【97話あとがき】エステラとナタリア、雪の中で戯れる
エステラ「うわぁ……やっぱり凄く積もっちゃったねぇ」
ナタリア「ここ数年で一番の積雪ですね」
エステラ「うむ…………これでは仕事は無理だね。よし! 陽だまり亭に行ってくる!」
ナタリア「不許可です」
エステラ「なんでナタリアに許可をもらわなきゃいけないんだい?」
ナタリア「『乳格差』という言葉をご存知ですか?」
エステラ「ご存じないし、ご存じになる予定もないね!」
ナタリア「冗談はさておき、お嬢様にはお仕事が残っております」
エステラ「え!? だって、この雪じゃ街門の工事もストップするだろう!? 他になんの仕事があるのさ?」
ナタリア「雪かきです!」
エステラ「雪かき!?」
ナタリア「敷地内の雪をどけていただかないと何も出来ませんので」
エステラ「そういうのは、ナタリアの部下たちにやらせればいいだろう!?」
ナタリア「今年は皆、故郷に帰ってしまっておりまして」
エステラ「なんて計画性の無い!?」
ナタリア「給仕長が『いいんじゃね?』と、言ってしまったばっかりに……」
エステラ「給仕長って君だよね!?」
ナタリア「てへぺろ」
エステラ「『てへぺろ』じゃないよ!? どうすんのさ!?」
ナタリア「大丈夫です。お嬢様には、私がついておりますので。何があっても、お嬢様を一人にはさせません」
エステラ「ナタリア……」
ナタリア「ですので、一緒に雪かきをしてください」
エステラ「ボクを一人にしないためにボクを巻き込まないでよ!?」
ナタリア「私一人で雪かきをやれとおっしゃるんですか!? 泣きますよ!?」
エステラ「君は、ヤシロに会ってから確実に性格が変わった! 言い逃れや屁理屈が格段に増えたよね!?」
ナタリア「お嬢様に影響されたのです」
エステラ「そ、それだとっ、まるでボクがヤシロに影響を受けまくっているみたいじゃないか!?」
ナタリア「まぁ、お顔が真っ赤です。雪に放り込めば溶けそうですね。というわけで、えい」
――ナタリア、エステラを窓の外へ「ぽい~!」エステラ、雪の中へ「ぼすっ!」
エステラ「ナタリアァ!」
ナタリア「……おかしい……思っていたほど溶けませんね……」
エステラ「溶けるわけないだろう!? このっ!」
――エステラ、雪玉をナタリアに向かって投げる
――ナタリア「シュンッ!」と、姿を消す
――ナタリア、エステラの背後に突然出現
ナタリア「残像です、お嬢様」
エステラ「君は本当に人間かいっ!?」
ナタリア「そんな失礼なことを言うと……『ぷんぷん』ですよっ!」
エステラ「可愛いな、急に!?」
ナタリア「さぁ、折角表に出てきたんです。盛大に雪をかこうじゃありませんか!」
エステラ「あぁ、もう! 分かったよ! その代わり、終わったら陽だまり亭に行くからね!」
ナタリア「当然です。しばらくご厄介になるつもりですし」
エステラ「給仕がいないから陽だまり亭に寄生する気かい!?」
ナタリア「ほら、よく言うではありませんか。『立ってる者は家主でも使え』」
エステラ「親だよ、それは!? そしてジネットちゃんがピンチだっ!?」
ナタリア「間違えました。『助け合いの精神』を言いたかったのです」
エステラ「嘘吐くとカエルにするよ!?」
ナタリア「てへぺろ」