【129話あとがき】ヤシロ、強制翻訳魔法の威力に賭ける
ヤシロ「(……これは、一つの挑戦だ…………この世界で上手くいく保証はない。もし失敗すれば……俺はとても悲惨なことになる…………だがっ! 試してみる価値はあるっ! ……俺が言っても白々しいかもしれねぇが……精霊神、今だけお前を信じるぜっ!)……エステラっ!」
エステラ「なんだい、真剣な顔をして?」
ヤシロ「ピザって十回言ってくれ!」
エステラ「はぁ? まぁ、いいけど。ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザッ」
ヤシロ「(ヒジを指さしながら)ここは!?」
エステラ「ヒザ」
ヤシロ「残念っ、ヒジだっ!」
エステラ「あぁっ!? 本当だ!? ……むぁぁああっ、なんか無性に悔しい!」
ヤシロ「信じてたぜ、精霊神! お前の『強制翻訳魔法』なら、何か近しい言葉をチョイスして翻訳してくれるって!」
エステラ「もう一回! もう一回やらせてよ!」
ヤシロ「バカヤロウ。そんな何回もやるもんじゃねぇよ」
ロレッタ「何やってるです? なんか楽しそうです」
ヤシロ「ロレッタ。すまんが、日焼けって十回言ってくれるか?」
ロレッタ「余裕です! 日焼け日焼け日焼け日焼け日焼け日焼け日焼け日焼け日焼け日焼けですっ!」
ヤシロ「ニワトリが産むものは?」
ロレッタ「ひよこです!」
ヤシロ「卵だ」
ロレッタ「にょぁああっ!? ホントです!? なんか悔しいです!?」
エステラ「ぷぷーっ! ニワトリがひよこ産むんだって! あり得ないよね~」
ロレッタ「エステラさんだってやられてたら絶対引っかかってたです!」
エステラ「いやぁ、今のは大丈夫だったかなぁ」
マグダ「……何か騒がしい。なに?」
ヤシロ「よう、マグダ」
ロレッタ「マグダっちょは、たぶん手強いです」
エステラ「かなり頭が切れるからね」
ヤシロ「温泉って十回言ってみてくれ」
マグダ「……ヤシロと混浴、ヤシロと混浴、ヤシロと混浴……」
ヤシロ「ちょっと待て! 温泉だ」
マグダ「……温泉に行けば、おのずとそうなる」
エステラ「ヤシロ……君というヤツは……」
ロレッタ「お兄ちゃん、サイテーです!」
ヤシロ「何もしてねぇだろうが! マグダ、いいか、『温泉』って十回言ってくれ」
マグダ「……温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉温泉」
ヤシロ「3000の次は?」
マグダ「……4000」
ヤシロ「3001だ!」
マグダ「……………………ぷくぅっ!」
ロレッタ「怒ったです!? ほっぺたパンパンです!」
エステラ「よほど悔しかったんだろうね」
ジネット「みなさ~ん。何をお話されているんですかぁ?」
ロレッタ「あ……店長さんは無理ですね」
エステラ「うん。絶対引っかかる」
マグダ「……下手したら、十回言い切れない」
ジネット「あの、確実に小バカにされていますよね、わたし?」
エステラ「ヤシロ。一番簡単なヤツにしてあげてね」
ロレッタ「なんなら、先に答え教えてあげてほしいです」
マグダ「……店長にも、人間としてのプライドが小指の先ほどはある」
ジネット「なんですか? なんなんですか? なんだか酷いですよみなさん!?」
ヤシロ「実は、ちょっとした遊びをしていてだな。紛らわしい言葉を言って、相手を引っかけるゲームなんだ。例えば……エステラ、ライフって十回言ってくれ」
エステラ「ふふ、リベンジだね。いいよ! ライフライフライフライフライフライフライフライフライフライフッ!」
ヤシロ「パスタを食べるのは?」
エステラ「ははっ、騙されないよ! フォークだ!」
ヤシロ「口だな」
エステラ「確かにそうだけどっ! んむぐぁぁああっ! なんか悔しい!」
ヤシロ「こういう遊びだ」
ジネット「あの、とても楽しそうなんですが……『強制翻訳魔法』の威力の凄さに、少し恐怖を抱きつつあります、わたし……」
ヤシロ「お前もやってみるか?」
ジネット「え~……わたし、間違わずに出来るでしょうか?」
ヤシロ「ま、無理だろう」
ロレッタ「店長さんだからしょうがないです」
エステラ「まぁ、ジネットちゃんだしねぇ」
マグダ「……夢を見るのもほどほどに」
ジネット「酷い言われようです! 散々です! わたし、絶対間違えませんもん! ヤシロさん、問題を出してください!」
ヤシロ「じゃあ、『おっぱい』と十回……」
ジネット「懺悔してください!」
ヤシロ「お前が揉まれたいのは?」
ジネット「懺悔してくださいっ!」
エステラ「ヤシロ……まともなヤツを」
ヤシロ「じゃあ、果実酒って十回言ってくれ」
ジネット「はい! かじちゅちゅ、かじゅちゅちゅ、かじゅちゅじゅ、かじちちゅ、かちゅじゅち、かじゅちゅちゅ、かじゅ…………しくしくしく」
マグダ「……言えなかった」
ロレッタ「それでこそ店長さんです!」
エステラ「ヤシロ、ちなみに問題は?」
ヤシロ「この街で魔法を使ってるのは?」
エステラ「魔術師!」
ヤシロ「精霊神だろ」
エステラ「ぷくぅっ!」




