【書き下ろし】マグダの母親代わり
――教会・午前
子供「まぐだおねーちゃーん!」
女児「あそんでー!」
幼女「でー!」
ハムっ子「あたしの屍をこえていけー!」
マグダ「……望むところ。掛かってくるがいい」
――マグダが身構えると子供たちが飛びかかる
マグダ「……脇が甘い」
女児「きゃっきゃっきゃっ! くすぐったーい!」
ハムっ子「すきありー!」
マグダ「……マグダに隙はない(尻尾で『ぺしー』)」
ハムっ子「はぅっ!(顔を『ぺしー』ってされて『ころーん』)」
ベルティーナ「うふふ。みんな、マグダさんが本当に好きですねぇ」
メドラ「よ~ぅ! ちょいと邪魔させてもらうよ」
ベルティーナ「あら、メドラさん。支部へご用事だったのですか?」
メドラ「いや。今日はあの子に用事があるのさ」
ベルティーナ「マグダさんに?」
メドラ「あぁ。母親代わりとして、ちょいとね」
ベルティーナ「まぁ。そうですか……うふふ。それは、最優先事項ですね」
メドラ「分かってくれるかい? さすが、同じ『母親代わり』だね」
マグダ「……異議あり(背後から『スッ……』)」
メドラ「おっ、気配を消してきたね。やるじゃないか! で、何が異議だって?」
マグダ「……同列に語るのはシスターに失礼。聖母と魔神ではふんころがしとフンくらいの差がある」
メドラ「はっはっはーっ! 言うじゃないかマグダ!(頭を『ぐりぐり』)」
マグダ「……最近『トラっ娘』から新密度がアップした……」
メドラ「我が子の名を覚えるのは母として当然だろう?」
マグダ「……ママ親『代わり』」
メドラ「ふふん。そこは譲れないんだっけねぇ? まぁいい。代わりでもなんでも、アタシはあんたの母親だ! 母親ってのは、子供に煩わしいと思われてもなお世話を焼くのが仕事ってもんなんだよ」
ベルティーナ「その意見には同意しますね」
マグダ「……彼氏が出来たら身辺調査をされそう」
メドラ「当然だろぅ!? ウチの娘にちょっかい出す男は、徹底的に叩いて埃が出ないかどうか調べさせてもらうつもりだよ」
マグダ「……メドラママが徹底的に叩くと、出るのは内臓。……おそらく、鼻から」
メドラ「はっはっはっ! 相変わらず冗談の上手い娘だねっ!」
マグダ「……これを冗談だと思うのは、本人のみ」
子供たち「「「めどらままー!」」」
メドラ「おぉ? はっはっはっはっ! 子供らに懐かれるのは嬉しいねぇ。だけど、アタシを『ママ』と呼んでいいのは狩猟ギルドの子たちだけなんだよ。悪いねぇ」
子供「じゃーなんて呼べばい~い?」
メドラ「メドラおねーさんだ! さぁ呼んでごらんな!」
子供たち「「「…………」」」
メドラ「どうした? 声が小さいよ!?」
マグダ「……小さいのではなく出ていない。幼い子供たちの心に過度のストレスを与えることは許容出来ない」
メドラ「なんだい? それじゃあ、『メドラちゃん』とでも呼びな」
子供たち「「「めどらちゃ~ん!」」」
メドラ「はははっ! 可愛いもんだねぇ! アタシの小さかった頃にそっくりだ!」
子供たち「「「…………」」」
マグダ「……学習して、メドラママ。子供たちに過度のストレスを与えるのは止めるべき」
メドラ「なんだい? やっぱりシスターベルティーナみたいな、アタシの半分くらいしか体重がないような大人になりたいんかい?」
マグダ「……さらっと厚かましい嘘を吐かないでほしい。正確には、十分の一あるかないか」
メドラ「いくらシスターベルティーナでも、そこまでガリガリじゃないだろう? なぁ?」
ベルティーナ「うふふ」
マグダ「……なぜ自分が重いという発想を持てないのか……」
メドラ「まぁ、いい! マグダ。今日はアタシがあんたに母親らしいことをしに来てやったよ!」
マグダ「…………昼間の情事?」
メドラ「どこの母親がそんなことしてんだい!?」
マグダ「……ティータイムの陽だまり亭は、そんな話題でもちきり」
メドラ「まったく、専業主婦どもは……今度アタシがビシッと言ってやろうかね!?」
マグダ「……見える。最終的に一番ノリノリで話に加わっているメドラママの姿が……」
ベルティーナ「うふふ。奥様方は噂話がお好きですからね」
メドラ「そんなことよりも、マグダ! アタシがあんたを鍛えてやる!」
マグダ「……鍛える?」
メドラ「あぁ! 娘を強く鍛えるのは母親の仕事だろう?」
マグダ「……確かに」
ベルティーナ「狩猟ギルドではそれが一般的なんですね」
メドラ「あんたなら、ビャッコ人族のアルヴァロをも超えられると、アタシは踏んでるんだよ」
ベルティーナ「大食い大会でマグダさんと対戦した方ですね。確か、狩猟ギルドでも五本の指に入る強さだとお伺いしましたが?」
メドラ「『アタシを除いた』トップファイブにならね」
ベルティーナ「では、六番手なのですね」
マグダ「……それをマグダが超えれば…………マグダが五番手っ」
ベルティーナ「惜しいです。六番手を抜いた人は六番手なんですよ」
マグダ「…………え? いち……に…………」
ベルティーナ「うふふ。また一緒にお勉強しましょうね」
マグダ「……お願いする」
メドラ「なんだい? ダーリンに教わればいいじゃないか」
マグダ「……マグダは常に、ヤシロを驚かせたいと思っている」
ベルティーナ「陰で努力する、『カシコイ女性』を目指しているのだそうですよ」
メドラ「えらい! それでこそウチの子だ! まるで幼い日のアタシそのものじゃないか!」
マグダ「……シスター。先立つ不孝をお許しください……」
ベルティーナ「ダメですよ、マグダさん!? それは冗談でも許容出来ません!」
メドラ「なぁに。プレッシャーを感じる必要はないさ! あんたなら、今から必死にやりゃあ、アタシすらも越えられる!」
マグダ「……マグダは人間でいたい。一生涯」
メドラ「そのために、強くなるのさ! 大切な人の力になれる、『いい女』になるためにね!」
マグダ「……む。…………少し、琴線に触れた」
メドラ「それじゃあ、アタシの特訓、受けるかい?」
マグダ「……夕方のピークまでの間で、なら」
メドラ「じゃあそれまでみっちり鍛えてやるよっ! 付いておいで!」
――メドラ、物凄い脚力で『どびゅーん!』と、とんでもないジャンプ。見えなくなる
ベルティーナ「あの……メドラさんは、アレに、付いてこいとおっしゃったのでしょうか?」
マグダ「…………また、無茶なことを言う」
――マグダ、肩をすくめる
マグダ「……しょうがないので、マグダは行ってくる。また遊びに来るから、それまでいい子にしているように」
子供たち「「「はーい!」」」
ベルティーナ「うふふ。マグダさんはみんなのお姉さんですね」
マグダ「……うむ。そのつもり」
ベルティーナ「では、今度は私にも『母親代わり』をさせてくださいね」
マグダ「…………マグダには、『母親代わり』が多い……店長然り、ヤシロも少し」
ベルティーナ「うふふ。みんな、マグダさんが好きなんですよ」
マグダ「……ふむ。それなら仕方ない。…………また今度、いろいろ教わりに来る…………ベルティーナママ」
ベルティーナ「はい。お待ちしてますね、マグダちゃん」
マグダ「……ちゃんは、ちょっと恥ずかしい」
ベルティーナ「うふふ。いってらっしゃい」
マグダ「……行ってくる」
――マグダ、物凄く高く跳ぶ。が、メドラにはまだ及ばない
ベルティーナ「母親を超えるのはいつの日になるんでしょうね。うふふ」
――子供たちがマグダの真似をしてぴょんぴょん飛び跳ねる様を見つめ、ベルティーナが微笑む




