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異世界詐欺師のなんちゃって経営術【SS置き場】  作者: 宮地拓海


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【書き下ろし】エステラ、切れ者になる

――領主の館

――ロレッタが庭の陰に潜んでいる。手には大きく膨らんだ紙袋



ロレッタ「むふふ。この紙袋を割って、エステラさんをビックリさせてやるです。今日のためにエステラさんの行動パターンを調べて、こっそり、しっかり、たっぷりと準備してたですから、きっと上手くいくはずです」


――ロレッタの調べた時刻通りにエステラが庭へと姿を現す

――ロレッタ、身を潜めて機会を窺う


エステラ「あぁ……ロレッタ、新しい街でもちゃんとやってるかなぁ」

ロレッタ「出て行ってないですよっ!?」(物陰から飛び出してくる)

エステラ「わぁ、びっくりしたな~、ろれった、そんなところにいたのかい?」

ロレッタ「棒読みなこと山の如しですよ!?」

エステラ「ここ数日、君がボクの身辺を嗅ぎ回っていると聞いたから、何を企んでいるのかと思ったら……実に君らしい普通なイタズラだね」

ロレッタ「普通じゃないです! 物凄く緻密に計算された高度なイタズラです!」

エステラ「その緻密な計算がバレバレだったんだよ」

ロレッタ「むぅ……エステラさんは鋭過ぎるです」

エステラ「君が分かりやす過ぎるんだよ」

ロレッタ「いいえです! エステラさんはお兄ちゃんと同類です! さっきの仕返しもお兄ちゃんとそっくりです!」

エステラ「やめてくれる……ヤシロと同列にするの……割とマジメに」

ロレッタ「はぅっ!? エステラさんがちょっと泣きそうな顔してるです!?」

エステラ「そもそも、紙袋を割ったくらいでボクは驚かないよ」

ロレッタ「そんなことないです! この紙袋、凄く大きな音がするですから絶対ビックリするです!」

エステラ「ボクは精神の修行をしているからね。そういうのは平気なんだよ」

ロレッタ「それじゃあ、試しに割ってみるです! きっとビックリするです!」

エステラ「ふふん。やってごらんよ」

ロレッタ「ではっ!」


――ロレッタ、紙袋を思いっきり叩き割る。……と、中からぬるっとした謎のゲルが迸る


ロレッタ「ふにゃぁぁああああっ!?」

エステラ「ふぉう!? ビックリしたっ!?」

ロレッタ「な、なな、なんですかこのぬるぬるしたヤツ!? 気持ち悪いですっ!?」


――ロレッタの手にぬろぉ~んとしたゲルが付着している。ロレッタ半泣き


エステラ「何って……君が用意したんだろう?」

ロレッタ「実は……これを割ればエステラさんが絶対ビックリするからって、お兄ちゃんに渡されたです……」

エステラ「く……ヤシロが裏で糸を引いていたのか……」

ロレッタ「陽だまり亭で、急に『パンッ!』ってされて『にゃっ!?』ってなって、『ぷんすかぷん!』って言ったら『じゃあお前もやってこいよ、エステラあたりに』って言われて、そのためにやっておくべき下準備とかも教わったです……」

エステラ「つまり……ここ数日の張り込みも、すべてヤシロに指示されてやってたんだね」

ロレッタ「はいです……お兄ちゃん直伝なので、完璧だと思ったです……」

エステラ「なるほど……つまり、ボクたちは二人揃ってヤシロの術中に嵌ったってわけだね」

ロレッタ「はっ!? あたし、利用されたですか!?」

エステラ「これは視点ずらしだよ。君は、自分がターゲットであるにもかかわらず仕掛け人だと錯覚させられた。そしてボクは、仕掛け人がロレッタだと思い込まされた……まんまとやられたね」

ロレッタ「むぅう! 悔しいですっ! お兄ちゃんにも何かイタズラを仕掛けてやりたいです!」

エステラ「何かって、具体的には?」

ロレッタ「店長さんが寝ている間に、胸をサラシで押さえつけておっぱいが縮んだと思わせるです! たぶんお兄ちゃん、ショックで幽体離脱するです!」

エステラ「いや、しそうだけども! 驚き過ぎだろってくらい驚きそうだけども! ……ただ、アレを押さえつけられるだけの強度を持つ布が、四十二区には存在しないんじゃないかな……?」

ロレッタ「…………ノーマさんに協力を仰げば……」

エステラ「鉄!? 鉄に頼らなきゃ無理なレベルなのかい、ジネットちゃんの胸!?」

ロレッタ「むむむぅ……! 何か、何かないですかね!?」

エステラ「ボクに聞かれてもなぁ……」

ロレッタ「お兄ちゃんに対抗出来るのは、エステラさんの頭脳と店長さんのおっぱいだけです!」

エステラ「同列かぁ……凄く高評価な気もするけど、素直に喜べない自分も否定出来ない!」

ロレッタ「何かないですか!? 切れっ端のエステラさん!」

エステラ「切れ者って言いたかったのかな!? 凄く違うから気を付けてね!?」

ロレッタ「はぅっ!? 切れ者がキレたです!?」

エステラ「まったくもう…………あ、そうだ。だったらこういうのはどうかな?」

ロレッタ「なんです、なんです!? 聞きたいです!」

エステラ「ヤシロの策略を逆に利用するんだ」

ロレッタ「逆に? ……な、なんかわくわくするワードですね!?」

エステラ「ボクを驚かせるのに成功したって、凄く嬉しそうに報告するんだ。するとヤシロは、『あれ? ロレッタに仕掛けたイタズラは失敗したのか?』って思うだろ?」

ロレッタ「ふむ、思うですね。きっと」

エステラ「そうしたら、きっと失敗した原因を調べるために『紙袋を見せろ』って言うと思うんだ」

ロレッタ「言いそうです!」

エステラ「そこで、あらかじめそのぬるぬるを仕掛けた紙袋で、ヤシロを引っ掛けてやればいいんだよ」

ロレッタ「調べようとしたら、お兄ちゃんに全部かかるようにしておくんですね!? それはナイスアイディアです!?」

エステラ「ボクを驚かせたのも嘘じゃないし、君は『自分が驚いた』ことだけ黙っていればいいんだよ」

ロレッタ「完璧です、エステラさん! 凄いです!」

エステラ「まぁ、これくらいはね。伊達にヤシロと一年もやりあってないからさ」

ロレッタ「さすが、お兄ちゃんが『空気抵抗であいつに敵うヤツはいない!』と言い切るだけのことはあるです!」

エステラ「……ロレッタ。それは、ボクの胸が真っ平らだっていう悪口だから、二度と口にしないで……そしてヤシロはあとで殴る!」

ロレッタ「では、その怒りも全部ひっくるめて、お兄ちゃんを騙しに行くです!」

エステラ「よし! 上手くやろうね!」


――紙袋に仕掛けを施して、二人揃って陽だまり亭へ

――陽だまり亭

――庭にヤシロが一人で立っている


ロレッタ「お兄ちゃん! エステラさんを驚かせることが出来たですよー!」

ヤシロ「あれれ~、おかしいなぁ? ロレッタに仕掛けたイタズラは不発だったのかなぁ? なんで失敗したか調べたいから、そのイタズラを仕掛けた俺が逆にイタズラに引っかけられてぬるぬるまみれにされちゃうような仕掛けが施されている紙袋を見せてくれないか?」

ロレッタ「もろバレです!? 物の見事に全部バレてるですよ、エステラさん!?」

エステラ「くっ……こういう流れになることもお見通し……いや、そうなるように誘導されていたのか……考えてみたら、仕返しの仕掛けがやりやすそうな構造だったよね、くそぅ!」

ロレッタ「やっぱり、エステラさんがお兄ちゃんに敵うのは、空気抵抗だけだったです!」

エステラ「そこはイーブンだよ! ……誰が男とイーブンだ!?」

ヤシロ「ふふん! まだまだ甘いな」

ロレッタ「むぅ……悔しいです」

エステラ「まったく。くだらないことにばっかり力を使って……」

ヤシロ「とはいえ。しっかり時間を稼いでくれて助かったぜ」

エステラ「時間?」

ロレッタ「稼ぐ?」

ヤシロ「入ってみろ」


――ヤシロ、ドアの前から退き、ロレッタに入店を促す

――ロレッタ、恐る恐るドアを開ける


ジネット「ロレッタさん、入店一周年、おめでとうございますっ!」

マグダ「……おめでとう」


――ヤシロ特製、火の粉と光の粉製のクラッカーが鳴る


ロレッタ「にょぉお!? な、なんです、これ!?」

ジネット「今日で、ロレッタさんが陽だまり亭に来てちょうど一年なんですよ」

マグダ「……今日は記念日」

ロレッタ「え? へ? あの……」

エステラ「なるほど……これの準備のために、ロレッタをボクに預けたってわけだね」

ヤシロ「あぁ。ロレッタは割と几帳面でな、毎日決まった時間店をあけてくれるから準備が捗ったぞ。予測も立てやすいしな」

ジネット「さぁ、ささやかですけど、パーティーを始めましょう!」

マグダ「……今日はロレッタが主役。マグダを撫でる権利を授ける」

ロレッタ「う…………ぅぇええええん! 店長さん! マグダっちょ~!」


――ロレッタ、ジネットとマグダに抱きつく


ロレッタ「ビックリしたですぅ~! けど、すっごく嬉しいですぅ~!」

ジネット「よしよし」

マグダ「……よしよし」


――その光景を眺めてほくそ笑むヤシロとエステラ


エステラ「大成功、ってところかい?」

ヤシロ「おかげさまでな」

エステラ「それなら、ボクにも言っておいてくれればよかったのに」

ヤシロ「敵を騙すにはまず味方からってな」

エステラ「ボクも用意を手伝いたかったなぁ」

ヤシロ「お前はそんなに暇じゃないだろう」

エステラ「でもさぁ……」

ヤシロ「それに……、ほい」

エステラ「へ?」


――ヤシロ、ポケットから小さな箱を取り出してエステラに渡す

――可愛いラッピングのされた小箱


ヤシロ「お前も主役の一人だからな」

エステラ「ボ、ボク? えっと…………心当たりが、ないんだけど?」

ヤシロ「エステラ……」

エステラ「は、……はい(ドキドキ)」

ヤシロ「おっぱい」

エステラ「……は?」

ヤシロ「コンマ2ミリの成長、おめでとう!」

エステラ「わざわざ祝われるほどのことじゃないよ!? っていうか、なんで知ってるのさ!?」

ヤシロ「一年に及ぶバストアップ体操の成果、コンマ2ミリ!」

エステラ「うっさい! ボクは大器晩成型なの! この後ググッと急成長する予定なの!」

ヤシロ「成長したら、お前の望むものをなんでもプレゼントしてやるよ」

エステラ「よぉし言ったな!? 絶対だからな!? ボクは何年経っても忘れないからね、今の言葉!」

ロレッタ「あぁ、またエステラさんがおっぱいの話でキレてるです。キレ者です」

エステラ「意味が違ってるよ、ロレッタ!?」

ロレッタ「ほらほら、エステラさん。おめでたいことは一緒にお祝いするですよ!」

エステラ「いや、ボクのはそんなお祝いするようなものじゃ……」

マグダ「……おめでたくもないのなら……、どうか、元に戻りますように……」

エステラ「いや、待とう! お祝いしよう! 盛大に祝ってもらおうかな、こうなったらねっ!」

ジネット「では、お料理をもっと追加しますね!」

ロレッタ「人もいっぱい集めるです!」

マグダ「……今日をエステラの日に制定して祝日に……」

エステラ「それはやめて!」

ヤシロ「やれやれ……ホント。賑やかな店だこと」



――ヤシロ、嬉しそうに口角をニッと持ち上げる






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