【93話あとがき】デリアとの川遊びは危険がいっぱい
――河原
――オメロ、うつ伏せでピクリとも動かず川を「ぷかぷか~」
ヤシロ「お~い、デリア~」
デリア「あ、ヤシロ~!」
ヤシロ「今ヒマか?」
デリア「あぁ! たった今ヒマになったところだ!」
ヤシロ「……何してたんだ?」
デリア「なんでもねぇよ。大したことじゃないって!」
――オメロ「ぷかぷか~、ぷかぷか~、ぷかぷ…………ぶくぶくぶく……」
デリア「で、何か用か?」
ヤシロ「新しいスウィーツを作ったから食いに来ないかと思ってな」
デリア「行くっ!」
ヤシロ「あ、でも! そこまで甘くないぞ?」
デリア「大丈夫! 甘いから!」
ヤシロ「いや、甘くねぇってのに! コーヒーって知ってるか?」
デリア「洗いで食うヤツだな」
ヤシロ「コイだな、それは。『ー(伸ばし棒)』の存在を全否定するんじゃないよ」
デリア「今からか? 今から行くか?」
ヤシロ「いや、昼過ぎに店に来てくれ。こっちの準備があるから」
デリア「昼過ぎって、今からか!?」
ヤシロ「言語が不自由な娘なのか、お前は?」
デリア「楽しみだなぁ……ふふふ」
ヤシロ「お前は本当に甘い物が好きなんだな」
デリア「あぁ! 生き甲斐だからな!」
ヤシロ「でもよ、今までは何食ってたんだ?」
デリア「んあ?」
ヤシロ「砂糖もなかったし……ハチミツとかか?」
デリア「あんまり金のかかるものは食えなかったからな。木の実とかフルーツを採ってたんだ」
ヤシロ「なるほどな」
デリア「けど、子供のうちは大目に見てくれたんだけど、最近山に行って勝手に採ると農業ギルドのヤツが怒るんだ……『ここはウチの果樹園だ!』って」
ヤシロ「果物泥棒じゃねぇか!?」
デリア「ちゃんと『いただきます』してたぞ!?」
ヤシロ「関係ねぇわ!」
デリア「精霊神様に感謝!」
ヤシロ「農家に感謝しろよ! いや、感謝はいいから金を出せ!」
デリア「それからは、働いて、お金作って、大通りとかで何か見つけて……」
ヤシロ「そうか、木の実か……なぁ、ちょっとだけなら採っても平気かな?」
デリア「自生してるヤツならいいって言ってたぞ。ただ、食い尽くすなって」
ヤシロ「俺も食ってみたいな」
デリア「じゃあ行こう! あたいが案内してやるよ! 果樹園!」
ヤシロ「果樹園じゃない! 自生してる方! 森とか!」
デリア「なら、あそこにアケビがあるぞ」
ヤシロ「あそこ?」
――デリア、河原の向こうにある林を指さす。
――よく見ると「アケビ」の実が出来ている。
ヤシロ「おぉ!? 本当だ!」
デリア「じゃあ採りに行くぞ!」
――林へやって来たヤシロとデリア
――ギリギリ手が届かない高さにアケビの実
ヤシロ「届かないな」
デリア「木を切り倒せばいいんじゃないか?」
ヤシロ「いいわけあるか! しょうがない、肩車をしよう」
デリア「よし、ヤシロ、乗れ!」
ヤシロ「俺が上かよ!? こういうのは女の子が上だろうが!」
デリア「あたいが、女の子っ!?」
ヤシロ「驚くようなことかな!?」
デリア「だ、だって…………そんなこと言ってくれるの、ヤシロだけ、だし……」」
ヤシロ「まぁ、無敵だもんなデリアは……」
デリア「じゃ、じゃあ……あたいが、上……で、いいのか?」
ヤシロ「おう。俺だって、お前くらい支えられるさ」
デリア「あはっ。頼もしいな、ヤシロはっ!」
――デリア、ヤシロの背中を「バシィッ!」ヤシロ「ポ~ン!」川に「バッシャーン!」
デリア「ヤシロッ!?」
ヤシロ「…………不慮の事故により……肩車が出来なくなった…………」
デリア「もう、何遊んでんだよ。ヤシロォ?」
ヤシロ「遊んでるかっ!?」
デリア「……ぷっ、…………あははははっ! ヤシロ、酷い顔ぉ~!」
ヤシロ「……誰のせいだ………………このっ!」
――ヤシロ、水をデリアに「バシャ~ン!」
デリア「ぅわぁっ!? …………やったなぁ~! ていっ!」
――デリア、川に飛び込み、腰をかがめて両手を水に浸ける
デリア「仕返しだっ!」
――デリア、水をヤシロに「――――……ゥゥゥウウウウンッズバッシャァァァアアンッ!」
――音速を越えた水しぶきがヤシロの腹に「ズドォオオッ!」
ヤシロ「どぶっふっ!?」
デリア「どうだ、まいったか。ヤシロ!」
ヤシロ「……お前は、手加減つうのを……知らん……の、か…………」
――ヤシロ、川へ「バッシャーン……ぶくぶくぶく…………」