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【33話あとがき】川魚で一番[小説形式]

 デリアが陽だまり亭で働くようになって数日が経った。

 暇な時はとことん暇なのだ。


 なので、俺は川漁ギルドのギルド長であるデリアにこんな話を振ってみた。


「なぁ、ゴリって知ってるか?」

「ゴリ? …………あぁ、あの不細工なヤツか?」

「そうそう。そいつだ」


 ゴリは、地域によって若干違うのだが、俺の地域ではヨシノボリという淡水魚のことを指していた。こいつが、顔は不細工なのだが唐揚げにすると最高に美味いのだ。

 女将さんの作るゴリの唐揚げは、俺が人生で食ってきたすべての食い物の中で最高ランクに位置している。そういう魚だ。


「俺、アレの唐揚げがスゲェ好きなんだけどさ、川漁ギルドで捕ったりしないのか?」

「ゴリを……? そうだなぁ、見かけた時は仕留めるけど、特に狙ってはないかなぁ」


 確かに。ゴリ漁をしているところは割と少ない。

 そもそも、そんなに見かけない魚だしな。

 ウチの地域でも、偶然見かけて確保した後は、親方とマジもんの奪い合いが勃発するような、そんな希少性の高い魚だった。

 こっちでも、そうなのだろう。


「そっかぁ……食いたかったんだけどなぁ……」

「そんなに好きなのか?」

「そりゃあもう、一番の好物だぜ」

「そっか……」


 ふむ……と、腕を組んで、デリアは立ち上がる。


「分かった。今から行って捕ってきてやる!」

「今から!?」


 いや、だって……川が増水して漁が出来ないからここでバイトしてんだろうが。


「危なくないのか?」

「まぁ、多少はな。けど、ヤシロがそんなに食べたいんなら、あたいが捕ってきてやる! ちょっと待ってろ!」


 言うが早いか、デリアは勢いよく外へと駆け出していった。

 う~ん、その心遣いは嬉しいが…………職務放棄だぞ、これ。



 ――それから数時間後。



「ヤシロー! 捕まえてきたぞー!」


 そう言って、とても大きな麻袋を床に「どーん!」と置くデリア。

 ……デカい。いや、デカいよ……ゴリって、だいたい10センチくらいの魚だぞ?


「いやぁ、苦労したけど、ちゃんと捕まえてきたぞ、ゴリ」


 デリアが麻袋をバンと叩くと、その中に閉じ込められている生き物が勢いよく暴れ始めた。

 麻袋がボッコボッコと形を変え、中から奇妙な声が漏れ聞こえてきた。


 ウッホウッホウッホウッホウッホウッホウッホウッホウッホウッホッ!


「さぁ、ヤシロ! た~んと食ってくれ、あたいが山で捕ってきたゴリッ!」

「このゴリじゃねぇよっ!」


 その後、勘違いで捕らえられたゴリ……ラを山に返し、その日は無駄な疲労感に包まれて終わりを告げた。

 勘違いでゴリラを捕まえられるのかデリアは……それが一番ビックリだよ。



 ……てか、四十二区、ゴリラいるんだ…………気を付けよ。







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