあんかけ……」

ヤシロ「その皿を持って今すぐキッチンへ引き返せ!」

レジーナ「なんでなん!? 見た目は悪いけど、味は微妙やで!?」

ヤシロ「いいとこなしか!?」

レジーナ「栄養価は高いで!」

ヤシロ「それは、見た目と味を覆せる要因にはならねぇよ!」

ミリィ「ぁの……やっぱり、みりぃ、なにか作る?」

ナタリア「血管をぷしぷししながらですか?」

ミリィ「ぁぅう! やめて、なんか恥ずかしいから、それ、もう言わないで……っ」

レジーナ「せやかて、お弁当があらへんかったらピクニック感出ぇへんやんか」

ヤシロ「目的地がここな時点でピクニック感はゼロだけどな」

ナタリア「でしたら、私にいい考えがあります」

レジーナ「なんやのん?」

ヤシロ「聞くだけは聞いてやる」

ナタリア「美味しいお弁当を食べるために…………陽だまり亭に行きましょう!」

ヤシロ「結局そうなるのかよ!?」

ミリィ「ぁ……でも、じねっとさんのご飯、ちょっと食べたくなってきた、かも」

レジーナ「せやなぁ……ウチも珍しく、外食でもしよかな」

ナタリア「では、ピクニックの続きは陽だまり亭で行うとしましょう」

ヤシロ「だから、それピクニックじゃないから!」


――その後、みんなで美味しいご飯を食べましたとさ。







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