【後日譚47話あとがき】パウラ、ピンチを救われキュンとなる
――カンタルチカ
厳つい男(厳男)「だから、なんで出来ねぇんだよ!?」
パウラ「だから、メニューにないものは出せないの!」
厳男「違う違う。よく考えろ、な? 魔獣のソーセージと、厚切りのベーコン、それからサラダ。な? あるよな? これ全部同じ値段だろ? だったら、それを全部3分の1の量にしてよぉ、で、俺が今ここにパンを持ってるからな、これに挟んでくれって、そう言ってるだけじゃねぇか!」
パウラ「だから、無理なんだって! しかも、『魔獣のソーセージと同じ値段で』なんて、図々しいよ!」
厳男「お前さぁ、計算出来るか? 全部同じ値段の三つの料理を3分の1にして一つに合わせりゃ、これ、どう考えたって同じ値段になるだろうが!」
パウラ「ならないわよ!」
厳男「なんだテメェ!? 客からぼったくろうってのか!?」
パウラ「もう、帰ってよ!」
厳男「おうおう! 客を拒否すんのかぁ、この店は!?」
パウラ「他のお客さんに迷惑だから!」
厳男「どこのどいつが迷惑だなんて思ってんだよ? あぁ!? おぅ! 迷惑だと思ってるヤツがいるなら今すぐ名乗り出ろよ、コラぁ!? へへっ、ほら見ろ。どこにも迷惑だなんて思ってるヤツはいねぇじゃ……」
ヤシロ「ん。(挙手して厳男の前へ)」
厳男「……なんだ、てめぇ?」
ヤシロ「『お前を迷惑だと思っているヤツ』だが」
パウラ「ヤシロッ!(表情がパァッと明るくなる)」
厳男「何が迷惑だ、コラ? あ? やんのか、てめぇ?」
ヤシロ「随分高圧的だな」
厳男「ったりめぇだろうが! 俺は何も間違っちゃいねぇ! それをどうこう言われりゃブチギレもすんだろうが、あぁん!?」
ヤシロ「つまりお前は、自分のやっていることは一切迷惑ではないと、そう言うんだな?」
厳男「その通りだろうが!」
ヤシロ「じゃあ、自分がやられても文句はないし、怒りもしないし、まして渋ったり嫌な顔をしたり拒絶したり、そういう拒否反応は一切示さないと、そう言うんだな?」
厳男「ったりめぇだよ! 俺は、何も迷惑な行為はしてねぇからな」
ヤシロ「そうか……ちなみに、飲食店には原価と人件費というものがある。同じ値段だから同じ価値だということはないんだ。それは理解出来るか?」
厳男「んなもん、こっちの知ったこっちゃねぇだろうが! 同じ値段なら、そいつは同じ価値だ!」
ヤシロ「だから、三品を3分の1ずつ合わせたものを同じ価格で提供しろと、そういうわけだな?」
厳男「何かおかしいか!?」
ヤシロ「それにかかる労力も、見た目も、種類も、用途も、名前も、何もかもがまるで別物になっても、『価格が同じなら交換してカスタマイズするのは当然の権利で当たり前だ。むしろそれを渋るなんてことはあってはいけない』と、そう言うんだな?」
厳男「おぉ、そうだよ! 分かってんじゃねぇか」
ヤシロ「『会話記録』
厳男「――!?」
ヤシロ「お前はさっき、自分の行動は迷惑ではないし、同じことをされてもいかなる拒否反応も示さないと言ったな? 言ったよな?」
厳男「そ、それがなんだってんだよ!?」
ヤシロ「ウクリネス」
ウクリネス「はいはい」
ヤシロ「ちょっと聞いていいか?」
ウクリネス「まぁ、ヤシロちゃん。珍しく頼ってくれるんですね。なんでしょう?」
ヤシロ「厳男の着ている服、いくらくらいだ?」
厳男「おい、誰だ、厳男って!?」
ウクリネス「そうですねぇ……ちょっと失礼しますよ(厳男の腕を持ち上げ、脇の縫製、襟周り等を見る)」
厳男「なんだよ、このババァ!?」
ウクリネス「カチンと来る方ですね。まぁ、衣服の汚れすらきちんと落とせない人ならその程度なのでしょうが…………おそらく、この服は三十九区の服屋で売っている物ですね。上が100Rb、ズボンは250Rb。ベルトやカバンといった装飾品はどれもボロボロ過ぎて価値は付かないでしょう」
厳男「な、……なんで分かんだよ、俺が三十九区の服屋で買ってるって……値段までピッタリだ……なんだ、このババア?」
ウクリネス「口が悪いので50Rbずつマイナス査定とします」
ヤシロ「ってことは、上が50Rb、下が200Rbか……パウラ」
パウラ「な、なに?」
ヤシロ「魔獣のソーセージっていくらだっけ?」
パウラ「サイズにもよるけど……20センチのヤツは50Rbだよ」
ヤシロ「確か、皿からはみ出るでっかいベーコンあったろ? アレは?」
パウラ「ビッグベーコンは200Rbだけど…………え、まさか?」
ヤシロ「んじゃ、それとこいつの服を交換しよう」
厳男「はぁ!? 何言ってんだ、テメェ!?」
ヤシロ「だぁかぁらぁ。価値は同じだから文句ないだろう? お前、今すぐ真っ裸になって乳首にソーセージ、股間にベーコンを貼りつけて帰れ」
厳男「出来るか、そんなマネ!? だいたい、なんで俺がそんなこと……――っ!?」
ヤシロ「(腕を真っ直ぐ伸ばし、厳男を指さす)同じことをされても拒否しないんじゃなかったのか?」
厳男「お、同じことじゃ……ね、ねぇ、だろ……」
ヤシロ「それにかかる労力も、見た目も、種類も、用途も、名前も、何もかもがまるで別物になっても、『価格が同じなら交換してカスタマイズするのは当然の権利で当たり前だ。むしろそれを渋るなんてことはあってはいけない』んじゃ、なかったのか?」
厳男「う…………っ」
ヤシロ「さぁ、選べよ。燻製露出狂になるか……カエルになるか」
厳男「あ……ぅ…………」
ヤシロ「それか……今すぐこの店から出ていくか」
厳男「出ていきます! すみませんでしたぁ!(全速力で逃走)」
パウラ「……(唖然)」
ヤシロ「パウラ」
パウラ「は、はい! あ……な、なに?」
ヤシロ「悪かったな、客を一人逃がしちまって」
パウラ「ううん! そんなことない! 凄く助かったよ! あ、ありがとね、ヤシロ。……また、助けてもらっちゃった」
ヤシロ「礼ならウクリネスに言ってやれよ。よくもまぁ他所の店の服まで詳しく知ってるもんだ」
ウクリネス「うふふ……世の中、情報を持ってる者が制するって、ヤシロちゃんを見ていて学びましたからね」
ヤシロ「……え、俺のせい?」
ウクリネス「ヤシロちゃんの『おかげ』ですよ」
パウラ「ね、ねぇ! あたしに何かしてほしいことない? 恩返しっていうか、日頃の感謝のしるしに! なんでもいいよ!」
ヤシロ「じゃあおっぱいを……」
パウラ「それはダメ!」
ヤシロ「ぷくぅぅぅぅううっ!」
ウクリネス「まぁ、ヤシロちゃん。可愛い!」
パウラ「だ、だって…………じゃあ、せ、責任取ってくれるの!?」
ヤシロ「責任……?」
パウラ「そうだよ! 責任! 取れる……の?」
ヤシロ「ふむ………(腕組みして考える)……分かった」
パウラ「へっ!?」
ヤシロ「お前のおっぱいを触ったら、俺は、責任を持って……」
パウラ「え、え……っ(ドキドキ)」
ヤシロ「『パウラのおっぱいは結構凄いぞ!』ってみんなに説いて回るよ!」
パウラ「なんの責任よ、それ!?」
ヤシロ「広報担当者としての責任だ!」
パウラ「広報なんかしなくていいもん! バカァ!」
――パウラ、怒って厨房へ入る
ウクリネス「あらら~、もう。ヤシロちゃんは」
ヤシロ「礼とか、そういうの苦手なんだよ」
ウクリネス「ふふ……私は、ヤシロちゃんのそういうところ、好きですよ」
ヤシロ「ん~…………微妙」
ウクリネス「素直に喜んでくれると、もっと嬉しいんですけどねぇ。……おや?」
――パウラ、足音荒く戻ってくる。ヤシロの前のテーブルに、乱暴にグレープフルーツジュースを置く
パウラ「お礼! ふん!」
――パウラ、再び厨房へ
ウクリネス「律儀ですねぇ、パウラちゃん」
ヤシロ「……だな」
――折角なのでグレープフルーツジュースをいただくヤシロ。ちょっと酸っぱい




