【後日譚40話あとがき】ルシアはやはり『残念な人』
――ルシア邸・ヤシロとハム摩呂の部屋
ヤシロ「いやぁ、買い物してたら遅くなっちまったなぁ……(ドア『ガチャ』)」
ルシア「あぁっ、ハム摩呂たんの寝顔かわゆす! 寝息、いとかわゆすっ!」
ヤシロ「おーい、誰かー! 不審者が侵入してんだけどー!?」
ルシア「はっ!? カタクチイワシッ! 貴様、そこで何をしている!?」
ヤシロ「100%こっちのセリフだわ! ウチのいたいけな少年を汚れた目で見てんじゃねぇよ!」
ルシア「なら今日からこの子はウチの子だ!」
ヤシロ「やらん!」
ルシア「まぁ、落ち着け。何も、とって食おうというわけではないのだ……じゅるっ」
ヤシロ「『精霊の審判』使ってもいいかな!?」
ルシア「私をカエルにするつもりか!?」
ヤシロ「やっぱり嘘だったか、コノヤロウ!?」
ルシア「カエルになったら、四十二区の湿地帯へ逃げのび、そこで息を潜めて暮らしつつ…………ご近所さんになったハム摩呂たんやミリィたんと仲良く暮らして…………さぁ、『精霊の審判』を使うがいい!」
ヤシロ「絶対しない! お前には何があっても『精霊の審判』は使わねぇ!」
ルシア「どうしていつも邪魔ばかりをするのだ、お義父さん!?」
ヤシロ「俺はハム摩呂のオヤジでもないし、お前の親になるつもりもないし、ハム摩呂をお前にやるつもりもないっ!」
ルシア「貴様がその気なら……こちらにも考えがあるぞ! ギルベルタ!」
ギルベルタ「既にこの部屋に忍び込み潜んでいる、私は(カーテンの裏から『スッ……』)」
ヤシロ「不法侵入のメッカかっ!?」
ルシア「ギルベルタ、カタクチイワシを捕らえろ!」
ギルベルタ「どうするつもりですか、捕らえた後、友達のヤシロを」
ルシア「カタクチイワシと既成事実を作るのだ!」
ギルベルタ「了解した、私は!」
ヤシロ「了解すんな! 何言ってんの!?」
ルシア「貴様がギルベルタに手を出したとなれば、貴様だけを追い出す口実が出来るからな!」
ヤシロ「お前はそれでいいのかよ!? 大切なギルベルタなんだろ!?」
ルシア「貴様を追い出した後『消毒』と称して、ぺたぺた触りまくれて一石二鳥だっ!」
ヤシロ「何よりまず、お前が摘まみ出されろ!」
ルシア「やかましい! 所詮貴様も男……ギルベルタの全力の誘惑には抗えまい!」
ギルベルタ「……あっはん」
ヤシロ「それがお前の全力か、ギルベルタ!?」
ルシア「あぁん……くらくらするっ!」
ヤシロ「変態ばっかだな、ここ!? あ、ごめん。お前だけだったわ、変態!」
ルシア「そもそも、貴様はズルいぞ! こんなに可愛い獣人族に囲まれて! 私も混ぜろ! そしてお前は出て行け!」
ヤシロ「おぉ、これが侵略者の思考回路か、怖ぇなぁ~」
ギルベルタ「……うっふん」
ヤシロ「あ、ギルベルタ。もういいから、それ」
ギルベルタ「魅了完了とみなす、私は、友達のヤシロを」
ヤシロ「物凄く不本意だけど、まぁ、それでいいや」
ギルベルタ「……大人になった、私は」
ヤシロ「お前の『大人の階段』低ぃ~なぁ……」
ルシア「よし分かった。いささか不服ではあるが……交換条件に応じてやろう」
ヤシロ「上から目線のところ悪いんだが、こちらがお断りだ」
ルシア「貴様の望むものをくれてやるから、ハム摩呂たんをくれ」
ヤシロ「嫌だっつってんだろ」
ルシア「じゃあミリィたんもつけてくれっ!」
ヤシロ「要求上がってんじゃねぇか!?」
ルシア「さぁ、望みのものを言え!」
ヤシロ「(望みというなら、今すぐこの変態を摘まみ出してほしいところだが……そんなことでハム摩呂をくれてやるわけにはいかないしな……)」
ルシア「どうした? 何が貴様の望みだ?」
ギルベルタ「ルシア様」
ルシア「なんだ、ギルベルタよ」
ギルベルタ「望みはいつも一つ、友達のヤシロは」
ルシア「それはなんだ?」
ギルベルタ「おっぱいが大好き、友達のヤシロは」
ルシア「なにっ!?」
ヤシロ「いや、まぁ……好きだけど」
ルシア「わ、わわ、私のおっぱいを好きにさせろと言うのかっ!?」
ヤシロ「言ってねぇだろ! そういうのはもうちょっと育ってから言いやがれ!」
ルシア「おっぱい…………か」
ヤシロ「いいのかなぁ、領主がそんなつぶやき漏らしてて……」
ルシア「く……っ、まだ誰にも触らせていないというのに…………」
ヤシロ「やっぱ彼氏いたことないんだな……まぁ、ないだろうな」
ルシア「だがっ、ハム摩呂たんのためになら、この身が汚れようとも、私は耐えてみせるっ! カタクチイワシッ! ハム摩呂たんは、私が守るっ!」
ヤシロ「いや、どっちかって言うと、俺がお前からハム摩呂を守ってんだが?」
ルシア「き、貴様も物好きなヤツだな、わ、私などのおっぱいをいじり倒したいなどと……」
ヤシロ「言ってない上に、表現が酷いもんになったな」
ルシア「さぁ、揉むがいい! 時に摘まむがいい!」
ヤシロ「なぁギルベルタ。これもうアウトだろう、領主的に」
ギルベルタ「問題ない思う、私は。概ねこのような感じ、ルシア様の日常は」
ヤシロ「なにそれ……凄く残念」
ルシア「残念と言うな! 幼い頃より両親に『この子はなんでこんなに残念なのかしら』と言われ続けて、多少トラウマになっておるのだぞっ!?」
ヤシロ「だったらどっかで顧みればよかったろう、自分の行動を!?」
ルシア「よいのだ、私など。女性としては落第点でも、領主として責務を全う出来ればそれでよいのだ」
ヤシロ「いやいや……お前が残念なのはその変態性で、別に女性として落第点なわけじゃねぇだろ」
ルシア「よせ。慰めなどいらん」
ヤシロ「俺はすげぇ美人だと思うがな」
ルシア「………………ぱーどん?」
ヤシロ「いや、だから。黙ってさえいれば美人だって。ちょっと美人過ぎて近寄りがたいってのはあるけどな」
ルシア「………………わんもぁ?」
ヤシロ「なんで疑問形だ? つか、何回言わせんだよ」
ルシア「私が…………美人………………っ!?(急に恥ずかしくなった)」
ギルベルタ「何か赤い、ルシア様が」
ルシア「わ、私のおっぱ…………む、胸をいじり…………胸に触れるのは中止だ! え、延期を要請する!」
ヤシロ「延期って……いつかは解禁されんのかよ?」
ルシア「――っ!? そ、そんなに触りたいかっ!? そこまで固執するほどか!?」
ヤシロ「いや、別に固執してるわけじゃ……」
ルシア「き、きき、貴様はな、だいたい、最初から不埒だったのだ! あぁ、そうとも、最初から分かっていたとも! え、えぇい、そんな卑猥な目で私を見るでない!(胸を隠して背を向ける)」
ギルベルタ「初めて見る、こんなルシア様は」
ルシア「く……、なぜ私がこのような辱めに…………っ!」
ヤシロ「いや、ドアを開けた直後のシーンが一番恥ずかしかったと思うがな」
ルシア「う、うるさいっ! 『あわよくば』みたいな顔で私を見るな!」
ヤシロ「だから、見てねぇって! 一回落ち着けよ」
ルシア「『お乳を突かせろ』だと!?」
ヤシロ「言ってなぁーい!」
ルシア「きょ、今日は気分が優れん! 私はもう寝るぞ! ギルベルタ、そこの不埒なカタクチイワシが夜中に屋敷を徘徊せぬよう見張っておくのだ!」
ギルベルタ「了解した、私は。付きっきりで見張る、友達のヤシロを」
ヤシロ「いや、お前も部屋に帰れよ。出歩かねぇから。……俺もうクタクタで寝たいんだよ」
ルシア「ちなみに、私の私室は屋敷の一番奥の広い部屋だが、決して近付くなよっ!」
ヤシロ「…………やめて、そういう面倒くさそうなフラグ立てるの。すぐ寝るから」
ルシア「さ、さっさと寝て、さっさと帰るがいい! ハム摩呂たんを残してな!」
――ルシア、部屋を飛び出していく。ドア『バターン!』
ヤシロ「ハム摩呂連れて帰るからな!? ……ったく」
ギルベルタ「静かになった、ようやく。これで眠れる、私は、友達のヤシロと一緒に」
ヤシロ「いや、お前も部屋に戻れ」
ギルベルタ「むぅ!」
ヤシロ「『むぅ!』じゃねぇよ」
ハム摩呂「……すやすや…………大賑わいの、真夜中やー…………すぴろろろ~……」




