【49話後感想返し】ヤシロのツンデレ加減
――回想
ヤシロ「エステラ。お前最近やつれてないか? ちゃんと飯は食わなきゃダメだぞ。な、なんなら……しょうがねぇから、俺が付き合ってやってもいいからよ。美味いもの食いに行こうぜ」
――回想終わり
エステラ「…………って、ヤシロが言ってたけど。これってデートの誘い……だよね? もう、ヤシロは……素直じゃないんだから。ふふふ」
ヤシロ「エステラ」
エステラ「ヤシロ。随分と早いね。ボクに会いたくて、待ちきれなかったのかな?」
ヤシロ「バーカ。ちょっと用事があっただけだよ」
エステラ「用事って何かな? 是非教えてもらいたいね」
ヤシロ「う、うるせぇな! なんでもいいだろ。ほら、行くぞ」
エステラ「はいはい……ふふ、素直じゃないんだから」
――数時間後
エステラ「あぁ~……美味しかった。お腹いっぱいだよ」
ヤシロ「うん。なかなか美味かったな」
エステラ「ヤシロがこんなお店を知っていたなんてね」
ヤシロ「前に偶然見つけてな。一度来てみたいと思ってたんだ……エステラと」
エステラ「……え?」
ヤシロ「いや、なんでもない。さぁ、そろそろ出ようぜ」
エステラ「待って! …………あの、さ。ジネットちゃんとかとは、ここ、来てないの?」
ヤシロ「来るわけないだろ」
エステラ「でも、こういうお店、ジネットちゃんは好きそうだし……」
ヤシロ「あのなぁ…………俺は、その…………いや、なんでもない」
エステラ「ヤダ! 言って!」
ヤシロ「はぁ!?」
エステラ「…………言ってよ。……お願い」
ヤシロ「………………ったく。俺は、つまり、その、この店にはだな…………お前以外とは来るつもりなかったから」
エステラ「ヤシロ……」
ヤシロ「ほら! さっさと出るぞ!」
エステラ「待って! ここの代金は?」
ヤシロ「もう済ませてある」
エステラ「え、いつの間に!?」
ヤシロ「お前なぁ……美味い飯を食う時に、金のことなんか考えたくないだろ?」
エステラ「ヤシロ…………君って……随分と気が利くんだね。本当にジェントルマンみたいだ」
ヤシロ「気付くのが遅ぇよ。バ~カ。ほら、行くぞ」
エステラ「うん!」
――後日
エステラ「ヤシロォ!」
ヤシロ「おぉ、エステラ。どうした、闘牛みたいに怒って?」
エステラ「この前の食事料金、ウチに請求が来ていたんだけど、それも二人分!」
ヤシロ「あぁ、それか。ご馳走様っ!」
エステラ「君が払ってくれたんじゃないのかい!?」
ヤシロ「バカヤロウ! あんな高い店、俺の金で行けるわけないだろう!?」
エステラ「だって、代金の支払いは済ませたって!?」
ヤシロ「お前のところに請求が行くように、事前に店に行って話を『済ませて』おいた」
エステラ「……じゃあ、待ち合わせに早く来てたのは……」
ヤシロ「おう! そのためだ! いや~、一回行ってみたかったんだよな、あの店。でも高いだろ? ホント、エステラ以外とは行けない店だよな」
エステラ「……それで、ボク以外とは行くつもりがないって……」
ヤシロ「やっぱ、金のことを考えずに食う飯は最高だな!」
エステラ「じゃあさ、『しょうがないから付き合ってやってもいい』っていうのは……」
ヤシロ「いや、ほら。俺ってシャイだろ? 素直に『奢って』とは言えなくてなぁ。あはは!」
エステラ「ヤシロの…………バカァ!」
ヤシロ「ぅおっ!? 危ねぇっ!? バ、バカ! こういう時は平手だ、平手! ナイフじゃない! 刃を向けるな!」
エステラ「もう、知らないっ!」
ヤシロ「あ~ぁ……怒っちゃった」
――コツ、コツ、コツ、コツ……
ナタリア「……これで、よろしかったのですか?」
ヤシロ「おぉ、ナタリア。いいタイミングだな。はい、これ。飯代な」
ナタリア「素直にご馳走して差し上げればよかったじゃないですか。何もこんな回りくどいことをしなくても」
ヤシロ「体調不良を気遣われて飯まで奢られたら、あいつが気を遣うだろうが。騙されて奢らされたって思ってた方が気負わなくて済むだろう? それに、あんだけ頭に来てりゃ、仕事にそのパワーをぶつけられるだろう」
ナタリア「素直に応援して差し上げれば、お嬢様はお喜びになると思いますが」
ヤシロ「俺の柄じゃねぇよ。つか、ありがとな。エステラの食い物の趣味を教えてくれて」
ナタリア「それには及びませんが……随分と痛い出費だったのではないですか?」
ヤシロ「あいつには世話になってるしな…………ま、これくらいはいいだろう」
ナタリア「…………ヤシロ様」
ヤシロ「何も言うなよ。こういうのは多く語らないのがマナーだぜ」
ナタリア「私には甘い物でお願いします」
ヤシロ「ねだってんじゃねぇよ!」