【後日譚27話あとがき】ナタリア、不意に照れる
――大広場
ナタリア「はわゎわ。あんまり見ないでくだしゃ~い。恥ずぅかしぃれしゅぅ~……」
ヤシロ「えぇ……今そういうウイルス蔓延してるのぉ? 超怖~い」
ナタリア「いえ。残念ながら流行病ではありません」
ヤシロ「むしろ蔓延してる方が残念なことになるから、よかったよ病じゃなくて」
ナタリア「ヤシロ様からのお呼び出しでしたので、こういう感じでお待ちしていた方が喜んでいただけるかと思いまして」
ヤシロ「なんで思っちゃったのかなぁ、そういうこと……」
ナタリア「これまで得た情報と知識、経験則から弾き出した高度なプロファイリングです」
ヤシロ「たぶん、プロファイリング自体は高度なんだろうけど、インプットとアウトプットの際に『ナタリア』って厄介なフィルター通しちまってるのが致命的なんだよな」
ナタリア「そんな……可愛いだなんて……ぽっ」
ヤシロ「ん? 待って待って。今どこでそう受け取った!?」
ナタリア「顔つき、ですが?」
ヤシロ「え、なに? じゃあ、俺、『ナタリア可愛いなぁ~』って顔してたの?」
ナタリア「いえ。向こうのお店のオジサンが、『そこの兄ちゃんが、連れのレディのことを可愛いって思ってるなぁ』という顔をされていましたので」
ヤシロ「第三者じゃん!? つかそのオッサンがなんで俺の心を読めるのかが知りたいわ!」
ナタリア「ヤシロ様。……オッサンは、割となんでも出来ます」
ヤシロ「適当なこと言うなよ!?」
ナタリア「それで、オッサン談義をするために私を呼び出したのですか?」
ヤシロ「オッサン談義は、お前が勝手に始めただけだ。実はな、一つ聞きたいことがあってな」
ナタリア「白です」
ヤシロ「誰がパンツの色を聞きたいと言った!?」
ナタリア「いえ、向こうのオッサンの顔つきを見て、そうなのかと」
ヤシロ「お前、もう向こうのオッサン見んな!」
ナタリア「『俺だけを見つめていろ』と、いうことですね?」
ヤシロ「お前の世界って、俺とそのオッサンしかいないの? なんて気の毒な世界なんだろうな」
ナタリア「それで、なんの色が知りたいのですか?」
ヤシロ「色じゃねぇよ! お前、前に『にょろにょろしたものが苦手だ』って言ってたよな?」
ナタリア「はい。とても可愛い顔をして、申し上げておりましたね」
ヤシロ「いいなぁ、そのポジティブさ。たまにすげぇ羨ましくなるよ……。んでな、何か嫌いな理由でもあるのかなぁって思ってさ」
ナタリア「話せば、長くなるのですが……」
ヤシロ「おぅ」
ナタリア「気持ち悪いんです」
ヤシロ「短っ!? 思ってた以上に短くてビックリだよ!?」
ナタリア「私のにょろにょろ嫌いがどうかしたのですか? あぁ、私ににょろにょろプレイを強要する気なのですね」
ヤシロ「する気じゃねぇよ!」
ナタリア「にょろにょろは好きではありませんが、強引な感じとか、屈服させられる感じは割と好きですので、一度お試しになってみては……」
ヤシロ「しないから!」
ナタリア「……意気地なし」
ヤシロ「やめて、真顔でそういうこと言うの! お前にウナギを食わせてやろうと思ったんだよ」
ナタリア「口移しで?」
ヤシロ「それは引く!」
ナタリア「しかも、生のウナギを!」
ヤシロ「それ、俺もキツイじゃん! 俺にはちょっと耐えられないかな!?」
ナタリア「かば焼きになっているものであれば、なんら問題はありませんし、全裸でも問題ありませんよ」
ヤシロ「よし、後者は聞かなかったことにする!」
ナタリア「しかし、一体どういう風の吹き回しですか? 私にウナギなど」
ヤシロ「ここ最近、エステラの使いで色々走り回ってくれてたろ? ギルベルタが来ちゃった時とかさ」
ナタリア「それは、私の仕事ですので。どうぞお気になさらずに」
ヤシロ「そうなんだろうけど、なんとなくな。まぁ、お前と飯が食いたかったっていうのもあるんだよ」
ナタリア「『私』と『ご飯』を食べたかった?」
ヤシロ「そういう言い方すると、お前をおかずにするみたいに聞こえるだろう!?」
ナタリア「……いやらしい!」
ヤシロ「今更、お前に言われたくねぇわ! 散々好き勝手騒ぎやがって」
ナタリア「ですが、そういうことでしたら、喜んでお受けいたしましょう」
ヤシロ「おう、そうしてくれ」
ナタリア「ですが、ヤシロ様……」
ヤシロ「ん?」
――ナタリア、そっと視線を外す
ナタリア「あまり、優しくし過ぎないようにお願いしますね。……不意に、甘えたくなってしまいますので」
ヤシロ「たまになら、構わねぇよ」
ナタリア「…………いえ、たまにでは済まなくなると、困りますので」
ヤシロ「そっか。んじゃ、気を付けるよ」
ナタリア「………………とはいえ、たまには甘やかしてほしいですよ?」
ヤシロ「難しいな、お前の乙女心は」
ナタリア「自分でも……たまに戸惑ってしまいます」
ヤシロ「俺はいっつも戸惑わされっぱなしだけどな、お前には」
ナタリア「それも含めてなんですが…………私の中に、こんな一面があったなんて、私自身知りませんでした。ヤシロ様にお会いしてから、自分の知らない自分が次々に顔を覗かせて……」
ヤシロ「んだよ。俺に感染したとでも言いたいのか?」
ナタリア「ふふ……っ。こちらは、流行病なのかもしれませんね。抵抗する間もなく感染してしまう……恐ろしい病です」
ヤシロ「誰が病原菌だ。失敬な」
ナタリア「では、病原菌に負けないように、ウナギでもいただいて精をつけましょう」
ヤシロ「おう。今日行くとこは、捌くところから見せてくれるんだぞ」
ナタリア「…………あの、私からも一つよろしいですか?」
ヤシロ「なんだ?」
ナタリア「…………捌き終わるまで、手を繋いでいていただいても?」
ヤシロ「そんなに怖いのか?」
ナタリア「…………私にも、苦手なものはあります」
ヤシロ「なんか、可愛いとこもあるんだな」
ナタリア「かゎ…………っ!?」
ヤシロ「あれ? 今度はポジティブ暴走しないんだな?」
ナタリア「いえ……あの…………自分で自覚している欠点を、そういうふうに、肯定的に言われてしまうと………………照れます」
ヤシロ「ほぅ、ナタリアが、照れる、ねぇ?」
ナタリア「すみません、今は見ないでください(顔を背ける)」
ヤシロ「いや、見せてもらおう。後学のために(顔を覗き込む)」
ナタリア「なんのためにもなりませんよ(背ける)」
ヤシロ「まぁまぁ、そう言わず(回り込む)」
ナタリア「ちょ、いや、待ってください……本当に、本当にっ!(両手で顔を隠す)」
ヤシロ「おぉ、赤くなってる! 珍しい!(強引に覗き込む)」
ナタリア「ヤシロ様っ! 怒りますよっ!?(顔がどんどん赤くなる)」
ヤシロ「だったらほら、最初に言ってたヤツ、言ってみろよ」
ナタリア「じょ、状況を考えてください! 言えるわけないじゃないですかっ!?」
ヤシロ「マジ照れか…………いいもん見たなっ!」
ナタリア「もぅ! …………困った方ですね、もぅ……」




