【後日譚33話あとがき】ロレッタは、いじられ可愛い
――陽だまり亭、庭
――ロレッタが入り口からそっと店内を覗いている
――店内にはヤシロ。何か作業をしている
ロレッタ「むっふっふ……。噂によれば、お兄ちゃんがそこかしこで女子たちを赤面させて回っているそうです…………ならばっ! あたしはお兄ちゃんを赤面させてやるです!」
――ロレッタ、そっと店に入り、ヤシロの背後に忍び寄る
ロレッタ「……(むっふっふっ。お兄ちゃん、全然気付づいてないです。突然抱きついて赤面させてやるですっ)」
ヤシロ「(ぽつりと)……ロレッタ」
ロレッタ「――っ!?(気付かれたです?)」
――ヤシロ、天井を見上げ、しみじみと……
ヤシロ「……新しい街でも、元気にやってるかなぁ」
ロレッタ「あたし、ここにいるですよ!? この街、出て行ってないですよっ!?」
ヤシロ「おぉっ、ロレッタ。いたのか?」
ロレッタ「絶対気付いていたですっ! いない子扱いイクナイですっ!」
ヤシロ「で、何しようとしてたんだよ?」
ロレッタ「うっ……そ、それは…………(抱きつこうとしてたなんて……面と向かっては言えないです)」
ヤシロ「まぁ、だいたい想像はつくけどな」
ロレッタ「はぅぅ……やっぱりお兄ちゃんには敵わないです……」
ヤシロ「俺を頬袋に詰め込んで巣に持ち帰ろうとしてたんだろ?」
ロレッタ「想像ついてないですよっ!? 見当違いも甚だしいですっ! あと、巣って言わないでです!」
ヤシロ「お前はマグダと違って気配が殺せてないんだよ」
ロレッタ「確かに、マグダっちょはちょっと引くくらい気配消せるですけど……夜中背後に立たれると心臓止まるかと思うほどビックリするですけど!」
ヤシロ「お前は足音がするからな。『ぽちょ~ん、むき~ん』って」
ロレッタ「そんな愉快な足音はさせてないですよ!?」
ヤシロ「で? こっそり背後から近付いて、抱きつこうとでもしてたのか?」
ロレッタ「う……っ、さすがお兄ちゃんです……こういう時は気持ち悪いくらいに鋭いです」
ヤシロ「しょうがねぇなぁ……ほれ。(両腕を広げる)」
ロレッタ「にょにょっ!?」
ヤシロ「抱っこしてほしいんだろ? いいぞ」
ロレッタ「ぅえっ!? あのっ、ち、違うです! そういう感じじゃなくて、お兄ちゃんが驚けばと…………ぅぁぁああ、とにかく腕下ろしてですっ! なんか恥ずかしいです!」
ヤシロ「どうしたロレッタ? 顔が真っ赤だぞ? ケツでもあるんじゃないか?」
ロレッタ「あるですよ!? 可愛いのがぷりんとあるですけども、それを言うなら『熱』です!」
ヤシロ「どれ、ちょっと触らせてみろ(指『もにゅもにゅ』)」
ロレッタ「その手つきは確実にお尻触るつもりですよね!? こういう時はおでこを触るもんですよ!?」
ヤシロ「はっはっはっ。デコに興味はない!」
ロレッタ「お尻に興味津々なのも困るです!」
ヤシロ「ロレッタって、確か尻尾生えてるんだっけ?」
ロレッタ「にょ~~っ!? し、し、尻尾のことはいいじゃないですか!? 興味持たないでくださいです! 目をギラギラさせないでくださいですっ!」
――ロレッタ、尻尾らへんを両手で押さえて後ずさる
ロレッタ「も、もう! お兄ちゃんはホントにお兄ちゃんなんですからっ! もういいです、あたし仕事に戻るですっ!(厨房へ向かう)」
ヤシロ「あ、その前に。ロレッタ」
ロレッタ「はいです?」
――振り返るロレッタの頭に、帽子がぽんと被せられる
ロレッタ「…………ほぇ?」
ヤシロ「やる」
ロレッタ「……え? え、えっ!?」
ヤシロ「前に弟妹に帽子やった時、お前の分だけなかったろ?」
ロレッタ「いや、でも、それは、あたしには制服がありましたし、あれはお兄ちゃんが弟妹たちを慰めようとわざわざ……だから、別にあたしのは……え?」
ヤシロ「やる。もらってくれ」
ロレッタ「…………いい、んですか?」
ヤシロ「お前のために作ったんだぞ。もらってくれなきゃ困るっつの」
ロレッタ「……ふぐっ!(涙ぐむ)」
ヤシロ「ぐ……グルクマ」
ロレッタ「ま!? ま、マンボウ!」
ヤシロ「ウスバハギ!」
ロレッタ「ぎ、ぎ、ぎぃぃ~~~~…………って、違うです! お魚の名前しりとりじゃないです!?」
ヤシロ「でも、お前の負けな」
ロレッタ「うぅ…………そりゃ、お兄ちゃんを照れさせるどころか、逆にこんなサプライズを……確かにあたしの完敗です…………何か作ってると思ったら、まさかあたしの帽子だったとか…………ズルいです……嬉しいですっ!」
――ロレッタ、素直にヤシロに飛びつき「ぎゅぅぅううっ」と抱きつく
ヤシロ「ロレッタ(頭ぽんぽん)」
ロレッタ「はい、です」
ヤシロ「似合うぞ」
ロレッタ「はぅっ!?」
ヤシロ「30%割り増しで可愛く見える」
ロレッタ「か、かわっ…………にょ、にょはぁぁあっ!」
――ロレッタ、「バッ」とヤシロから離れて、両手を上げて逃走、厨房へ駆け込む
――が、すぐに顔だけをちょこっと覗かせる
ロレッタ「あ、あの…………ありがとう、です」
ヤシロ「へいへい。あ、そうだ。帽子の裏に誰のか分かるように目印付けてあるから」
ロレッタ「目印?」
――ロレッタ、帽子を取って中を覗き込む
――帽子の裏地に『普通』という刺繍
ロレッタ「もう! どうしてお兄ちゃんはこういう余計なひと手間加えるんですか!?」
ヤシロ「どこで落としても、確実に戻ってくるから、安心しろ」
ロレッタ「悲しいかな、そんな気がするですけどもっ! うぅ…………でも、やっぱりありがとですっ!(帽子を被って厨房へ駆け込んでいく)」
――中庭を走り回り「わほぉ~い!」とはしゃぐ声が聞こえてきて、ヤシロは苦笑を漏らす




